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油壺マリンパークにやって来た沖縄産まれのサメたち [サメ]

油壺マリンパークでは06年からオオメジロザメの飼育、展示を行っている。
本州では唯一、というか、美ら海水族館以外では唯一、オオメジロザメが見られる水族館となっていた。
搬入当初は雌雄ペアで飼われていたが、搬入から数年後、メスが死亡。
その後、残ったオスだけの展示が続いていたが、成長し、展示水槽が窮屈になったことから、2Fのドーナツ水槽へと移動した、というのは以前、このブログでも書いた通り。
そして、水槽の移動から1年ほどが経過し、オスもドーナツ水槽での暮らしに慣れたからなのだろう。
今年の始め、新たなメスが搬入された。

その個体というのが、美ら海水族館の前身、国営沖縄記念水族館で数々の伝説を作った、“Mr.美ら海の血”を引く、水族館で産まれた個体だ。
沖縄で既に会っていただろう個体だが、2日半もの長時間をかけて、わざわざ近くまでやってきてくれたのだから、そこはやはり会いに行くべきだろう!!
とは言いつつ、実際に会いに行ったのは、彼女がやってきてから随分経った今月の話だけれど…
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元気そうだ。
でも、もう1匹、以前からいたオスの姿が見えない。
知っているスタッフ氏に聞いてみると、残念ながら、死んでしまったのだそうだ。
早く行かなかったばっかりに、2匹が並んで泳ぐ姿は見ることができなかった。

死んでしまった個体は、度々“神経質で…”と聞くことが多かったけれど、美ら海生まれの子は、“生ける伝説”の血を引いている。そのため、同居魚を襲うことも… なんて心配していたのだけど、この子もやはり神経質らしく、搬入直後に飼育スタッフ氏に聞いた話では「襲うどころか、神経質過ぎて餌も食べないですよ」とのことだった。
どうやら、Mr.美ら海だけが特殊だったのかも?
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でも、彼女は水槽産まれ、水槽育ち。
そのためか、水槽への順応度合いも高いように見えた。
超長命な個体を祖父に持つ個体だけに、ずっと元気でいて欲しいものだ。

沖縄から油壺へやってきたのは、オオメジロザメだけではなく、同じく美ら海水族館産まれのヤジブカの仔4匹も合わせてやって来ていたのだ。

ヤジブカはオオメジロザメほどではないにせよ、展示している水族館は少なく、とりわけ関東では飼育、展示する水族館は現状ゼロ。
関東の水族館ファンにとっては、馴染みの薄い種類でもあった。
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油壺に来た仔たちの兄弟が泳ぐ美ら海水族館の予備水槽。

とは言え個人的には、これまで何度も見たことがある種類だし、美ら海産まれということは、その親や兄弟には会ってる。
特別強い思い入れのある種類でもないし… なんて思っていたんだけど、いざ、ヤジブカたちが泳ぐ水槽の前に立つと…
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可愛い!!
産まれてまだ数ヶ月の幼魚だというのもあるだろうけど、白い肌はピカピカで、眼もクリッとしてる。体もまだ小さいのに、ヤジブカならではの大きな背ビレがやけに目を引く。泳ぎ回る姿がとにかく可愛い。
こちらの方に泳いできて、オレの前を通り過ぎていくだけで、顔がにやけてしまう。

ひとつ前のブログにも書いた通り、オレが行った日はダイオウイカ標本の公開初日。
貴重な標本がすぐ後ろにあるというのに、オレと来たら、ヤジブカの可愛さにやられ、その前からほとんど動けなくなってた(笑)
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だけど、残念なのが、写真の上がり。
写真を眺めつつ、家に帰ってからもその可愛さに浸ろうかと思っていたのに、写真のイマイチ具合にガッカリするハメに。
これはもう1度行け、ということなのかな?

というワケで、そう遠くない内に、撮り直しにに行きたいと思います。

番外編・那覇でオオメジロザメ探索 [サメ]

淡水にも順応し、河川にも侵入するオオメジロザメ。
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そんなオオメジロザメが沖縄の、それも那覇の川にいるらしい。
そんな話を最初に見聞きした時、俄には信じられなかった。
那覇でオオメジロザメを釣ったというネット記事に掲載されていた写真は、那覇の中でも賑やかな界隈で撮られたものだったからだ。
http://portal.nifty.com/kiji/121008157845_1.htm

そこに川があることは知っていたけれど、いかにも都会のドブ川といった感じで、お世辞にも綺麗とは言えないような川だ。
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まさか、そんな所にオオメジロザメが泳いでいるなんて… やっぱり信じられなかった。
でも、それが遠い海外でも、どこぞの秘境とかでもなく、何の苦労もなく行ける街中、それも知っている場所だ。そんな所に本当にいるなら、オレも見てみたい!!
というワケで、上記のネット記事を見て以降、最初の沖縄行きの時、いつもは行かない那覇に宿を取り、川の周辺を散策してみた。
しかし、その時は2月。暖かい沖縄とは言え、夜になれば寒い時期だ。
イレギュラーに釣れることもあるとのことだが、川でサメが見られる時期ではないらしい。
まぁ、当たり前だよね。
しかし、釣りのターゲットともなるような魚だけに、情報も比較的多い。
それによると、よく見られるのは5月~10月の暖かい(暑い)時期が中心。
今回の沖縄行きの最大の目的? は、実はこの那覇でのサメ探し。行く前から那覇の地図を眺めながら、釣れた例や、目撃例の多い位置から、散策エリアを決定した。

梅雨明け直後の強烈な日射しの中、川を眺めつつ散策を開始。
所々に川に降りられる階段があって、そこから川を覗き込んでみると、トビハゼやらカニやらが結構いることに気が付く。
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周辺はクルマや人の通りが多く、頭上にはゆいレール(モノレール)が走る環境だからか、ハゼやカニたちもあまり物怖じせず、そっと近寄っていく分にはあまり逃げない。
恩納村の干潟で見たトビハゼたちは、近づいただけで散り散りに逃げ隠れてしまったのに、同じ種類でも都会っ子たちは大胆? なようだ。

水中に目をやると、何かの幼魚が群れているのが見える。
ボラなどに混じって、大型アジ類の稚魚の姿が。水面にはオキナワフグの稚魚と見られる白黒模様の小さなフグが滑るように泳いでいた。
ドブ川だとしか思っていなかった那覇の川だが、実は魚の多い豊かな川だった。
当たり前だが、関東の川では見られない魚ばかりで、何だか楽しくなってきてしまい、サメが見つからなくても… なんて納得しそうになってしまう(笑)

気を取り直して、そこから上流方面に向かって散策を続ける。
面白いもので、少し場所が変わるだけで、見られる魚も少しずつ変化するようで、上記のネット記事でサメが釣れた場所の周辺では、やや大型のティラピア、オオクチユゴイ、ミナミクロダイ、クロホシマンジュウダイなどが見られるようになった。
なるほど、これだけ魚がいるなら、サメが暮らしていくにも餌には困らないよな、と納得。
しかし、川の豊かさは十分実感したものの、目的のサメは見つかっていない。
散策を始めたのは朝の9時頃。そろそろ昼が近づきつつある時間となり、日も高くなってきた。川で魚を探すのはなかなか楽しいものの、炎天下を、それも強烈な沖縄の太陽の下を歩き続けるのもそろそろしんどくなってくる頃でもあった。
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泊港の方からの流れが合流する付近に掛かる橋の周辺から川を眺めていると、オレより数歩先を歩いていた同行者が、
「何か大きいのが泳いでる!! サメじゃない、あれ」と声を上げた。
大急ぎで橋の真ん中まで行くと、濁りの中に消えゆかんとするサメの姿が。
濁りが強いため、少し潜ってしまうと姿は見えなくなるから、水面に近い位置にいなければ写真は撮れない。
オレが見た時は、まさに潜行を始めた直後くらいだったので、泳ぎ去る後ろ姿が見えただけ。
ちなみに、オレがサメを見掛けた周辺は、目撃例や釣り上げられたという話の多い場所。
本当に見つかるとは正直、思っていなかったので、ビックリしたし、凄く嬉しかった。
その後、その周辺を何度か見回ってみたものの、それ以後、そこでサメの姿を見つけることはできなかった。
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同じ場所では、オニカマスを見つけた。サメを見た後でなければ、キミでも嬉しいんだけどねぇ…

うちなーぐち(沖縄の方言)でオオメジロザメのことをシロナカーと呼ぶそうだが、川を泳ぐそれは、まさにその呼び名の通り、白い体が印象的だった。

サメを見つけるという目的は達成できてしまった。
しかし、写真に撮ることはできなかったから、しっかり写真に収めてくることが次の目標。

それにしても、遠い沖縄で、次から次へと目的ができてしまうのが困りどころだなぁ(笑)

沖縄美ら海水族館 ジンベエザメの繁殖の話 [サメ]

今回のブログで、「ミストラルの水族館ブログ」500記事め。
我ながら、よくもまぁこんなに書き続けてきたものだと思うと同時に、お付き合いいただいた皆さんに感謝。
節目のブログなので、当ブログのキラーコンテンツ? であるジンベエザメの話。
最近、ジンベエザメに関する訃報が続いているけれど、それとは間逆の内容だ。

美ら海水族館では大水槽の前にいたスタッフ氏にいろいろ聞かせてもらうことができた、というのはひとつ前のブログに書いた通り。
話を聞かせてくれたスタッフ氏がそこでしていたことは、ジンベエザメの観察。
美ら海水族館では、混雑が緩和される時間帯になると、館内に飼育スタッフ氏の姿が見られるようになり、それぞれ担当水槽や部門の観察を行っている。
でも、話を聞いたスタッフ氏がしていた観察は、それとは少し事情が違うようで、ジンベエザメの水槽内繁殖に向けた取り組みの一環、といったところだろうか?

旧水族館時代から20年近くに渡って飼われているオス個体、ジンタ。
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9m近いサイズにまで成長し、12年には性成熟に達したことが確認された。
クラスパーが急速に伸長、雄性ホルモン値の上昇などからも成熟と判断されたらしい。
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性成熟は8~9mほどという推定値が正しかったことが証明されたことになると同時に、夢の水槽内繁殖が少し現実味を帯びた。

大水槽を泳ぐ3匹の内、ジンタを除く2匹がメス個体へと交替されたのも、もちろん繁殖を見越してのことだ。
ジンタよりも若く、小さいそれらのメスたちは、まだ成熟には達してはいないようで、繁殖の実現にはもう少し(あと数年は)掛かりそうだ。
しかし、1年ぶりに見た2匹のメスたちは、ずいぶん大きくなってた。
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それまでならパッと見ただけでも小さく、ジンタでないことが分かったけれど、今は瞬間的に分かるほどの差はなくなってきている。もちろん、ジンタの全長と比べれば、まだまだ2mくらいは小さいのだろうけど、それでも確実にジンタ級の大きさに近づいていることは間違いない。
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下がジンタ。上が大きい方のメス個体。

飼育スタッフ氏に教えてもらったのだけど、体型にも微妙な変化が現れつつあって、オスのジンタは細長い感じなのに対し、2匹のメスは肩口から盛り上がったような感じで、オスよりもしっかりした感じに見える。もっとも、その差は“なんとなく”だけど…
しかし、メスたちのそんな成長ぶりも、繁殖の実現を現実的なものに感じさせてくれる要因のひとつだ。
ただ、メスがオス(ジンタ)と同様、8~9mで性成熟に達するかどうかは分からない。
もっと大きくならないと成熟に達さないのであれば、繁殖の実現も、自ずと先の話、ということになるのだろうけど。

大水槽担当の飼育スタッフ氏が持ち回りで観察を続けていたのには、ジンタがメス個体を追尾し始めたこともあるようだ。
残念ながら、オレが見ていた時には、そんなそぶりすら見せてくれなかったが、同行者によれば、それらしい動きをしていた瞬間があった、という。
追尾はその他のサメ、エイ類と同様、結構激しいもののようで、いつもゆったり泳いでいるジンベエザメが、その時は速く、勢いよく泳ぐのだそうだ。
そんな様子を見たことがないオレには、まさかと思ってしまうけれど、水槽が壊される心配すらしたらしい。実際、水槽を製作した日プラに問い合わせをしたほどだとか。
水槽の強度は大丈夫!! というお墨付きを得られたとのことだが、約9mのジンベエザメによる追尾は、いつも見ているスタッフ氏にさえ、ちょっとした恐怖感を憶えさせるほどの迫力があるんだろうね。見てみたいものだ。

オスの性成熟、追尾までは観察できたけれど、問題はそこから先だ。
ジンベエザメの繁殖について分かっていることは、卵黄依存型胎生であること、300匹以上を1度に妊娠する可能性があることくらい。
追尾から交尾に至る過程や、交尾そのもの、そして妊娠から出産。
すべて分からないことだらけ。水槽内繁殖が成功したら、それがすべて解明されることになるのだ。夢のある話だよね。

仔魚だって、300匹が1度に産まれてくるのか、数匹ずつバラバラに産まれてくるのかももちろん分かっていない。
実際に繁殖に成功すると、300匹の仔魚の世話なんて、想像を絶するほどの大変さだろうけど、やはり生まれたてのジンベエザメがどんなのか見てみたい。
もしかしたら、大水槽を持つ全国の水族館に、美ら海水族館生まれの小さなジンベエザメが見られる、なんて日が来るかも知れない。

今はまだ夢物語に近い話のはずなのに、現実味を帯びて聞こえるのは、数年前まではやはり夢物語だったマンタの繁殖を、それほど驚かないものにしてしまったという実績があるからなのだろうと思う。

マンタの繁殖にオニイトマキエイやモブラ(イトマキエイ)の展示、そしてジンベエザメの繁殖。
今回の美ら海水族館訪問では、ホント、多くの夢をもらった感じ。
水槽の展示はいつもより見足りてない気がするものの、気分的には大満足。
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手前の2匹がメス。奥がジンタ。しっかり食べて早く大きくなってね~

さて、そう遠くない未来に実現するだろうジンベエザメの出産は、これまた見てみたい。
そんな日が近づいた暁には、いつでも沖縄に飛び立てる準備をしておかなくちゃ、だな。

沖縄美ら海水族館の気になる板鰓類 [サメ]

2010年以降、恒例行事となっている“マンタの出産シーンを見に行く”遠征。
結局、1度も見ることが叶わないまま、連続出産を成し遂げていた母親個体が昨年、死んでしまった。
個人的にはその時点で大きな目標が失われてしまったのと同時に、この時期に美ら海水族館に行く用も無くなってしまった。
もう遠い沖縄まで行かなくていいんだ♪ となる訳もなく、5月頃から悪い虫が騒ぐの如し、沖縄に行きたくなってきてしまう。
たった4年とは言え、好きこのんで毎年続けていたことを突然止めるなんて、やっぱり無理な相談なのだ。
と言うワケで、性懲りもなく今年も行ってきましたよ、美ら海水族館(笑)

少し前に行った友人の日記にはマンタが4匹とあって、それもすごく気になってた。
死んだメスを差し引いても、5匹はいたはずだからだ。行って確かめなくては!!
また、美ら海水族館のブログによると、ヤジブカの展示も始められたらしい。
まぁ、いろいろ気になってたワケですな。

で、ヤジブカ。
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美ら海水族館で見るのは09年以来だから5年ぶり。
綺麗な個体が数多く泳いでいて、最近、出産まで行われたとかで、水槽上の予備槽には幼魚たちの姿もあった。
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数多くのヤジブカ以外に、かなりのメンバーチェンジがあったようで、オレをして日本の水族館で一番カッコいいクロヘリメジロの姿がなく、雄雌ペアだったレモンザメは3匹に。
イタチザメが1匹になっているのは予測できたけれど、何より、オオメジロザメが1匹だけになっていたのはかなりの驚きだった。

とりわけ、75年から飼育されているMr.美ら海、伝説のオス個体の姿がなかったことはショックにも近い驚き。いや、動揺と言ってもいいかも知れない。
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13年に撮影。

美ら海水族館では、ジンベエザメと双璧をなす存在と言ってもいい名物個体だからだ。
飼育年数を考えると、天寿を全うしていてもおかしくはなさそうなのだけど…

ものすごく気になって、後で飼育スタッフ氏に聞いてみると、搬出されて別の所にいるとのこと。
ヤジブカはかつても展示されていたことがあるものの、件の個体はやはりそれを襲撃してしまうらしく、ヤジブカの展示が決まった際、移動させることにしたのだとか。
水槽内での武勇伝には事欠かないMr.美ら海らしい話だ。
数多くのヤジブカが泳いでいる間は、展示が再開されることはないかも知れないが、またいつか、会える日が楽しみな1匹だ。
って、ヤジブカの話のはずが、オオメジロザメの話になっちゃったよ…(汗)

復活といえば、かつては大水槽の住人だったシノノメサカタザメも復活組みだ。
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テリトリー意識の強さからか、はたまた好奇心からなのか、掃除などで入るダイバーに攻撃的な行動を取ることから、危険ザメの水槽へと移されたのだ。
攻撃と言っても、もちろん命に危険が及ぶような話ではないのだけど、作業の邪魔だったり、不意打ちを食らうと、やはりそれなりに痛かったりはするようで、危険ザメ水槽へと移動になったらしい。
そちらの個体は健在だから、大水槽のものは新たにやって来た個体なのだろう。
危険ザメ水槽のものほど大きくはないようだけど、存在感は抜群で、ジンベエザメにも引けを取らない… というのは流石に言い過ぎかも知れないけれど、結構目を引く。
例によって? 水槽内をパトロールするみたいに、悠々と回遊し、時々、他のエイやサメにちょっかいを出す、そんな感じだった。
オレが初めて美ら海水族館に行った09年には、既に大水槽にシノノメサカタザメはいなかったから、大水槽でその姿を見るのは初めて。新鮮な感じ。
だからというワケではないけれど、やっぱり惚れ惚れするみたいにいい魚だね。

最後に紹介する注目の板鰓類は、ノコギリザメ。
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順路最後の深海大水槽に以前から飼われているものではなく、それらから生まれた美ら海生まれの仔たち。
ノコギリザメ自体は見られる水族館も増えつつあり、驚くほど珍しい、というものでもないけれど、水族館生まれの仔となれば話は別だ。
飼育下繁殖は初めてのことではないものの、数が少ないことであるのは間違いない。
そもそも、飼育個体数自体が少ないし、長期飼育に成功している水族館もあまり多くないのだからね。
そういう意味では、産まれただけでなく、それが育っているという事実は、やはり凄いことなのだろうと思う。
そんな稀少な幼魚たちはまったくと言っていいほど動かないけれど、やはり小さくて可愛らしい。
深海コーナーの水槽は、今までより幾分明るくなったので、写真もこれまでよりは撮りやすくなっているので、行った際には忘れずに見てみて欲しいと思う。

魚名板ができるまで@竹島水族館 [サメ]

先日、オオワニザメを見に竹島水族館に行った時のことだ。
その時、オオワニザメの強制給餌を見せてもらった(4/12のブログ参照)りした関係で、バックヤードを何度か行き来した。

当然、そこには搬入直後の魚や、展示を待つ魚などの姿があるワケだ。
オレが行ったその日の朝にも、深海ザメが搬入されたばかりで、バックヤードの水槽でその姿を見ることができた。聞けば、アイザメだという。
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このアイザメの他にも、ヨロイザメもいたりして、流石は竹島水族館!! といったところなのだけど、これらのサメたちはいずれも、沈むことができなくなっていた。
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案内してくれたスタッフ氏によれば、「空気抜きをしなくちゃならない」と言う。
急減圧によって鰾が膨張してしまう深海魚では必要な処置だが、サメに鰾はない。何の空気を抜くの? と疑問に。

漁獲されたこれらのサメたちは、船の生け簀へと収容される。
そこでは、多少過密に収容されることもあるからか、強めのエアーレーションがなされているのだという。こうした環境では、酸欠が原因で死ぬことが多いため、それを防ぐための配慮なのだけど、深海ザメはその空気を口から呑み込んでしまうものが多いらしいのだ。
口を上に向けて縦にすれば出てくる場合もあるそうだが、ほとんどの場合は前述した処置が必要になるのだという。

アイザメは漁獲時の状態が悪かったようで、キズも多く、水族館に到着した時点で瀕死の状態だったとか。そのため、展示に出る前に事切れてしまったものも。
アイザメは竹島水族館では珍しい種類ではないようで、他のスタッフ氏も「アイザメは珍しくないですね」と教えてくれたが、オレは初めて見た。
そこで、いつぞやのメジロザメの話よろしく、何でこれがアイザメだと分かるのかと聞いてみた。

深海生物担当スタッフ氏は「これまで何度も見てきているから…」と前置きしつつ、それが未知の種類である前提で、どうやって調べているのかをわざわざ教えてくれた。
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残念ながら死んでしまった個体をサンプルに、そのサメ(魚)の特徴的な部分を確認。
同定のために用いる図鑑に列記された特徴と、確認した特徴を合わせながら、似たようなものの中から、正解を導き出していく。
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深海ザメでは、ヒレや噴水孔の位置、歯の形状などが同定のポイントとなることが多いので、チェックしていく。

同定に用いた図鑑は、列記された特徴から、フローチャートのように種類を導き出すことができて、同定作業を横から見ている分にはかなり面白そうに見える。しかし、その解説に目をやるとかなり専門的で、本格的に魚類学を学んでいなければ聞いたことがないような言葉(計測部位)なんかも出てきたりして、やはり素人には少々難解なようだ。
勉強のために、オレも1セット購入しようか… なんて思ったものの、ふと値段を見てみると、4万円近い値段!!
まぁ、そうだよなぁ、と納得しつつも、簡単に捻出できる金額でもなく、今でもまだ購入には至ってない…(汗)

竹島水族館の魚名パネルの解説は、所謂、図鑑に載っているようなものではなく、“タケスイ節”全開のオリジナリティに溢れたもの。
そんな解説に至るまでには、こうした真面目? な作業は地道に行われているのだ。
解説に物足りなさを感じたなら、スタッフ氏を掴まえて、質問してみるといい。
きっと、オレと同じように満足できる答えを出してくれるはずだ。
とは言え、最近の竹島水族館は混雑していることも多いようだから、それが難しい日も少なくないのかも知れないけれど…

今シーズンのオオワニザメ@竹島水族館 [サメ]

今年も竹島水族館にオオワニザメがやって来た。

余所の水族館では搬入されたという話を聞かないのに、竹島水族館では毎年のように搬入され、今回で3回目だという。
残念ながら、現在は展示を終了してしまっているけれど、オレは何とか間に合い、今回も生きた姿を見ることができた。

3月30日、竹島水族館のフェイスブックに搬入を知らせる書き込みが。
それに連動するかのように、愛知在住の友人が写真を撮ってアップしていた。
見たことがあるものとは言え、貴重なものであることは間違いなく、しかも、そんなの見せられれば見に行きたくなってしまうものだ。
しかし、その週は金曜までスケジュールが埋まっていて、駆けつけることができない…
間に合うのか? でも行きたい。金曜でも生きてるようなら、絶対行こう!!
その週はそんなことばかり考えていたような気がする。
そして木曜日の夜、生存の確認をしたところ、まだ生きていて、時折泳ぐこともあるとのことだったので、翌日は予定通り、蒲郡へと向かった。

オオワニザメがいる水槽へ行くと… ジッとしてる。
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動きだすまで、他の水槽を眺めながら、オオワニザメの水槽前と館内を行ったり来たり。
そんなオレを見掛けた顔見知りのスタッフ氏が声を掛けてくれた。
「今日はオオワニザメですか? 後で強制給餌するんで、見ます?」
まったくありがたい申し出である。

搬入された深海ザメは、急減圧の影響などもあり、すぐに餌を食べないのが普通だ。
しかし、生き物であるからして、食べなければ衰弱するだけ。水族館で生かし続けるためには、餌付けしなくては先には進めない。
しかし、相手に食べる気がない。そこで、強制的に餌を呑み込ませて、とりあえずの体力を確保するのが強制給餌の目的だ。
もちろん、魚を捕まえて無理矢理餌を食べさせるのだから、リスクもあるけれど、それによって弱っていた個体が元気を取り戻したり、餌を食べなかったものが食べるようになることもある。

強制給餌は2人掛かり。ひとりが魚の動きを封じ、もうひとりが口を開けさせて、中に餌を押し込むのだ。
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しかし、小ぶりとは言え、そこは鋭い歯を持つオオワニザメだ。
何かの拍子で歯が当たったり、口をパクリとでもやれば、大ケガは免れない。
アロワナなら強制給餌の経験がオレにもあるけれど、サメの強制給餌はやりたくないなぁ。横で作業を見学しながら、ヒヤヒヤしてた(笑)

強制給餌後しばらくは、水底でジッとしていたのだけど、その後、思い出したように泳ぎ始めた。
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これまで搬入された個体でもっとも綺麗、とスタッフ氏も話す通り、体に傷がほとんどなく、とても綺麗な状態。
見るのは初めてでないけれど、こんなに泳ぐ姿を見たのは初めて。それだけでもラッキーなのに、どういうワケか、この遊泳時には人がおらず、幸運にもじっくり撮影することができた。
珍しいサメだけに、水槽前には常に誰かしらお客の姿が。しかし、その数分間は水槽周辺にほぼ誰もおらず、お陰で、今まででもっともカッコいいオオワニザメの写真が撮れた。
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残念ながら、オレが行った翌日に展示が終了してしまったので、その後の状態等は不明だけれど、個人的には間に合ってよかった。
いいもの見られて良かった!!

オオワニザメは所謂、深海ザメではなく、浅い海域にも生息している。
竹島水族館に搬入されたものは、いずれも深海域で捕獲されたものだが、何かしら飼う方法があるんじゃないか? みたいな期待? をしている。

竹島水族館は、現状、日本で唯一のオオワニザメの搬入がある水族館である。
サメ好きとしては、そんな難題を是非ともクリアして欲しいなぁ、と願うばかり。
いつ行っても、珍しいオオワニザメに会える… そう考えただけでドキドキしちゃうでしょ?

メジロザメマニアへの道 [サメ]

オレのブログを見てくれている人は、多分、ご存じかと思うのだけど、オレはサメ好きだ。
現生のサメは、約560種類いるとされているけれど、そのすべてが好きというワケではなくて、好きなのはせいぜい20~30種類くらいだろうと思う。
その中でも、特に興味があるグループがCarcharhinus(メジロザメ)属のサメたちだ。
まさに絵に描いたような、“もっともそれらしい”サメのグループだ。
大きな水槽さえあれば、(サメとしては)比較的飼いやすいとされているが、そこは遊泳性のサメであるからして、やはり長期飼育が簡単ではない種類が多いようで、水族館で見られる種類は限られる。
手元の資料では32種類があるようだが、オレが見たことがあるのはその内13種類。
とは言え、目の前をこれらの仲間が泳いでいたとしても、これは○○サメだ!! と自信を持って言えるのは、32種類中5種類くらいしかない。
もっとも好きなグループだというのにお恥ずかしい話なのだけど、メジロザメの仲間ってどれを見ても同じような色、形をしてるから…

先日、串本海中公園の大水槽を眺めていたら、前回訪問時にはいなかったサメを見つけた。
まだ若いメジロザメ類だ。
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もちろん、種類は分からないから(汗)、スタッフ氏に聞いてみると…
「クロトガリザメかハナザメのどちらかだと思いますが、最近、ハナザメの特徴が出てきたので、多分、ハナザメだと思います」

ハナザメもクロトガリザメも見たことがあるので、まだ見ぬ種類を期待したオレとしてはちょっぴり残念ではあったのだけど、どうしてクロトガリザメじゃなくて、ハナザメって分かったんだろう? そもそもハナザメの特徴って何だ? と次から次へと疑問が沸き上がってきた。

メジロザメ類の分類は、歯の形状、鱗の形状と並び方、ヒレ先の模様、鼻孔の形状などがポイントとなるようで、外見から分かる部分はヒレや鼻孔くらい。
というワケで下からの写真も撮ってみた。それができるのもトンネル水槽ならではだ。
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家に帰って調べてみた。と言っても絵合わせだけど…
確かにハナザメのよう… なんだけど、クロトガリザメなんじゃ…!?
見れば見るほど自信がなくなってくる。ただ、個人的にはクロトガリザメは上からしか見たことがないので、それであってくれると嬉しいのだけど…

そう言えば、このサメ、今はまだ小さいのでおとなしくしているようだけど、成長して水槽の中の魚を襲い始めたら、移動されてしまうとのこと。
興味があるという人は、大きくなるより前に!!

いつぞや、美ら海水族館でカマストガリザメを見たときのこと。
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その時も、解説員の人に種名を教えてもらったのだけど、そのスタッフ氏によれば、その人の上司に当たる水族館のスタッフ氏は、見ただけで(調べなくても)ある程度の種名が分かってしまうそうである。
どうしたらそうなれるのか尋ねてみると、調査などで散々見てきたから… とのこと。
もちろん、そこに至るまでには、そのサメを熟知できるだけの、きっとうんざりするくらいにサメを見て、調査をしてきているからなのだろうけど、水族館で見てるだけのオレにはハードルが高そうだなぁ、と。

メジロザメ・マニア道を究めるのは、まだまだ先が長く、大変なようです。
というワケで、今後も精進したいと思います。

ラブカ・フィーバー@あわしまマリンパーク [サメ]

3月21日の夜のこと。
あわしまマリンパークに“ラブカ搬入 しかも3匹!!”というニュースを知った。

タイミングがいいことに、オレがその時いたのは、神奈川の西端あたり。
あわしまマリンパークまでは1時間少々で行ける距離だ。
そんなタイミングでのラブカのニュースには、ちょっとした“運命的なもの”を感じたけれど、世は3連休である。オレの大嫌いな混雑、渋滞が行く手を阻むはずだ。
そう考えると、何とも気が重い。正直、あまり気は進まなかった。

翌朝、あわしまマリンパークのHPをチェック。
1匹は死亡、とのこと。念のため、開園直後に連絡してみると、まだ生きているという。
これはもう運命だから仕方がない!!(笑) 腹を決めて、渋滞の中へと突入。
いつもの倍の時間をかけて淡島まで辿り着くと、ラブカの影響なのか、そこにも予想以上の大混雑が。
館内の人波を掻き分けつつ、目的の水槽へと直行すると…

いた!! でも…
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ある意味、“予想通り”の姿だった。
いつぞやのように、沈んでしまってはいなかったが、微動だにしない。
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でも、まだ生きているという。
暗い水槽を前に、写真に撮ろうと格闘していると、微かに動いた。
ダランとしなだれた尾ビレがゆらりゆらりとゆっくり動き、ホンのわずかながら泳いでいる姿(と言っていいのかは分からないけれど)を見ることができた。
これで何とか、生ラブカは達成かな!?

水槽の中の個体より、その当日に死んでしまった個体が水槽の前に“鮮魚状態で”置かれていたんだけど、水槽内のものよりもむしろ、間近で細部まで観察するという意味では、そちらの方が適していたように思う。
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そんなまたとない機会に、顔、口、歯、エラ等々… ビー玉みたいなグリーンの眼は綺麗だけれど、正直、不気味…
そこで目線を前にやると、水槽の個体の顔が正面に。
大きく裂けた口、生気のない眼、鰓孔からはみ出した鰓弁… やっぱり不気味。
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正直、オレの好みではないのだけど、反面、海の中ではどんな生活をしているのか。
生気を感じないのは瀕死の状態だからなのか、はたまた、海の中でもそんなものなのか。
見れば見るほど興味をそそられる。

あわしまマリンパークの今回のラブカが凄かったのは…
まず、1度に3匹もが搬入されたこと。
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同じ水槽にいた別の個体。

これはある意味、昨年の八景島のミツクリフィーバーに近いインパクトだと思う。

そして、搬入されたものの中に、少ないとされるオス個体がいたこと。
さらに、死んでしまった個体も、前述したように展示され、触れることもできたこと。
標本でも剥製でもなく、冷凍もされていない、文字通り“生”のラブカだ。
先にも書いたように、真っ暗な水槽にいる生体とは違い、目の前でじっくり観察することができたので、生きた状態を見られたことも嬉しかったけれど、大いに価値ある経験をさせてもらった。

ただ、残念ながら、23日には全個体が死んでしまったとのこと。
種類を問わず、深海ザメの飼育はきわめて困難なものだが、とりわけ、ラブカは弱いらしい。捕獲された際の状態も良くはなかったようだ。
昨日25日までは、オレが見たのと同じような状態で展示がなされていたようだが、今日以降は未定らしい。
もしかすると、引き続き、氷の上で展示されているかも知れないから、気になる人は要確認。

しかし、深海魚シーズン終盤が近づきつつあるこの時期に、まさかこれほどの大ネタと遭遇できるとは思ってなかった。
同じような機会は、今後再び訪れるかも知れない。
今回見られなかった人も、まだまだ諦めることなく、しっかりアンテナを張り巡らせて、その“機会”に備えておくといいと思う。

それにしても、昨今の深海ブームは凄い!!
あわしまマリンパークの水族館2Fは、すっかり深海フロア。
深海生物のみが入ったタッチプールには、ダイオウグソクムシまでいたりする力の入れよう。
この深海展示は通年行われるのか、シーズン中だけのものなのかは分からないけれど、深海生物好きには、要チェックな水族館が増えたってことだ。
あわしまマリンパークもそうだけど、こんなにあちこちで生きた深海生物が見られるなんて、日本の水族館って本当に凄いなぁ、とあらためて思わされた。

八景島シーパラダイスのミツクリザメフィーバーに思うこと [サメ]

今月13日、八景島シーパラダイスに今シーズン初のミツクリザメが搬入された。
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※写真は昨年のもの

八景島でのミツクリザメ展示は、今や驚く話ではないのだけど、今回の搬入数は何と11匹!! それは流石に驚かずにはいられないというものだ。
今回オレは見に行くことができなかったが、各種SNSはどっちを向いてもミツクリ祭り。ついでに、オレのブログの過去記事までアクセスが集中(笑)
少なくともオレ周辺では、ちょっとした“ミツクリフィーバー”が巻き起こっていた。
幸い、週末まで生きていたこともあって、見に行った人はかなり多かったようだ。

ただ、今になって展示に対する否定的な意見も目に付くようになった。
死ぬと分かっているものをどうして展示するんだ、とか、逃がすことはできなかったのか、とか、全部を連れてくる必要はなかったんじゃないか、などが主だったところ。

でも、こういう否定的な意見が出てくることも、生きたミツクリザメの姿を多くの人が見たからこそ、なんだと思う。
きっと、生きたミツクリザメの想像と大きく違う弱々しさに、同情的な気分になるからなんじゃないかな?
オレだって、6年前に初めて生きたものを見た時、儚さすら感じさせるその姿に、見てはいけないものを見てしまったような、何だか後ろめたい気分になったものだ。
とは言え、八景島シーパラダイスが行った11匹の展示は、一部で言われているような酷いことではないと思う。

そもそも、ミツクリザメは狙って捕れるようなものではないそうで、捕れるか捕れないかは運次第。展示を計画したからと言って、それができるような代物ではないのだ。
八景島で展示されることが多いのは、シーパラと付き合いのある漁師の漁場が、たまたまミツクリザメの多い場所だから、なんだと思う。
それだって、その水深にいる別の何かを捕る網に偶然かかってしまっているだけ。漁師からすれば、本来の狙いとは違う混獲物なのだ。
通常ならシーズンを通して1匹か2匹しか捕れないものが、今回13匹も捕れてしまったのも、何かしらの理由はあるのかも知れないけれど、結局は偶然が重なって、ということでしかない。
だからこの先、再び展示されることがあるかも知れないし、もう2度とない可能性もあるってことだ。

そんなに多く捕れるなら、少しは逃がせば… という意見だが、ミツクリザメに限らず、深海ザメは水から揚げると、途端に弱ってしまうのだそうだ。
1度水から揚げてしまえば、そこから海に戻しても死んでしまう可能性が高い。
そもそも、深海から急激に引き上げられているのだから、その時点でかなりのダメージを受けてしまっているのだ。
漁師が狙った漁獲物を回収するのに、網を揚げるのも当たり前の話であるからして、網にかかってしまったサメは、本当に運が悪かったとしか言いようがない。

死ぬと分かっていても、それが食べる目的のものなら、まだいいのかも知れない。
でもそれが、展示と言えば聞こえはいいが、“見せ物”になってしまっていることが、命に対する冒涜のように見えてしまい、それを不愉快と感じる人がいるのだろうと思う。
でも、当のサメからすれば、食べられようと、見せ物にされようと同じこと。
捕まった時点で、死んでしまうことに変わりはないのだからね。
ならば、その姿を展示という形で見せてもらうというのは、食べるのと同様、命の有効利用ではないかと思うのだ。
TVなどで見て、それに興味を持った人が、その生きた姿を見て何かを思い、考える。
それが上記のようなネガティブなものだったとしても、生きた姿を見たからこそそう思った訳で、展示されたことに意味はあったのだと思う。
だから、個人的には、不幸にも我々の目の前にやってきてくれたミツクリザメには深く感謝しているつもりだし、その機会を作ってくれた水族館にもありがたいと思っている。

それもダメだというのなら、水族館や動物園など、生きた生き物を展示するという行為、そうした施設の存在自体がダメ、という話になる。
もちろん、それ自体が人のエゴによって成り立っているものだから、展示される生き物の立場で考えれば、“悪”以外の何物でもないのだけれど…

飼えもしない生き物を… については、飼育法が確立していない生き物は、例えそれが深海生物でなかったとしても、ほとんどの場合、最初はうまくいかないものだ。
今でこそ飼えるようになった生き物でも、最初は今のミツクリザメよろしく、アッという間に死んでしまっていた歴史がある。
そんな失敗から何かを得て、対応、対策を繰り返して、ようやく長期飼育が実現するのだ。
深海の住人であるミツクリザメが飼えるようになるには、まだまだ乗り越えなくてはならないハードル、それもかなり高いヤツがいくつもあるから、長期飼育はまだまだ夢物語に近いけれど、いつか何かのきっかけで、飼えるようになる日が来るかも知れない。

“飼う”からこそ、知れることは山ほどある。
だからと言って、生き物を消費していいという話ではもちろんないけれど、遠く未知の世界である深海の、魅力的な住人のことをもっとよく知りたいと思っているのはオレだけではないはず。
水槽で弱々しく死にゆく姿を見せられるのは、決して気分のいいものではないけれど、いつか、きちんと飼育、展示ができるようになる日のために、その死も無駄にはなっていないはず… そう信じたい。

深海ザメの話 [サメ]

先日のNHKの放送がきっかけで大ブレイク? したダイオウイカ。
ちょっとしたブームに気をよくしたのか、深海プログラムの第二弾とも言うべき「深海ザメ」が7月28日に放送された。
見た人も少なくないのではないかな?

前回のダイオウイカの時は、視聴環境の問題で見ることはできなかったこともあり、「ダイオウイカなんて、デカいイカだろ?」なんて嘯いていたのだけど、サメ、それもミツクリザメやらメガマウスが登場するらしい、なんて耳にしてしまったら、それをそのまま聞かなかったことにはできないよね。
でも、ウチでは見られないのである。
どうしたものかと思っていたら、故障をきっかけに買い換えた新しい携帯電話では、どうやら見られるらしい。お陰で今回は部分的にではなく、ちゃんと見ることができた。何かと不自由だった新しい携帯だけど、買い換えて初めて良かったと思えたよ(笑)

さて、深海ザメである。
番組で紹介されていたように、日本の周辺には、駿河湾や相模湾、そして熊野灘沖など、深海ザメが生息する環境が比較的身近にあることから、それらが捕獲されたりする機会も多く、場合によっては水族館に生きて搬入されることもある。
お陰でオレも、ミツクリザメを始め、ラブカやオオワニザメ、オロシザメ、ヨロイザメなどを見ることができた。
中でもミツクリザメは、見に行くことに特に注力していることもあるけれど、生きて泳ぐ姿を5回も見ることができているのは、我ながら驚きでもある。
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オロシザメ 2011 伊豆三津シーパラダイス
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ヨロイザメ 2013 竹島水族館

とは言え、水族館に搬入されたミツクリザメは、大抵1~2日で死んでしまうことが普通で、オレがこれまで見てきたものも、命の炎が消えかかっているような、とでも言うのか、実に弱々しいものばかりだった。
そのため、どこか儚いもの、みたいなイメージが強く、ゴブリンなんて呼び名がまるでしっくり来ない、ずっとそう感じてた。
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しかし、日曜日の放送で見たものは、オレのそんなイメージを覆した。
海底での泳ぎこそ、あまり力強さを感じさせるものではなかったけれど、索餌、そして捕食シーンは、オレの知らない姿だったからだ。
目の前のアコウダイ? に噛みつき、カスザメの捕食シーンを連想させる、一気に丸飲みにしていく摂餌スタイルは、オレの想像とは違っていて、とりわけ正面からの映像は、“ゴブリン”の呼び名も相応しいかも? なんて思うほどの迫力だった。
噛みついた尾から、呑み込むまで、逃してなるまい!! みたいな必死さも感じられて、弱々しいイメージのミツクリザメにも、豪快な捕食者としての一面があることを知った。
それが見られただけでも、あの番組の価値は大いにあったと言うものだ。
できれば、それを目の前で見てみたいけれど、あれが水族館で見られるようになるには、まだまだ多くの課題があるんだろうなぁ。
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八景島シーパラダイスで撮影

余談ながら、ミツクリザメの特徴みたいに言われている飛び出す口。
多少の差はあれ、サメなら多くの種類で捕食時には口(というか歯茎)が飛び出す。
ミツクリザメでは、他の種類よりも長く、より前方まで飛び出すようになっているけれど、例えば、捕食中のホオジロザメの写真でも検索してみて欲しい。歯の回りに剥き出しになったピンク色の歯茎が、ミツクリザメの飛び出している部分に当たる。

番組ではミツクリ、ラブカと並ぶ、深海ザメのスーパースター、メガマウスも多くの時間が割かれ、紹介されていた。
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油壺マリンパークで展示中の標本

標本や剥製はオレも何度も見たことがあるものの、やはり泳ぐ姿というのはそれらとはまるで印象が違っているものなのだね。
口を閉じた状態の頭(標本は大抵、口が全開)は、イメージよりも小さい感じだったし、何より体つきのゴツさ、中でも特に、尾柄部の太さが強く印象に残った。

摂餌シーンとされた場面は、実際には食べていなかったと思う。
でも、同じプランクトンフィーダーでも、ジンベエザメよりマンタに近い摂餌スタイルなんだろうな!? ということを想像するには十分すぎる映像だった。
恐らく、本来はあの大きな口を全開にして、餌動物の群れに突っ込んでいくんだろうね。

そんな泳ぐメガマウスを見て思ったのが“飼えそうじゃない!?” ということ。
表層付近まで上がってくるなら、少なくともラブカやミツクリザメより飼いやすいのでは? なんて思ってしまうのだけど…
生きたメガマウスが展示されたら、ジンベエザメなんかよりはるかに凄いことは間違いない!!
輸送ができそうな2m程度の個体が捕獲されれば、水族館での展示も夢ではないのかも!? 映像を見ながら、そんな束の間の夢を見られた。
まだ50例ほどしか捕獲例がない激レア種だっていうのにね(笑)


それからカグラザメ。
深海ザメの3大スーパースターに続く4番目の存在になれるんじゃない? なんて思うのだ。
深海を紹介する映像にはほぼ必ず登場するし、特徴的な形といい、その巨大さといい、スター性? も十分。
そんなカグラザメも、今年の初めだったか、沼津港深海水族館に生きて搬入されたものの、近そうで遠い沼津までの距離感の前に「そんなに好きな種類じゃないから…」を言い訳に、行かなかったことを今になって後悔してる。
生きた姿が見られる機会なんて、この先再びあるのかは分からないというのに…

それにしても、映像などで紹介されるものはどれも3mオーバー。
産まれたときは小さいはずだと思うんだけど、小さい個体はどこにいるんだろう?
水族館での飼育、展示は難しそうだけど、これもまた小さい個体が見つかれば、その可能性も少しは高まるような気がするんだけど…

現在、知られているサメは約560種類。その大半は深海棲だと言われている。
つまり、まだまだ見たことない種類なんていくらでもいるということだ。
その中で見てみたいのは、前回のダイオウイカ編に登場したバケアオザメ。
いや、バケてなくていいから、アオザメは是非とも見てみたい!!
ヨシキリザメ、ホオジロザメ、アオザメは死ぬまでに見てみたい、オレの3大憧れ生物なのだ。

って、最後の最後で深海ザメじゃないじゃーん!!