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リバーワンダーで一番のお気に入り メコン川水槽 [水槽]

リバーワンダーでは実際に見られるのを特に楽しみにしていた水槽がいくつかあった。
その内訳は、アリゲーターガーの水槽、メコン川の水槽、長江の水槽の3つ。
アリゲーターガーの水槽はアフリカエリアに展示変更されていて見ることができず、長江の水槽は思っていたよりも小さく、暗く、周囲の映り込みも強烈だったので、期待していたほどではなかった…… のだけど、メコン川水槽は思った通り。期待を裏切らない素晴らしさだった。

まず、何よりデカい!!
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その大きさは見た感じ、800tほどと推定しているのだけど、1000tくらいあるかも!? な大きさ。アクアワールド大洗のシロワニ水槽よりはずっと大きく、美ら海水族館の危険ザメ水槽くらいのサイズ感だろうか。まぁ、とにかくデカい。

そんな水槽を泳ぐのは、メコンオオナマズやパールムなどのパンガシウス、パーカーホなどのコイ科など。アクアトトぎふのメコンオオナマズ水槽に似たラインナップ。そこにアロワナやチャオプラヤ淡水エイを追加したような構成だ。
日本の水族館で見られない魚はほぼいないが、何せこんなに大きな水槽で展示されているから、その見え方は全然違う。
例えば、メコンオオナマズ。
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日本ではアクアトトぎふでの展示が有名だが、あの水槽のメコンオオナマズは水槽の底の方でおとなしくしていて、活発に動き回っているような印象はない。アクアトトでの印象から、メコンオオナマズは物静かな魚、ずっとそんな風に思っていたのだが、リバーワンダーでは水槽の中層付近を泳ぎ続けていて、一か所でジッとしている、みたいなことはなかった。あの体型を見れば想像できそうなものだが、実はよく泳ぎ回る魚だったらしい。

そしてチャオプラヤ淡水エイ。
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こちらも日本、板橋熱帯環境植物館で見られるが、エイの大きさに対して遊泳スペースが限られるためか、その動きはパターン化しているように見える。
リバーワンダーには少なくとも3匹がいたが(奥に退避スペースがあるらしく、定期的にそこに出入りしてしまうので、それ以上いる可能性もあり)、それらはいずれも、底砂の上をエイらしく這いずるだけでなく、やはり中層から上層を思っていた以上によく泳ぎ回る。水族館の大水槽にいる海のエイとほとんど変わらないくらいに。
このエイも見慣れているつもりでいたが、オレが見ていたのはこの種本来の動きではなかったのかも知れない。

泳ぎ回るパンガシウスたちもこれだけ広ければ、どこかに体をぶつけたり、擦ったりすることがないのだろう。どの個体も綺麗で、ヒレ先や顔周辺などにありがちなキズや瘤などがある個体は見られなかった。
当たり前の話なのだけど、水槽はやっぱり広ければ広いほどいい!! あらためて強く実感させられた。
反面、容量の限られた水槽でこれらの魚を飼っている日本の水族館スタッフの人たちの技術や努力を思い知らされるようで、日本の水族館(の人たち)凄いなぁ、とも。
こんな水槽があれば、今より楽になる部分もあるだろうに……

水槽の大きさは魚の大きさにも如実に影響を及ぼし…… という訳でもないようで、メコンオオナマズやチャオプラヤ淡水エイなどは日本で見られるものと変わらないか、ちょっと小さい? くらい。パールムやタイガーバルブも大きさに驚くことはなかった。
水槽の大きさで、魚の大きさを実感しにくいから、という可能性もあるけれど……

でも、大きさで驚いたものもいて、それがこれ。
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最初は他の魚に目を奪われ、コイが泳いでる、くらいにしか思っていなかったんだけど、ふと、そのコイに目をやると… これ、ブルーフィンカープじゃない?
ブルーフィンカープはNeolissochilus stracheyiのことを指すのが一般的で、この水槽にいたものはそれとは別種、Tor属の何か? みたいな気がするが、いずれにしてもこんなに大きな個体を見たことがないし、違う種類だったとしても目を引く脇役として存在感を放っていた。

この水槽、意外と多くの魚種が入っていたのだけど、水槽の大きさ故、奥の方に行かれると簡単にその姿を見失う。
だから、しばらく眺めていると、こんなのもいたの!! という魚が姿を現したりする。
そんな驚きをもたらしてくれたのが、ドルフィンカープ(Bangana behri)。
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初めて見る魚ではないけれど、デカい!! このサイズは初めて見た。
水槽内には1匹しかいなかったのか、写真の個体以外は見かけなかったが、なかなかの大きさ。この種のフルサイズ級だろうか。
現在、日本の水族館では展示されていないと思うが、これもいるのか!! と、デカいな!! という2つの驚きから、一生懸命その姿を追いかけてしまった。
アクリルパネルの近くには来てくれなかったが、この水槽を楽しませてくれた1匹だった。

この規模の淡水魚水槽、日本では難しい、というか、無理だと思うけど、欲しいよなぁ。
知ってる魚でも全然違って見えるし、その違って見えた姿こそ、その魚本来の動き、姿なのかも知れないのだからね。
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福井県海浜自然センター 「ふしぎな水槽」餌やり体験 [水槽]

福井県自然海浜センターに入館するとすぐ、目の前にある「ふしぎな水槽」。
この施設では、もっとも大きい級の水槽である。
水槽側面のアクリルにはポケットが開いていて、水面よりずっと下にあるポケットから水が溢れないことで“ふしぎ”の名が付いた水槽だ。
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水槽上部が陰圧とされることで、見た目の水面よりも下にあるポケットから水が溢れない仕掛けだが、水族館巡らー的には“ここにもあるのね”くらいな感じだろうか?
とは言え、個人的にはいつも思う。こういう水槽(がある施設)で停電したら、盛大に水が溢れたりするんだろうなぁ…… って。

まぁ、それはいい。

こういうポケット付き水槽では、魚に触れたり、餌を与えたりできるのだけど、海浜自然センターでも餌やりができる。
水槽の中にはイシダイとかフグとかアナゴとか、強力な歯を持った魚が沢山入っているので、手を入れる気にはならないが(間違っても入れないようにね!!)、餌やりくらいはやっておこう。見学するのに1円も支払っていないのだからね。

餌やりをしたい旨を受付で伝えると、入り口の脇にある冷蔵ケースを案内された。
扉を開けると、ガチャガチャが入っていて、お金を入れて回すと餌の入ったカプセルが出てくる。
冷蔵庫の中にあるガチャガチャは日本でここだけだと受付のおばちゃんに自慢された。
日本で唯一の冷蔵ケース内のガチャガチャ機。

スゴイ!! ……のかなぁ!?

餌はわざわざ冷蔵庫に入れられてるくらいだからして当然、生もの。
カプセルには生のオキアミが入っていて、それと冷蔵ケースの脇に置いてある菜箸を手に、水槽ポケットへ。

餌がもらえることをよく知ってる魚たちが群がってくるが、ポケットを取り囲むのはメジナとイシダイ。
動きも素早く、とりわけイシダイは他の魚を追い散らしながら、ポケット前を独占しようとする。
水槽で餌やりを楽しむ子供たちは、集まってくるこれらの魚に食べさせるので、それなりに多くの餌にありつけている。
そんな様子を見ると、イシダイやメジナたち以外の魚に食べさせたくなってくる。
動きが素早く、かつ、周りの魚を蹴散らすように集まるイシダイをどうやって避けようか。

ポケットの位置を変えてみても、人の動きに合わせて勢いよく付いてくる。
う~ん、こいつは結構難敵だそ。
でも、よくよく観察していると、ポケットの前で陣取ってはいるが、中には入ってこない。
他の魚をポケットの中まで誘導できれば、イシダイに餌を取られずに与えられるかも知れない。
という訳で、箸でしっかりつまんで、ポケットの中でオキアミをゆらゆら揺すってみる。
イシダイたちは、それを奪取しようと、ポケット前でピクピクしてるが、中には入ってこない。入ってきたくない理由があるのか、入れないのかは分からないが、ここなら安全だ。

すると、カサゴが入ってきた。ポケットの大きさに対して、それなりに大きなサイズだが、そこに入ってきて、オキアミをぱくりとやる。
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最初はイシダイから餌を守れたことに満足したが、次々にポケット内に入ってくるカサゴもポケット内を独占してることではイシダイと変わらない。
次はイシダイ、メジナ、カサゴ以外に与えてみよう!!

他のポケットで子供たちが餌やりを始めると、イシダイが一瞬いなくなるので、その隙にポケットの近くにいるメバルに与えてみる。
メバルはすぐに近寄ってくるが、ポケットには入ってこないし、動きが早くない。目の前で餌を放っても、イシダイに奪われてしまうこともあった。
お次はキハッソク。こいつは全然ダメ。餌に近寄っては来るが、目の前に放っても直線的にじわっと動くので、イシダイやメジナの機動力の前には太刀打ちできない。この水槽で餌にありつけているのだろうか?
イシダイがいない隙にタカノハダイがポケットに顔を突っ込んできたので餌を与えるが、イシダイが戻ってくると追い散らされてしまう。
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仕方ない。再び、ポケット内で餌をゆらゆら。
またカサゴが集まってきた… と思ったら、そこにドチザメ幼魚が突っ込んできた。
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ドチザメ、しかも小さな幼魚にも関わらず、周りの魚はお構いなし。猛烈な勢いでカサゴたちを押しのけ、ポケットから出てくるんじゃないかくらいの勢いで餌をねだりに来る。
という訳で、ドチザメはやってきてさえくれれば、他の魚に取られることなく食べさせられる。

ポケットを移動し、餌をゆらゆらしてると、今度はアオハタが入ってきた。
ポケットには頭しか入らないような、やや大きめの個体。
餌を目の前に落とすと、食べない。口を開けるので、そこに入れても、ペッと吐き出してしまう。
もうお分かりだろう。アオハタが用があったのは、オキアミではなく箸だということを。
求められれば応えなくては仕方がない。小笠原水産センターで身に着けたスキル? で、アオハタの口内&顔周辺をマッサージ。
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アオハタのハートをガッチリキャッチ!! こやつは餌よりこちらが好きらしい。
やり始めると、ずっとそこでうっとりしちゃうので、適当なところで切り上げたが、うまくできれば1日中これをやってられると思う。

投げ入れるのに比べると、箸を介してだけど、魚と直接やり取りがあるし、特定の魚に与えようとすれば、それぞれの動きをじっくり観察する必要もある。
そして、餌を前にした魚たちの、種類ごとの個性みたいなものが見えやすいようにも思うし、ハタのマッサージもできる。
この水槽の餌やり、なかなか楽しいです!!
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魚津水族館の富山湾大水槽&ピラルクー水槽 [水槽]

現在の魚津水族館は1981年に建った3代目なのだそうだ。
今年で33年目だから、驚くほど旧いという訳でもないのだけど、日本の水族館の歴史を語る上で、重要な水槽がある。
それが富山湾大水槽。
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大水槽と言っても、驚くほど大きい訳じゃない。
水中トンネルもあるけれど、幅は1.5mくらいの狭く小さなものだし、何より鉄骨が縦横両方に巡らされていて、今どきの水中トンネルを見慣れた人からすれば、大したものには見えないどころか、ショボイなぁ、なんて思ってしまうのかも知れない。
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でも、それは“今”だから。
この水槽ができた33年前には、誰もが驚き、体験したことのない水中感に感動したはずの、とんでもない大水槽だったはずなのだ。
何故なら、この大水槽は、日本で最初の水中トンネルを持った水槽だから。

アクリル製の大水槽は、今やどんな形でも作れる。水中トンネルだって思いのままだ。
でも、この水槽ができた33年前はまだ、アクリル製の大型水槽が実用化されて10年も経っていない頃。その可能性を確信していたからこその水中トンネルだったのだろうけど、その強度に絶対の信頼を置くことはできなかったのだろう。
新しい水族館に目をやれば、トンネルは大型化し、もはや小型ジェット機くらいの径があるというのに、鉄骨などの構造物はなく、見上げる人の頭上をマンタやらイルカやらペンギンやら、あらゆるものが泳いでいる。
それも、魚津のこの水槽から始まったのだ。そう考えると、少々大袈裟だが、水族館文化遺産のひとつ、と言ってもいいかも知れない。日本の水族館の歴史に残るものであることは間違いないのだし、ね。

水槽の歴史的価値はともかく、肝心の中身はと言うと、富山湾の名を冠した水槽ということもあり、主役はブリ。他にはマダイやスズキなど、比較的身近な大型魚に加え、富山湾にはあまりいないんじゃない? と思われるクエも数多くが泳いでいる。
日に数度、ダイバーによる餌やりショーが行われていて、オレが行った日には、遠足に来ていた幼稚園児たちのハートを鷲づかみにしてた(笑)
水槽に入るダイバーは3人いるそうで、餌の入った容器の色がそれぞれ違うとのこと。
オレの行った日は、黒い餌容器のスタッフ氏が担当。
常連になると、今日は○○さんの日だ!! とか言って見に行ったりするのかな!?

先日のリニューアルでもっとも大きく変化した(らしい)のも、この大水槽関連。
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水槽上部バックヤードが見学できるよう、順路の中に組み込まれたのだそうだ。
リニューアルの前後に行ってる友人に教えてもらったのだけど、リニューアル前にはなかったらしく、リニューアルの目玉でもあるようだ。
大水槽を上から眺められるようになった他、水族館のバックヤードがそれとなく見渡せる。
年代物の水族館にしては、バックヤードは小綺麗な印象。恐らく、展示の一部となることから、その周辺も綺麗に化粧直し? されたんだろうなぁ。

そのバックヤードの左奥に見えるのが、ピラルクー水槽。
魚津水族館にはピラルクーもいる。
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水槽はきわめてシンプルなベアタンクで、こちらもあまり大きくない。
と言うか、ピラルクーが成長したら、ちょっと(かなり?)窮屈じゃない? と心配になりそうなサイズ。
幸い、現在泳いでいるのは、まだ1m少々の個体が3匹。
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それ以外には2匹のポルカドット・スティングレイが2匹入っているのみ。
小さいとは言え、3匹もピラルクーがいて、どうやってエイに餌をやるんだろう? と心配になってしまうのだけど、エイたちは元気そうにしてたので、何かしら方法があるのだろうね。

少々小ぶりだけど、それ故に顔が綺麗だし、日本海側の水族館は、比較的“ピラルクーに会える率”が高いけれど、富山、石川両県で展示されているのはここだけのはず。
ピラルクーを目的に来る水族館ではないと思うけど、深海生物や水族館の歴史を感じられる大水槽の見学のついでに、ピラルクーもいるよ、ならば満足感も十分得られるはずだ。

海きららの九十九島大水槽 [水槽]

パールシーセンターがリニューアルを経て、「海きらら」となったという話はひとつ前のブログに書いた通り。
でも、その“海きらら”という名前は、正直、あんまりカッコよくないなぁ、なんて思ってた。
しかし、実際に海きららに行き、大水槽を見た今ではそう思わなくなった。
あの九十九島大水槽をひと目見た瞬間、この水族館の名前は海きらら以外あり得ない!! そう実感したからだ。
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この大水槽は、08年のリニューアルで追加されたもの。
それまではアオウミガメや大きなタマカイが泳ぐT字型の大水槽(ひとつ前のブログ参照)が最大の水槽だったが、それを大きく上回る650tの容量を持つ大水槽だ。
水槽正面から斜め奥へと続く擬岩のせいか、水槽は見た目や数字で聞く容量以上に大きく見える。
とは言え、今日び、650tくらいの容量では驚くに値はしないし、中を泳ぐ魚も九十九島周辺に生息している魚ということで、特に珍しいものはいない。むしろ、ありふれた種類ばかりと言ってもいい。
それでも、この水槽は非常に印象深かった。
むしろ、内容を考えれば、それが驚きだったくらいだ。

何がそんなにいいのかって?
まず、何と言っても圧倒的に綺麗なこと。
行く以前から、とても綺麗な水槽である、と話には聞いていたし、写真でも見たことがあったから、“こんな感じだろうな?”とある程度の想像はしていたつもりだった。
でも、実物の美しさはそれをはるかに上回っていた。
オレが行った日は天気が良かったこともあるけれど、降り注ぐ太陽光が水槽を明るく照らし、水槽内は光で満ちあふれていた。
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水、底砂、そして魚。
それらすべてがキラキラと光り輝いているようで、そんなのを眺めていた時に思った。
「海きらら…」って。
名は体を表す、ではないけれど、これ以上ない館名だと思った。

この水槽には屋根がない。
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イルカショープールの奥側が大水槽

そのため、外光はダイレクトに射し込む。オレが行った日は、日射しが痛いほどの好天だったせいもあるのだろうけど、太陽光を受けた水は輝き、底の砂も真っ白ではないはずなのに、直視できないほどのまぶしさ。
そこに水面の水紋が映し出され、さらにその上に泳ぐ魚の影が行き来する。
さらに、水槽の奥のコケで覆われた擬岩の緑が、白い砂の海から立ち上がる山のようで、これまたすごく美しいのだ。
しかも、時間によって(太陽の位置、陽の強さ)、水槽の明るさが変わる。
すると、水槽内の見え方も違ってくるから、見る時々によって違った美しさが楽しめる。
珍しい魚や、特別好きな魚が入っているワケでもないこの水槽の前で、ずいぶん長い時間を過ごしたけれど、それもそんな変化が楽しかったからなんだろうと思う。
でも、屋根がないお陰で、鳥による魚の食害は無視できない問題になっているらしい。

泳ぐ魚たちも綺麗だ。
そのため、目の前を通り過ぎるものをついつい写真に撮ってしまう(笑)
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もうひとりのオレが、“それ、ただのコショウダイだから…”とか、“それ、メジナだよ”とか、冷静な意見を投げかけてくるのだけど、魚好きにとって綺麗な魚は、それがよく見知ったものだったとしても、やはり魅力を感じてしまうのだ。

この水槽に限らず、太陽光が直接射し込む水槽というのは、どこでも綺麗なものだが、長崎の太陽、魚の密度、砂の色など、様々な要素がうまくバランスしてこその美しさなのだろうけど、とにかく、いつまでも眺めていたくなる水槽だった。
オレが行った日は天気が良かったので、晴れの日の美しさしか知らないけれど、雨や曇りの日にも、その時ならではの綺麗さがあるのかも知れない。

ただし、その綺麗さの維持は簡単ではないようで、強い太陽光は様々なものを美しく彩ってくれる反面、コケも強烈に育ててしまうので、オレが行った日にも、2人のダイバーが掃除を行っていたが、暖かい時期には2日ごとに、2人掛かりで潜水清掃の必要があるのだそうだ。

いずれにしても、その水景の美しさは、実際に見に行って、その目で味わってみて欲しいと思う。

串本海中公園の大水槽 [水槽]

串本海中公園の主役はサンゴなど無脊椎である、ひとつ前のブログにはそう書いた。
もちろん、そう感じたからそう書いたのだけど、サンゴが育つほどの水がある場所であるからして、魚だってかなり魅力的なものが揃っている。
大水槽と呼べそうな水槽は2つあって、そのひとつは入ってすぐの所にあるサンゴの水槽。
眩しいほどの光で溢れた、串本海中公園の水族館を象徴するような水槽だ。
サンゴの水槽とは思えないほど魚も沢山入っているが、この水槽の主役はあくまでサンゴ。
そしてもうひとつの大水槽が、順路最後にあるトンネル水槽。サンゴなどが入っていないこともあり、この水族館には珍しい暗い水槽となっている。個人的にはもう少し明るいと嬉しかったのだけど…
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水中トンネルは24m、容量は1250tとかなりの大きさ。完成した1988年当時は、日本最大の水槽だったらしい。
この水槽にも天然海水が常時注水されており、1日に水槽の1/3ほどが入れ替わっている。ほとんどの水槽では温度調整等もなされることなく、汲み上げられたそのままで注水されるが、この水槽には南方系の魚も入っていることから、寒い時期は2ヶ月ほどだが加温される。暖かい串本の海も、真冬には15℃ほどにまで水温が下がってしまうのだそうだ。

こちらの主役は完全に魚。もちろん、この水槽の住人たちも串本周辺で見られるものだけ。数は少ないものの、夏場にはメガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)なんかも見られることがあるそうで、水槽にいるものも串本沖で捕獲されたものだとか。
他にも、マグロや大型アジ類、サメやエイ、珍しいヒメウミガメなんかも入っていたりする、かなり立派な混泳水槽だ。
大型魚ばかりでなく、マアジやマルアジなど、小さな魚も数多く泳いでいる。夏場から秋口にかけて、魚たちの活性が高まる時期には、食べられてしまうこともあるそうだが、襲われてしまうことは多くはないらしい。

こうした混泳水槽で小魚を襲う魚と言えば、誰もが連想するのはサメだ。
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この水槽にもドチザメやエイラクブカに加え、大きなヤジブカもいる。
メジロザメ類はやる、なんて評判を聞いたことがあったような気もするが、この水槽ではそのヤジブカも含め、サメたちが小魚を襲うことはないそうだ。
では犯人は? マグロ? ウミガメ?
答えはロウニンアジやギンガメアジなどの大型ヒラアジ類。
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これら大型アジ類はとにかくクセが悪く、大食漢の上、遊泳力が高いため、被害が大きくなるらしい。これらが他の魚を襲ってしまうという話は、余所の水族館でも聞いたことがあったような…
それでも、南方系の大型ヒラアジ類が同居魚を襲うのは、水温が高い時期だけ。温帯種のブリやカンパチはさらにクセが悪く、季節に関係なく同居の小魚を襲いまくるのだとか。かつては大水槽にもそれらが飼われていたそうだが、今現在展示されていないのは、それが理由らしい。
いかにも混泳魚を襲いそうなサメやマグロは、実はいいヤツ? なのだ!!

サンゴ水槽、トンネル水槽のどちらも、給餌時に解説が行われる。
トンネル水槽の給餌解説の時間に水槽の所に行ったら、オレと老夫婦の3人だけだったので、急遽、水槽上部へと案内され(トンネル水槽の上部バックヤードは常時開放されている)、そこでの解説となった。
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水槽への給餌もやらせてくれたけれど、一緒に上がった老夫婦は、水槽に何度か餌を撒くとそこで満足したようで、そのまま帰ってしまったので、給餌するスタッフ氏にいろいろ聞くことができた。オレにとってはとてもラッキーな給餌解説となった。

いろいろな魚が泳ぐ水槽だが、主役はクロマグロじゃないかと思うのだ。
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串本周辺は、マグロの畜養や養殖が盛んで、水族館で飼われているものもそんな畜養されていたものの一部。
小さな頃から生け簀で飼われていたため、水槽に順応しやすく、また、死んだ魚を餌に育っているため、生きた魚を襲うこともしないらしい。
ただし、神経質なことは間違いなく、飼うのは簡単ではないようだ。
その“飼いにくさ”の一端は、給餌時にも見て取れた。
マグロが泳ぐ辺り目がけて餌を投げ込むと、それに自慢のスピードで突っ込んでくるんだけど、餌を目前に突如急反転し、食べずに泳ぎ去ってしまうものを何度か見掛けた。
何でも、捕食体勢にある時、自分の遊泳軌道に他の魚が入るのを嫌うらしく、例えば、自分が食べようとした餌に、他の魚が向かってきているのを見ると、食べるのを止めてしまうのだそうだ。マグロしかいない水槽(生け簀)などでは問題がなくても、泳ぎ方が異なる魚との混泳水槽では、マグロにしっかり餌を食べさせるのは、思いの外難しいらしい。

同居魚を襲う大型アジ類の話も、実はこの時に聞いたもの。
与えた餌を食べなかったマグロが、お腹を空かせて混泳魚を襲わないのかという質問に対する答えだったのだ。

余談ながら、水温の高い夏場には、サメも南方系の種類が現れるそうで、イタチザメなども搬入されたことがあるらしい。しかし、飼うのが難しいイタチザメは、この水槽でも1ヶ月が最長の飼育記録とのこと。

串本=サンゴの海というイメージができあがりつつあった所に、この水槽である。
沖に出ると、この水槽のような光景が広がっているらしい。
サンゴが茂る海だけが串本の海じゃない!! そんなことを強く感じさせてくれる水槽だった。

かごしま水族館のイルカ水路 [水槽]

今回の遠征の目的地は宮崎の出の山淡水魚水族館。
しかし、遠くまで出掛ける割に、小粒であることが分かっていたから、ちょっと規模の大きな水族館に行きたいなぁ、と。
だが、宮崎に大きな水族館はなく、もっとも近い大規模水族館は隣県のかごしま水族館しかない。
かごしま水族館には行ったことがあったけれど、以前行った時の写真はイマイチだし、宮崎まで行くんだから寄っておこうかと、翌日はかごしま水族館へ行く計画を立てた。
せっかく行くんだから、何か珍しいものでも見られないかと、HPを見てみると、休館日の案内が。イヤな予感がした。
恐る恐るそのページを覗いてみると、案の定、オレの遠征が年に数日しかない休館日にぶち当たってしまった。
その時点で出発まで残り数日のタイミング。キャンセルすると損の方が大きくなるため、仕方なく予定通りの日程で遠征することに。鹿児島でどうやって過ごすかは何も決めないままに。

とは言え、水族館に行かないとなると、行きたい所も、すべきことも思いつかない。
朝、ゆっくりホテルを出発し、朝食などを食べつつ、市内をプラプラ。たまたま目の前にやって来た路面電車に飛び乗ったのはよかったが、目的地もないので、つい水族館口という乗降車場で降りてしまった。
結局、休館中のかごしま水族館へ来てしまった。

水族館の周辺をぐるりと1周した時、水族館横のイルカ水路のことを思い出した。
そういえば、以前来た時、そこにシイラが泳いでいるのを見たっけなぁ、と。
橋の上から水路を覗き込むと、その時と同じように、シイラが泳いでいるのが見えたので、水路脇まで移動し、シイラを眺めることにした。
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イルカ水路はその名前の通り、水族館で飼育中のイルカたちが放たれている、運動場的な役割を与えられているのだ。
しかし、イルカはいつも放たれていないので、イルカを泳がせない時期には、シイラなど魚類が放たれ、橋の上や、水路の脇からそれらを観察できるようになっている。

今回は以前行った時よりもシイラの数は少なかったが、天気がよかったので、その姿をより綺麗に見ることができた。
水路にはキビナゴがイワシか、銀色に輝く小魚の群れもおり、そのキラキラと光る群れが慌ただしく動き回る様子を見ていたら、その周辺に頭の丸い縞模様の魚が。アイブリ? なんて思っていたら、なんとそれがシイラだった。
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シイラも補食時など、興奮すると明確な横縞模様が出てくるらしい。初めて見た。
その瞬間はコンデジしか持っていなかったんだけど、そんな瞬間、シーンを見せつけられれば、カメラを出さないワケにはいかないだろう。
そこから、ベストショットを狙って、水面を必死に見つめることに。
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上からしか見られない反面、透明度が限られ、波や風などの影響を受ける屋外ということもあってか、本当の自然下ではないにも関わらず、すごいものを見ているような気分になれる。少々興奮気味に水路を眺めていると、足下で白い大きなヒレを翻す魚の姿が見えた。
茶色い体に、白い点。ああ、ホシエイもいるんだなぁ、なんて思って見ていると、ヒレが翻った時に見えた顔がオレを驚かせた。ホシエイではなく、マダラトビエイだったからだ。

マダラトビエイも驚くほどの珍品ではないものの、オレの中でホシエイよりもランクが(見られると嬉しい度合い?)が高いこともさることながら、暖かい海の住人というイメージが強い魚が、鹿児島とは言え加温もしていない真冬の海で泳いでいたからだ。

濁った水底から水面付近へと姿を現し、岸壁すれすれに身を翻し方向転換。
泳いできた方へ泳ぎ去っていくという遊泳パターンを繰り返していた。
昼前後の鹿児島の海は満潮に当たるのか、水面が強く波立ち、また、その日は風が強かったので、その度に水面にさざ波が立ち、ホント、見にくい。
しかも、水路の横は桜島行きのフェリーターミナル。フェリーが入港、出港する度に、水路の水も大きくうねる。
そんなタイミングでエイやシイラを見つけても、写真はおろか、ぼかしがかかったような感じで、とても見にくい。
しかし、何とか写真を撮ろうとしばらく粘っていたら、波も落ち着いてきてエイの姿もしっかり見えるようになってきた。
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2匹いたようで、1匹は岸壁に張り付いたカキを食べているのか、ガシガシと何かを噛んでいるようなそぶりを見せていた。
見慣れたエイだけど、海で見ると、それが放たれたものであることが分かっていても、感動するものだ。
エイやシイラたちのお陰で、水路の周辺だけで2時間ほど潰すことができたのも助かった。

水路はこれらの放たれた魚以外に、元からそこにいた魚も数多くおり、シイラに襲われていたキビナゴ? か何かの、銀色の小魚以外にも、マアジ、カワハギ、クロサギの姿を見ることができた。
そして、ある意味、マダラトビエイ以上に驚いたのが、アミモンガラを見つけたこと。
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分かりにくいけど、中央の水色の魚がそれ。

海と水路を仕切っている所のネットに、青みがかった灰色の魚がいるのを見つけた。
体を斜めにして、盛んにネットを突いているようだった。
最初はウスバハギか? なんて思ってしっかり眺めていると、体を横にした時、体側の白いスポット模様と、全身が見えたのでアミモンガラだと分かった。
ネットの外にいる魚だから、放たれたものではなく、野生の個体だ。
水族館でしか見たことがない魚がそこにいると思うと、それが別段珍しいものではないとは言え、何だか感動的な気分に。
長いレンズを持っていなかったから、小さくしか撮れなかったけれど、陽の光の下で見るアミモンガラは、これまでずっと灰色の魚だと思っていたオレのイメージを覆すような水色で、その鮮やかさもちょっと驚きだった。

鹿児島に行くのは今回で3度目。
南国のはずなのに、いつも凍えるほどに寒い。
まぁ、今回は雪が降っていなかっただけマシだけど。
それにしても、水路の魚たちが予定のないオレを楽しませてくれたけれど、それがもしいなかったら、なんて思うとゾッとする。
地方の水族館に遠征を考えている皆さん、計画を立てる前にしっかり休館日のチェックをしておくことをオススメしますよ。
特に12月は休館する水族館が多いようだし。

というワケで、今年の更新はこれで最後。
今年はこれまで以上に、多くの人に見てもらうことができた。
2013年も、今年以上に水族館に足を運んで、面白い話に遭遇してこようと思っている。
それでは皆さま、よいお年を。

上越市立水族博物館の大水槽 [水槽]

上越市立水族博物館には大水槽が2つもある!!

ひとつは、入館してすぐに登場するトロピカランド水槽。
その名前からイメージできる通り、南国のサンゴ礁をイメージした水槽だ。
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容量は200tと、イマドキの大水槽に比べるとさほど大きく感じないが、この水族館がオープンした当初は、まさに水族館の顔となる大水槽だったんだろうと思う。
中を泳ぐのは、アジ、コショウダイ、フエダイ、ニザダイの仲間など南国の魚たち。
年季の入った水槽は、どことなくくすんだ色合いで、中の擬岩もサンゴ礁という感じではないんだけど、昔からある水族館の大水槽という雰囲気。
魚たちが南国の魚で統一されているからか、南国感が希薄な水景の中でも、違和感なく見ることができる。
水槽同様、魚たちも年期が入っているのか? 大きく育ったものが多く、その点でも見応えがある。魚好きにはなかなか魅力的に感じられる水槽だと思う。
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この水槽では女性ダイバーによる餌付けが行われており、それがこの水族館のひとつのショーになっているんだけど、そこで活躍するのがマダラトビエイだ。
エイたちには、1匹ずつ名前が付けられ、水槽の主役的役割が与えられている。
何でも、この水槽で繁殖もしているそうで、水槽生まれの仔エイが数匹。

大きな親個体に対して、あまりにもサイズの違う小さな個体がヒラヒラと泳いでいて、その頼りないほどの小ささに、思わず顔がほころんでしまうのだ。

順路をそのまま進み、館内のちょうど中央付近に君臨しているのが、この水族館最大の水槽である「マリンジャンボ」である。
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トロピカランド水槽の3.6倍の容量を持つ720tもの大水槽で、93年に作られたものだとか。つまり、追加された部分である。
容量的には驚くほど巨大とは言えないが、水深が結構あるため、水槽があるフロアに入ると、正面に壁のようにそびえているので、数字以上に大きく見える。
水族館自体よりも13年も新しいはずなのに、水族館全体の雰囲気に合っていて、新施設が追加された水族館にありがちな、そこだけ突出して新しい感じがないのがいい。
とは言え、新しい水槽らしい部分もあって、正面だけでなく、裏側や中二階など、様々な面から眺められるように作られているのが古い水槽とは違うところ。
同じ水槽でも、視点が変わればまた違って見えるものだから、これはこの水槽の大きな魅力だと思う。
肝心の中身はというと、タマカイなどの大型ハタにフエダイ類、大型アジ類、エイ、ウツボなど。南国のものもいれば、マアジやマダイなど温帯種もいる水槽なんだけど、薄暗い照明や、水槽内の感じが南国風ではないため、あまり違和感はなかった。
強いて言えば、この水族館に来てみたかった理由のひとつでもあったヒョウモンオトメエイの存在感がやや強すぎる感じがするくらいか?
しかしながら、水槽内はもう少し明るい方が… とは思ったけれど。

ちょっとした驚きは、あまりまとまり感のある群れを作らないマアジが、しっかりと固まっていたこと。
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水槽のボス的存在のロウニンアジがしばしばアタックすることが原因だったようだが、今流行りの動く魚群も、何となくだが楽しめる。

さて、2つの大水槽のどちらがいいか。
それは見る人の好みによるんだけど(笑)、個人的にはトロピカランド水槽の方が好きかな。
理由は魚が綺麗で、その距離がより近いこと。
近さに関しては、単純に水槽の大きさの話だが、魚が綺麗に見えるのは水槽の明るさが効いているんだと思う。
マリンジャンボも、太陽光が降り注ぐ作りで、構成メンバー(魚)が少し違っていたら、もっともっと魅力的、というか、オレがときめくことのできる水槽だったと思うのだけどね。

京都水族館の大水槽 [水槽]

ひとつ前のブログにも書いた通り、京都水族館には水族館に期待するものが大抵揃っている水族館なので、大水槽もちゃんとある。
魚類展示のメイン水槽でもあるワケだけど、兄弟水槽? であるすみだ水族館のシロワニみたいな、エース級の生き物はいない。

写真が公開された当初から、エノスイの大水槽によく似ていると言われるけれど、オレも最初は、ちょっと小さいくらいで、ほとんど同じもののように見えた。
エノスイは京都水族館も手掛けたオリックス不動産がかつて手掛けた水族館だから、新水族館を作る上で、参考にした部分は色々とあったのだろう。そういう意味では、似ているのも当然? なのかも知れない。
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京都水族館

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エノスイ

実際に自分の目で見てみても、確かに似ている部分もある。
だけど、それぞれ違っている部分もちゃんとあって、眺めている内に、これら2つの水槽が違うものだと確信できる。
まず、エノスイのものよりも容量が小さいせいか(半分の500tしかない)、明るく感じる。
エノスイの水槽が暗いワケではないんだろうけど、こちらの方がより明るく、水槽内がクリアに見える。
また、魚のひしめき加減もあれほどではないので、中の見えやすさ、とりわけ魚の見やすさはこちらの方が上回っており、その点は好印象だ。
だが、その暗さは、海の深さや青さの演出に大きく貢献している部分でもあり、明るくクリアな京都水族館の水槽では、それが感じにくいところがあるかも知れない。

新しい水槽だけに、観覧ポイントも多く設けられており、気に入った場所でじっくり眺める、というのがピッタリな楽しみ方だと思う。ただし、今はまだ混雑しているから、そんな楽しみ方はできないけれど。
個人的に気に入ったのは、2Fのサイド部分からの眺め。
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正面からでは見えにくい部分がよく見えるので、水槽の全体像が分かりやすく、奥の方で隠れている魚や、上の方の見えにくい位置を泳いでいる魚を見るには最適な観覧ポイントなのだ。

中身に関しては、本家? が相模湾にこだわった相模湾大水槽としているのに対し、こちらは単に“大水槽”。明確なテーマ性はないようで、日本の海の多様性を表現とある。だから、身近な海にいる魚と、南国の魚が一緒に泳いでいる宮島水族館の大水槽と同じスタイル。いろいろ入っているけれど、先にも書いたように、エース級の魚はおらず、特別珍しいものもいない。
すみだ水族館が開業するまでのTV番組によれば、この水槽の魚たちは、長崎の五島で集められたものが中心のようだ。

南国の魚と、温帯の魚が同じ水槽で泳いでいる光景というのに、どうしても違和感を憶えてしまう。
オレの中で、ステレオタイプな魚の組み合わせがあるようで、この水槽で見られるような、マダイやブリと一緒に、メガネモチノウオやヒョウモンオトメエイが泳いでいる光景というのがどうも好きになれない。
ただし、これはオレの好みの問題なので、水槽の良し悪しや、見た目の綺麗さとは何の関係もない話なんだけど。
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大水槽の話は水族館レポートや気になる魚編と同じく、このブログの定番メニュー? だが、そういう意味では話がしづらい大水槽と言えるかも知れない。
とは言え、綺麗な水槽であることは間違いない。
水槽の正面部分には、1Fにも2Fにもベンチが設置されており、そこに座ってゆったり水槽を眺めることもできるから、混雑が収まる頃には、文字通りの癒しの空間として、今とは違った人気を集めるようになると思う。
次に行く時には、大きくなっている魚がいたりするだろうから、オレが見たのとはまた違った水景を楽しませてくれそうだ。

すみだ水族館の東京大水槽 [水槽]

すみだ水族館のメインの水槽であり、魚類展示の中心的な役割を担っているのが東京大水槽だ。
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容量は300tと驚くほどの大きさではないものの、2フロアをぶち抜く背の高い水槽なので、その前に立って見上げると、数字で聞く容量よりも大きく感じる。

それにしても、東京大水槽である。東京に綺麗な海なんかないだろう、そう思う人もきっといると思う。
確かに、東京で暮らす人が、普段目にする海は確かに大して綺麗なものではないけれど、東京湾から出た先に広がる海も、実は東京の海。すみだ水族館の東京大水槽は、東京港から遠く1000㎞も離れた小笠原をテーマにした、小笠原大水槽ということなのだ。

水槽の前に立つと、中の岩が迫り来るようで、ちょっと圧迫感があるように思った。
でも、その岩は、磯で見るようなゴツゴツした感じが少なく、何だかツルッとしているようで、質量ほどの迫力がない…
でも、それも狙った上でのもの。実はこの岩は、小笠原の海中にあるものをそのまま再現したものらしい。
何でも、本物の岩を実際に型取りし、それを基に作ったというこだわりよう。もはや擬岩ではなく、レプリカといったできばえなのだそうだ。
そう言われてみると、ちゃんと石灰岩に見える。小笠原なんて行ったことないから、その水中世界をイメージするのは難しいけれど、海の中に広がっているのは、こんな光景らしい。
水槽横に設置されたモニターでは、そんな小笠原の水中映像と、大水槽を泳ぐ魚たちを採集する時の映像がエンドレスで流されているのだけど、そこに映し出された水中世界は、確かに水槽にあるものとよく似ている。

小笠原の海の再現へのこだわりは、もちろん岩だけではない。
ボニンブルーと呼ばれる海の色を再現するのに、照明にもこだわったという。
特徴的な岩、そして独特な青さ。実際に現場に行き、それを見てきた人間がこだわって再現した水景である。きっと、現地の海の中はこんな感じなのだろう。
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同じ東京とは言え、交通手段が船しかなく、そこに行くには25時間半もの時間を要する小笠原は、世界のどこよりも遠い場所と言われている。
そのため、そこに行く機会はおろか、伝わってくる情報等も、例えば沖縄などと比べれば限定的だ。
いつかは行きたいと思っているけれど、一生行かないまま終わってしまうかも知れない。
そういう意味では、未知の海、場所を感じさせてくれる貴重な水槽と言えるだろう。

そこまでこだわって再現された水槽だからして、そのこだわりは、当然、中を泳ぐ魚たちへも及んでいて、そのほとんどは実際に小笠原で採集され、運ばれたものだという。
話を聞かせてくれたスタッフ氏が「あれだけ小笠原を謳っていて、中の魚は沖縄や海外のものです、というのでは格好付かないでしょう!!」と話してくれたが、その言葉通り、相模湾や伊豆あたりでも獲れる魚も、ちゃんと小笠原産。運ぶリスクやコストを考えれば、手に入れやすい所から入手しても同じような水槽になったと思うのだけど、それをよしとしなかったこだわりには拍手を送りたいと思う。

小笠原からやってきた魚たちは、見知ったものも少なくないのだけど、気のせいか、ちょっと違って見えるような…!?
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フエフキダイの仲間は数多く泳いでいて、それらはどれもうっすら青く綺麗。写真はシロダイ。
案内してくれたスタッフの小林くんによれば「マニアなら喜べる魚が結構入ってるよ」と教えてくれたが、どうやらそれもただの自慢ではないようだ。

例えば、小笠原を代表する魚であり、日本固有のチョウチョウウオであるユウゼン。
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水槽内の至る所に泳いでいて、ずいぶんいるなぁ、なんて思いつつ眺めていたのだけど、何と!! 40匹も入っているらしい。ものすごく奮発したなぁ(笑)

水槽の上の方で群れているミナミイスズミもこだわって連れてきたもののひとつ。
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小笠原の個体群には、一定の割合で黄変個体が見られるそうで、現地の海の中よろしくノーマル体色に黄変個体が混じった群れをどうしても再現したかったとのこと。
一定の割合でいると言っても、少ないことは間違いないようで、これも大変な苦労を伴いつつ手に入れた魚なのだそうだ。それが大水槽には4匹もいる。
水槽の下の方にはあまり来てくれないが、黄色い体色は、大水槽の中でも目立つので、すぐにその姿が見つけられるはずだ。

そして、TVでも主役になっていたシロワニ。
これも小笠原ならではの魚として、同時に、大水槽の主役として迎え入れられたものだが、残念ながらオープン直前にバックヤードに下げられてしまったが、復調し次第、再び展示が再開されるとのこと。
シロワニの話もいろいろ聞いてきたので、展示が再開された時点で、その話もまた。

中を泳ぐ魚は幼魚や若魚も多く、それらが成長していけば、また違って見えてきたりもするはず。
そんなところも含め、この先も楽しませてくれそうな水槽であることは間違いなさそうだ。

うみたまごの大回遊水槽 [水槽]

うみたまごの館内展示の中心となっているのが、1850tの容量を誇る大回遊水槽だ。
魚たちがエンドレスに泳ぎ続けられる巨大な円形の水槽なのだけど、うみたまごはその回遊水槽のパイオニア。旧大分マリンパレス水族館では、50年近く前にそれを完成させていたらしい。容量は現在の水槽の1/8ほどだったようだが、当時は画期的な水槽として注目を集めたのだとか。

そんな歴史を持つうみたまごだから、メインの大水槽が回遊水槽になるのはある意味、当たり前と言っていいのだろう。
それだけに、大変凝った作りになっていて、ひとつの巨大水槽なのに、あちこちに様々な形のアクリルパネルが取り付けられていて、そしてそれが順路の中に、違った形で何度も登場するので、いくつもの違った水槽のように眺めることができる。
順路の最初に吹き抜けのフロアから見える1枚の大きなアクリルパネルで大水槽の存在をアピール。そのまま淡水魚や小さな水槽を見ながら順路を進むと、導線はマーメイドホールという広いフロアに。そこには大水槽のアクリルパネルの中でも、最大のパネルが取り付けられている。
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アクリルパネルはL字型で一部がフロアと面になっていて、自分の目線の下を魚たちが泳いでいく。
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うみたまホールに通じるトンネルから見上げると、マーメイドホールのアクリルの構造が分かる。

アクリルの床の上を歩くことはできないんだけど、そこから水底までは結構な深さがあるので、そこから覗き込むだけでも深さを実感できる。実際、周りにいた観客は、下を覗き込んで“怖い~”なんて言ってる人もいたし。
正面にはこれまた立派な擬岩で作られた山があって、その周りを大きなサメやエイなど様々な魚が行き交うのが見える。
実際、水深は8mもあって、2フロアを突き抜くようにそびえ立っている。その深さを活かして? 海の深さが演出されていて、照明は暗め。そのため、より海の青さを強く感じさせるものになっている。
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マーメイドホールから順路を進むと、階下へと降り、小さなトンネルを通って“うみたまホール”という真っ白なフロアへと進む。
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その名前の通り、卵の殻の内側みたいな半球形の部屋で、その壁の一部が巨大なTVみたいな水槽になっていて、魚たちが通過していく。
もちろん、その水槽も回遊水槽の一部なんだけど、そこだけは擬岩などが一切見えないようになっていて、青い壁の中を魚が泳いでいるように見える。
フロアにはクッションが置いてあって、そこに座ってくつろげるようになっているんだけど、子供が走り回って遊んでいたり、さもなければカップルのための空間になっていたりするから、魚を眺めて楽しみたい人には不向きかも!?
この半球形の部屋は、水槽内の擬岩の山の内側。つまり、こんなに大きな部屋が作れてしまうほど巨大な山が水槽内にあるということなのだ。ある意味、水槽や、擬岩の山の大きさを実感できる部屋と言えるかも知れない。

水槽の中で暮らしているのは、豊後水道の魚たち。比較的暖かい海らしく、温帯域の魚だけでなく、暖かい海域に暮らす魚たちの姿も多い。そういう意味でも眺めていて楽しい水槽なのだけど、個人的にとても残念だったのが、シノノメサカタザメがいなくなっていたこと。日本の水族館でオレがまだ見ていない最後の個体だったはずなのだけど、それがいなくなってしまったことで、図らずもシノノメサカタザメの全展示個体制覇が叶ってしまうことになった。
エイと言えば、中を泳ぐホシエイが超巨大で、志摩マリンランドにいるものに匹敵しそうな巨大さ。しかもそんなのが2匹もいて、文字通り、水槽内で幅をきかせていた。
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水槽の作りが凝っているせいか、はたまた擬岩の山のせいか、ドタブカを中心に擦れタコができている個体が多く、ハタやアカメなどもスレ? なのか、体表が傷んだ個体が多く見られたのが気になった。最近搬入されたものなのだろうか?
でも、魚種は多いし、見る位置によって見られる魚が異なっていたりするのも実際の海のようで面白い。
先にも書いたように、見る場所によって違った水槽のように見えるのだけど、それぞれの場所で見られる魚も少しずつ違っていたりするから、本当に違う水槽を見ているような気分になれる。
濃度、密度においても、うみたまごでは随一の水槽と言えるし、水中感も強く味わえる。
何よりそのものの構造が面白いし、その水族館を象徴するに相応しい水槽だった。