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小笠原の天然? 水族館 [サメ]

自然豊かで、透明度が高く、サンゴに色鮮やかな魚が沢山いて…… 
そんな海のことを、TVや旅行ガイドなどでは“天然の水族館”なんて紹介しているのを見掛ける。
ステレオタイプと言うのか、もうちょっといい言い方ないの? と思っていたのだけど、小笠原には“天然の水族館”と呼びたくなるような場所があった。

そこは大村の街からもほど近い桟橋で、水産センターの裏手あたりにある“とびうお桟橋”。
イルカウォッチングやダイビングなどの船や、漁船などが係留されている小さな港。
周辺の景色や、水が綺麗なことを除けば、一見、どこにでもありそうな港だ。
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小笠原に行く前、いろいろ調べていた中で、とびうお桟橋でシロワニが見られることがあるというのを見掛けた。
それを知って、そこに行くことが水産センターに次ぐ重要な? 目的となったものの、相手は自然の魚である。運が良ければ見られるのかも? くらいのつもりで期待はしてなかった。

いざその場に行ってみると、海を覗き込んでる人たちが何名か。
オレも海を覗き込んでみると……

いた!!
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まさかこんな場所に、まるで飼われた魚みたいに、ワイルドのシロワニがいるとは思わなかったので、本当に驚いた。
ここまであっさり見られるとは思わなかったので、サメの姿を見つけてから慌ててカメラの準備をしたくらいだ。

シロワニの他にも、ロクセンスズメダイやテンジクイサキ(ミナミイスズミ?)、ボラが集まっていた。
そんなところに、海面を眺めていた観光客がご飯粒とかパンを投げ始めた。

世界遺産の島で、野生の魚に餌付けなんかするなよ!! と、苦々しく思ったのだけど、どうやら、宿泊施設などで餌やりができると案内? しているらしい。
9時(21時)が近くなってきた頃、お客を引き連れて地元のガイド? 宿の人? が入れ代わり立ち代わりやってきては解説を始め、そういう人もご飯粒やパンを投げ入れる。
思っていた以上に“観光地”となっているようだ。

次々にパンやお菓子、ご飯粒などが撒かれるため、魚の数は増えていく。
しばらくすると、マダラエイが何匹か現れ、ネムリブカも登場。
餌付けされた小魚が多く集まることで、サメやエイもそれを狙って集まってくるのだろう、そう思った。
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でも、真相は違った。

魚たちはサメの口元も平気で横切るし、ネムリブカもシロワニの口元をまるで気にしない。

その理由は、サメやエイたちの餌も用意されていたから。
何と、バケツにいっぱいの魚のアラを持ってきている人がいて、それが撒かれ始めた。
するとサメやエイたちは盛んに索餌行動を見せ始め、豪快なフィーディングタイムが始まってしまった。
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魚のアラを持ってきた人も、その様子を見ていた人に解説を行っていたから、観光に関わる仕事をしている人なのかも知れない。
アラが与えられるのは、それがある時だけで、毎日ではないとのこと。
オレが行ったのは、ちょうどその給餌日? だったようで、魚の集まりがやけによかったのもそのせいらしかった。
翌日にもシロワニを探しに行ってみたが、魚の数はずっと少なく、シロワニやマダラエイの姿は見掛けたものの、オグロオトメエイやネムリブカは現れなかった。

その場に比較的長い時間いたので、次々にやってくるガイド? たちの解説が聞こえてくる。
ただ、その内容は、間違いとまでは言えないものの、正確でもないことが多く、惜しい!!
あれがもし有料なのだとしたら、オレには不満に思う内容だが、説明を聞いてる人たちは“ふーん”みたいな感じだったので、それでもいい… んだろうなぁ。
いろいろ聞こえてきた中では、アラを撒いてた人の解説だけが参考になった。
餌を与えているだけあってか、個体数の把握、識別などもできていそうな感じで。

サメやエイを始め、魚が多く集まるのは夜。
しかし、海に向かってオレンジ色の街灯が灯り、水中もしっかり見える。
そういう意味でも、信じられないくらいに観察しやすく、水族館みたいに感じる部分でもある。しかも、水に入ることもなく見学できるし。
でも、そこにいる魚はすべてワイルド。
小笠原、スゲェ!! そうとしか言いようがないよね、まったく。

シロワニは3~4匹いるようで、水温が下がる時期になると集まってくるらしく、夏場はこの場所では滅多に見られないとのこと。
見られるのは夜がメインだが、昼間もその周辺にいるようで、見える位置を泳いでくれることは少なかったが、それでも時々、その姿を見せてくれてた。

とびうお桟橋には2晩、昼間も3回ほど覗きに行ったが、見られた魚は、

シロワニ、ネムリブカ、マダラエイ、オグロオトメエイ
ネズミフグ、テンジクイサキ(ミナミイスズミ?)、ロクセンスズメダイ、アカヒメジ、ボラ、ダツ(種類不明)
リュウキュウヤライイシモチ、スミツキアトヒキテンジクダイと思しき群れ
昼間にはトゲチョウチョウウオ、セグロチョウチョウウオなども見られた。
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シロワニは個人的に、小笠原を象徴する魚のひとつ。
水産センターでは飼われていないが、それが見られたのは本当によかった。
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凄いぜ!! 沖縄美ら海水族館・サメ編 [サメ]

沖縄の梅雨が明けた……

という訳で今年も行ってきました沖縄美ら海水族館。
まるで帰省みたいに、何がなくとも行くのが恒例化している。
今回はいろいろと目的もあったのだけど、行ってみると、目的以外にもとんでもないラッキーに遭遇できた。

沖縄に着いた日、何気なく美ら海水族館のHPにアクセスしてみると「ツマジロの展示開始」との見出しが目に入った。
ええ、驚きましたよ。
でも、いつもと違うのは、その時のオレは沖縄にいて、数時間後には確実に見られること。
当選した宝くじを拾ったような、予期せぬ強烈ラッキー。こんなこともあるんだなぁ……
ツマジロはその名の通り、ヒレ先が白いメジロザメで、日本の水族館では展示されていない種類だった。
シンガポールの水族館にいることは分かっていたから、いつか、とは思っていたけれど、図らずもそれを目的にシンガポールに行く必要はなくなった。

目的のツマジロに会うべく、急ぎ、サメ水槽へ。
でも、ヒレ先が白いサメは見当たらない。その水槽で見たことがなかったサメの姿が何匹かいたので、もしかしたらこれがツマジロなの? とも思ったり。
何しろ、生きた姿を見たことがないサメだから、違うサメを見ていても、それがツマジロではない!! という確信が持てなかったのだ。
何となくモヤモヤしたまま、大水槽の前を通りがかった時、グレーの小さなサメが泳いでいるのを見つけた。
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もしや!! と近寄ってみると、その小さなサメこそがツマジロだった。
名前の通り、ちゃんとヒレ先は白く、他のメジロザメ類とは明確に見分けられることが分かった。
2匹いるツマジロはいずれも1m未満の大きさで、あの大水槽ではあまりに可愛いサイズ。
でも、それなりに大きくなる種類だから、成長するとまた違った印象になるのだろう。
簡単に見られない種類だから、この先の成長に合わせて、それまで知らなかったいろいろなことを教えてくれそうだ。

今回の美ら海水族館では、サメ関連での話題はツマジロだけではなかった。
サメ水槽には、新たにクロトガリザメとドタブカ、アカシュモクザメが仲間入りしていた。
アカシュモクザメは以前、大水槽を泳いでいたものだが、クロトガリザメとドタブカは新顔。個人的には、ドタブカを美ら海水族館で見たのは今回が初めて。

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クロトガリザメ
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ドタブカ

言葉にするとたったこれだけの3種のサメだが、その展示まではかなり苦労の連続だったそうだ。
というのも、クロトガリザメは沖合に暮らすサメだからか、輸送に極端に弱く、運ぶと途端に弱ってしまい、そのまま…… ということが多いらしい。
採集は難しくないのに、水族館でほとんど見掛けない理由は、運べないに近いほどの輸送困難種であることが理由なようだ。
つまり、今回の個体は、そのきわめて困難な輸送に耐えた価値ある1匹。そう聞くとありがたみが増すような気がしてくる(笑)

また、これらのサメが搬入された水槽には、そこの主でもあったオオメジロザメがいたはずだが、その姿が見えなくなっていた。
新入りのサメを襲う可能性が高いため、移動したとのこと。
しかし、相手は3m級の超危険ザメである。おとなしく移動してくれる訳ではなく、その移動には危険も伴う。加えて、飼育記録更新中の“美ら海水族館の顔”でもある。
つまり、水族館にとってきわめて大切な個体だから、その移動に万が一は許されない。
それらの作業が無事に行われたからこその新顔展示であり、一連の作業を見ていた訳ではないけれど、凄く大変だっただろうことだけは想像できる。やっぱり、ありがたみ、という言葉が相応しい新展示なのだ。

ツマジロも含め、メジロザメ類はどれもこれも、同じような色、形をしたものばかり。
それがどんなに珍しいものだとしても、サメに特別な関心のない人には、“ただのサメ”でしかなくて、見た目から得られる満足度は残念ながら、そう大きなものではない。
また、それが集客に結びつくかというと、正直、難しいところもあると思う。
でも、それでも、さまざまな苦労を乗り越えて、こういう“分かりにくい凄さ”に挑戦してくれる水族館って、個人的にはホント、大好き!! オレみたいな者からすれば、ただただ有り難い限りだ。

それはともかく……
個人的に興味深く思ったのはアカシュモクザメ。
別に珍しい種類ではないし、同じ個体を大水槽で、もっと小さい頃から見ているけれど、気になったのはその泳ぎ方。
体を斜めに傾けて泳いでいたのだ。
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シュモクザメの体型からすると、流体力学的に理に適った泳ぎ方なのだそうだ。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150204/434322/072500013/?n_cid=nbpnng_fbed
この記事に書かれていたのはヒラシュモクザメだったが、アカシュモクザメもやるんだ!! 泳いでいる姿を見た時、上記の記事のことを思い出したのだけど、考えてみれば、ほぼ同じ体型をしているのだから、アカシュモクザメが傾いて泳ぐのも不思議ではないのだろうけど……
意識したことがなかったせいか、斜め泳ぎを見たのは初めて。今後は、余所の水族館でもしっかり意識して観察してみようと思う。

これら新入りのサメたちが泳ぐ水槽では、3月末にイタチザメが出産した。
子を産んだのは、妊娠した状態で搬入されたメス個体。
生まれた仔を見るのは、今回の目的のひとつだったのだけど、仔魚を見ることができる黒潮探検(大水槽上観覧通路)が閉鎖されており、オレが行った7月頭の時点ではまだ開放されていなかったので、残念ながら水槽生まれの仔魚を見ることはできなかった。
しかし、それを生んだ母親個体は今回初めて見ることができた。
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大型のイタチザメ、それもメス個体はこれまで何匹か見ているけれど、この個体は“分厚く”“太い”。かなりの迫力体型。
産後も食欲が落ちることなく餌を食べ、すぐに体型も元に戻ったのだそうだ。
もちろん、餌の与え方なんかにものすごい工夫がされているからなのだけど、オレが行った日も、餌を食べる姿を見せてくれた。

現在は大型のオスがいないので、今後の繁殖は現実的ではないけれど、そういう夢をリアルに感じさせてくれる個体であることは間違いない。

という訳で、今回の美ら海水族館、ほとんど何も見ないで、サメとイルカに終始してしまった。

イルカ?

はい、次回はイルカ編に続きます!!

ホオジロザメ降臨@沖縄美ら海水族館 [サメ]

奇跡が起きた。
2016年が明けて5日。沖縄美ら海水族館にとんでもないものが搬入され、展示された。
ホオジロザメである!!
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大変残念ながら、個体の死亡により、既に展示は終了してしまったけれど、展示されていた4日間は、TVや新聞などでも報道されるほどの高い注目を集めた。
オレの肌感覚だけど、その数日はサメ好き、水族館好きの色々な感情が渦巻いた、ちょっと異様なほどの騒ぎだったような気がしている。

とてつもない幸運に恵まれ、オレは見ることができた。
ガキの頃からの“夢”が叶った。
水族館へやって来てくれたサメ、そしてそれを展示してくれた水族館、そしてその関係スタッフ氏には深く感謝したい。
しかしながら、誰よりもガッカリしてるだろう関係スタッフ氏たちや、間に合わず見られなかった人たちの気持ちを思うと、喜んでばかりもいられないなぁ、みたいな気分でもある。

水族館へと駆けつけ、その姿を目の当たりにした時は、ひたすら信じられない気分だった。
あのホオジロが目の前を泳いでいるのだ。実物を目にして、それを見られた感動や喜びが沸き上がってくるまで、しばらく時間が掛かったくらいだ。
どうやら、話を聞いた水族館のスタッフ氏も、同じような気持ちだったらしい。

オレにとって、ホオジロザメは小さい頃からの憧れだったから、本やTV、最近では様々な動画や映像など、それこそ人一倍そういうものに接してきたと思う。
しかし、やはり実際に目の前で生きて泳ぐホオジロザメは、そうして培われたオレの中でのイメージと同じではなかった。
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まず、極端なほど三日月型をした尾ビレや、同じ水槽を泳ぐオオメジロやイタチザメとも大きく異なるミサイルみたいな体つき、著しく隆起した尾柄キール等々、知っていたつもりだったそれらが、いちいち“こんな風になってたんだ!!”と驚きと感動を与えてくれる。
やはり、生きた姿を見せる水族館(動物園)は必要なんだ!! と強く思った。
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イタチやオオメジロとは違い、常に半開きの口も、高速遊泳魚ならではだ。
3.5mのオス個体で、長く伸長したクラスパーから、成熟に達したものと推測されている。
メスほど大きくならないオスとは言え、たった3.5mで成熟するのか!! というのも新鮮な驚きだった。
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しかし、圧倒的な遊泳力を可能とする体は、水槽での飼育を難しいものにする。
先にも書いたように、4日でもそれが生きて展示されたという時点で“奇跡”なのだ。

まず、泳ぎ続けなくては呼吸できないものを、泳げない状態で水族館に運ぶこと自体が難しい。サメが漁獲された読谷から、水族館がある本部まではどんなに急いでも1時間以上掛かる。その間、呼吸を止めずに輸送できる方法があったこと。
そして、3.5mもある巨体である。それを網から船へ、船からトラックへ、トラックから水槽へと、数度の積み替え作業も必要なのだ。もちろん、サメはおとなしくはしてくれない。暴れれば暴れるほど、生存率は下がるから、できるだけダメージを与えないよう、そうした作業が完了したこと。
まず、生きたまま水族館まで到着できた時点で、奇跡だったのだ。

しかし、水槽へと搬入されて以降も、と言うかむしろ、本当に大変なのはそこからだったらしい。
水槽の壁に触れると、泳げなくなり、沈んでしまうのだそうだ。
これは外洋性の生物によく聞かれる話で、例えばスジイルカなどもプールに入れると泳げなくなると聞いたことがある。
もちろん、沈む=窒息死だから、何とか引き揚げて泳がせなければならない。でも、そこは大型のオオメジロやイタチザメが泳ぐ「危険ザメの水槽」である。
ダイバーが入って引き揚げることはできない。
そこで、網や棒で何とか引き揚げ、自発的な遊泳を引き出し、さらに壁に近付かないように誘導するのを続けた結果、何とか泳げるようになり、水槽をグルグルと旋回遊泳するようになった。文字にするとこれだけだが、やはり無理なんじゃないか… と現場も弱気になりかけるほどの必死な作業だったようだ。
1度は泳げなくなったサメが、再び泳ぎだしたこと。それもまた奇跡である。

動画 https://youtu.be/1FBhsaRENZ4

さらに、新入りのホオジロよりも大きなイタチザメとぶつかることから、イタチザメを水槽から取り出したり、落ち着かせるように水槽を暗くしたりと、とにかくできうる限りの対策が取られた。
オレが行った7日には、遊泳も安定し、素人目には“もう大丈夫なのでは!?”と安堵感もあったのだけど、飼育スタッフ氏に言わせれば「油断はできない」状態だそうで、搬入後、24時間体勢で観察が続けられていたそうだ。
午後3時半、危険ザメ水槽の餌の時間の時のこと。同じコースで遊泳を続けていたホオジロザメに、それまでとは違った動きが見られた。
餌に対する反応なのかと、心躍った。その時は何も食べなかったけれど、あと数日すれば食べるようになるんじゃないか… と、長期飼育への期待感が高まった。
しかし、その後も観察を続けていると、何故かターンする回数が増えた。
ホオジロザメは高速遊泳性に優れる反面、細かい動きが極端に不得意で、壁の直前でくるりと身を翻すことができない。
壁に激しく体をこすりつけるようにしながら、バタバタ暴れるようにして無理矢理に体の向きを変える。
壁に体を擦り続けるのは、長い目で見ればダメージが蓄積されることにもなる。
それをオレの間近で眺めていた飼育スタッフ氏は「お願いだから、おとなしく泳いでくれ」と懇願するように呟いていた。

そして、その翌日……
もちろん、それだけが理由ではないのだろうけれど、残念ながら長期飼育には至らなかった。
でも、そもそも、生きたホオジロザメが泳ぐ姿を、水族館で見られるなんてこと自体が奇跡なのだし、その奇跡も、数々の奇跡が積み重なって叶ったこと。
もう、とんでもない奇跡なのである!!
また、その奇跡の舞台が、大きなサメの扱いに長けたスタッフがいて、それを収容できる水槽がある美ら海水族館だったこともひとつの奇跡だったのかも知れない。
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いずれにしても、こんな幸運に巡り会えたことは感謝以外の何物でもないのだけれど、惜しむらくは、この個体が生きてる間に、この話ができなかったこと。
でも、とりあえず今年は、宝くじなんかは絶対に当たらないだろうな。

イタチザメを獲ってきた(気分・笑) [サメ]

もう3ヶ月くらい前の話になるだろうか。個人的にはとても衝撃的なニュースが伝えられたのは。
沖縄にUSJの計画があることは知っていたけれど、それが美ら海水族館のある海洋博公園にできる、というヤツだ。
海洋博公園は水族館も含め、お気に入りの場所だが、そこにあんなものができてしまうのは、オレとしては耐え難いこと。
オレの好きな海洋博公園は今のままでいてくれるのは、あと数年。そう思うといてもたってもいられなくなって、沖縄行きの飛行機に乗ってしまった。
理由はどうあれ、沖縄に来てしまえば、行きたい所、見たいものは沢山ある。
せっかく来たのだから、ということで、前から行ってみたかった定置網体験に行ってきた。

沖縄の朝は遅い。まだ真っ暗の中、集合場所の漁港へ。
日の出(と言っても7時だけれど)と共に出港し、仕掛けられた網へと向かった。
定置網が絞られ、引き揚げられていくのに伴い、どんな魚が獲れるんだろう!? と、オレの期待も高まっていく。
そんな時だ。水面下を白く大きなものがフッと横切ったのが見えたのは。
一瞬のことだったので、気のせいかとも思ったのだが、しばらくすると、その白い影はまた現れた。何やら大きなものが、すごい速さで動いている。
サメ? イルカ? 水面を必死で見つめていると、その“何か”が水面付近で身を翻した。その瞬間、思わず声が出た。「サメだ!!」
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イタチザメだった。それもかなり大きな。

イタチザメは水族館で何度か見たことがあるけれど、弱々しい泳ぎの小さいものか、壁際をゆっくり泳ぐ美ら海水族館の個体だけ。
こんなに大きな個体を見たのも初めてなら、そのあまりの泳ぎの速さと、急旋回を繰り返す身のこなしに「こんな速く泳ぐんだ!!」とあらためて驚かされた。
また、船の上と水の中と、離れた場所にいるにも関わらず、アクリルを介さない大きなサメというのは、凄みというか、体の奥底から静かに恐怖感が沸き上がってくるような、何とも言えない感覚だった。

網が絞られ、漁獲された魚たちが姿を現す。魚によっては、早々に船へと引き揚げられ、手早く内臓や血抜きなどの処理が施されていく。
そんな様子を眺めていると、気になるのはやはりサメのこと。
「このサメ、どうするんですか?」近くにいた海人のオッチャンに聞いてみると、「ん!? 水族館に持っていくんだよ」と言う。
ここで言う水族館とは、もちろん美ら海水族館のことだ。
シートとクレーンを使い、海人総出で引き揚げられたイタチザメは、船倉の生け簀に収容された。
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その数時間後、夕方くらいに水族館へ行ってみると、「あっ!! さっきのサメ」
水槽を泳ぐイタチザメと再開した。
水族館に運ばれることは知っていたけれど、こんなに早くに会えるとは思っていなかったから驚いたのと同時に、まるで自分が捕まえてきたサメが展示されているみたいな、何とも言いようのない嬉しさを感じた。
もちろんオレは見ていただけで何もしていないのだけどね(笑)
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それにしても、水槽でアクリル越しに眺めてみると、まぁ、デカイこと!!
約3.7mのメスで、これだけ大きなものは、水族館ではもちろん、沖縄周辺でも珍しいのだとか。
海人のオッチャンは「こんなのまだ子供よ」なんて言うものだから、沖縄、スゲェ!! と驚いていたんだけど、沖縄本島周辺に大型のイタチザメはほとんどいないらしく、それに遭遇できたことはかなりのラッキーだったような。

この新入りイタチザメ、スゴイのは大きさだけじゃない。
水族館でもイタチザメは時々搬入されることがあるけれど、飼育が簡単ではない種類で、短命なことも多い。また、生きていても壁に体をこすりつけるように泳いでいることが多く、少なくとも水槽では海での生態を感じることはあまりない。
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しかし、この新入りイタチときたら、危険ザメの水槽の中でも体は一番大きいというのに、水槽内をスイスイと泳ぎ回る。壁に体を擦ったり、ぶつかったりすることもない。
オレのイタチ、凄いぞ!! あとは餌を食べるようになってくれさえすれば… なんて思ってたら、比較的すぐに餌も食べ始めたらしい。
残念ながら、オレは餌を食べるところを見ていないのだけど、今では普通によく食べているとか。壁に体を擦らず、餌もきちんと食べている… つまり、すぐに死んでしまうことはなさそう、ってことだ。

美ら海水族館といえばジンベエザメ、というのが一般的なイメージだけど、珍しさや希少性では、巨大イタチの方が上だ。
そもそも、イタチザメは幼魚が時々、水族館に搬入されることがあるくらいで、水族館では珍しい部類。しかも、長期飼育が難しく、生きた姿を見るのは意外と簡単ではないのだから、これだけ調子がよくて綺麗で、しかもこんなに大きいとなると、これを見るために沖縄に足を運んでもいいと思える価値がある!! とオレは思っている。
個人的にイタチザメは特別好きな種類ではないのだけど、水族館にやってきた経緯もあって、この個体は特別(笑)
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多くの人に見てみて欲しいし、それでその美しさに感動してみ欲しいと思う。

動画
https://www.youtube.com/watch?v=Pn1CRA-9y98

茨城のサメ騒動について [サメ]

サメは何億、何千万年変わらずに海に暮らし、そこで餌を獲り、繁殖をし、代を重ねてきている。
海にサメがいる。当たり前の話であり、まったく驚くに値しないこと。
それがどうだ。ここ数日、茨城の海水浴場にサメが現れたとTVのニュースを賑わせている。しかもその内容は、例によって、実にいい加減な、知らない人の不安を煽るだけのもの。たまたま点いたTVから垂れ流される、そんなニュース、否、与太話を見てしまった。
あまりにいい加減でちょっと腹立たしかったので、仕方がなく、このブログを書くことにした。

先にも書いたように、サメは海の住人。そして、我々人は陸上の住人である。
そもそも海は彼らの住処である。人が勝手に海水浴場なんて呼んでる場所だって例外ではなく、我々がそこに押し掛けているだけで、当のサメたちは、自分の住処で普段の生活をしているに過ぎない。
夏休みに海に入りたい? 海水浴場はひとつしかない訳ではないし、サメがいない別の場所に行けば済むこと。とにかく、公共の電波を使って、大騒ぎしなくちゃいけないような話ではまったくない。
TV好みなコメントをする学者(オレが見たのはサメの研究者ではないらしい)に、もっともらしく聞こえるような話をさせ、そんなことをしなくちゃいけないほどの大事件でもないのにヘリコプターを飛ばして空撮してみたり、まったくバカバカしくてうんざりする。

TVで報道されていた話をまとめると、メジロザメ科のサメで大きさは4m。16匹くらいいて、その大きさから察するに、危険なオオメジロザメの可能性もある、とのこと。
確かに、オオメジロザメには、4mもなくても海では絶対に会いたくない。
しかし、オオメジロザメである可能性はきわめて低く、その大きさも4mもないと個人的には考えている。
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オオメジロザメ@沖縄美ら海水族館

どうもTVが垂れ流している話は、オオメジロザメありき、みたいな感じがしてならない。
それが人を襲うこともある種類で、さらに河川にも侵入するという生態は、視聴者をより不安にさせる。つまり、TV的にはたまらなく“オイシイ”存在なのだろう。
4mのサメ? ホオジロザメじゃないの? 水族館の人はメジロザメって言ってる? 人食うメジロザメっていないの? オオメジロっていうのが人を食うらしい。それ茨城にいないの? えっ、いないの? だったら、いるかも知れない体のコメントしてもらって…… みたいな流れだったんじゃないかなぁ。

オオメジロザメを始めとするメジロザメ属のサメは暖かい海を好む南の海の住人だ。
ざっくり調べただけだが、茨城はおろか、相模湾でも捕獲されたという記録は見つからなかった。もちろん、TVが言うように、サメが現れた周辺海域の海水温が高く、オオメジロザメが好むくらいの水温になっているのは間違いないのだろうし、黒潮に乗ってやって来る可能性もなくはない。しかし、その周辺で捕獲例のないサメが16匹もまとまってやってくるだろうか?

しかし、オレが何よりもオオメジロでないと考える理由は、泳いでいる映像だ。
映っていたサメは細長く頭の先が尖っていた。
美ら海水族館の黒潮探検や、油壺マリンパークのバックヤードツアーに参加したことがある人なら見たことがある人もいると思うが、オオメジロの頭部先端は、角張った感じで、少なくともあんなに細長く尖った感じではない。
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少し分かりにくいがオオメジロザメを上から見たところ。

その違いはサメに詳しくない人でもすぐに分かるくらいに明確に違っている。
泳いでいる姿でメジロザメ類と同定されたように、そこでオオメジロザメでないことも恐らく分かっていたはずなのだ。
水族館の人などに話を聞いた際、そういう意見も出ただろうと思うが、まともに聞こえる意見は採用されないのだろう。話が大ごとにならないからね。

それから、4mという数字もちょっと大袈裟すぎる気がする。
オオメジロだって、手持ちの資料には最大350㎝と書かれているくらいで、少なくともメジロザメ属には4mにもなる種類なんてほとんどいない。また、そのくらいになる種類でもフルサイズ級。つまり、非現実的な大きさなのだ。
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ドタブカ@しまね海洋館 アクアス

TVが言うように本当に4mもあるのならば、メジロザメ属最大種のドタブカかな? と思ったのだが、先にも書いたように筆者はそんなに大きくないと考えている。そもそも、大きさに関する目見当というのはかなりいい加減なもの。6mと謳われたものを捕獲してみたら4mしかなかった、なんていう話もサメやワニではよくあること。
今回のサメも実際のところはせいぜい2m少々といったところではないだろうか。それでもメジロザメ類としてはかなりの大きさだが。

個人的には、あの周辺海域にも多く生息しているクロヘリメジロザメなんじゃないの? と思っている。
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クロヘリメジロザメ@アクアワールド大洗

明確な根拠がある訳ではないけれど、実際、太平洋沿岸域にも多く生息し、サメが現れた海岸付近にも、普通に生息している種類で、アクアワールド大洗や鴨川シーワールドでも展示されている、水族館でも比較的馴染み深い種類だ。
このサメも上から泳ぐ姿を見たことがあるが、TVで見た映像ともよく似ている。少なくともオオメジロよりはずっと。

でも、オオメジロザメでなかったとしても、安心していいことではない。
クロヘリメジロに人が食われたという明確な記録はざっくり探した程度では見つけられなかったから、そんな記録がいくらでも出てくるオオメジロに比べれば危険度はいくらか低いのかも知れない。でも、そこは大型の捕食者であるからして、潜在的な危険性は高い。ましてや、TVで映っていたような捕食行動中は、絶対に近付かないこと!!
興奮状態にあるサメは、どんな行動をするか予測できない。“最初のひとり”になりたくなければ、間違っても近くで泳ぐのは避けるべき。

ひとつ言えることは、サメがいると分かっている海岸に近付かなければ、絶対に襲われることはない。
幸い、クロヘリメジロもオオメジロザメも、水族館で安全に見ることができる。
どんなにサメが好きだという人でも、それとの遭遇は水族館を強くオススメしたいと思う。
タグ:水族館

ヨシキリザメの話 [サメ]

水族館でも高い人気を集める存在ながら、その展示が難しいのがサメだ。
うまく飼える種類もあるが、500種類以上ある中のほんのごく一部。
しかも、うまく飼えないのはラブカやミツクリザメなどの深海ザメだけではなく、浅い海に生息するよく知られている種類にも飼いにくい、飼えない種類が数多くいる。

例えば、イタチザメ。
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海では何でも食べてしまう強力な捕食者であり、超大型で数も多いため南西諸島やオーストラリアなどでは捕殺されたりしているほどなのに、それが水槽に入ると途端に脆弱なものとなり、1年生きればちょっとした記録になるくらいに、あっという間に死んでしまう。

仙台うみの杜水族館が挑戦を開始したヨシキリザメの飼育、展示はそんなイタチザメよりもさらに困難なもの。サメを飼ったことも扱ったこともないオレが言うのも何だけど、その難しさは深海ザメに匹敵するのでは、とさえ感じているくらいだ。
とても残念なことに、大水槽を泳いでいた2匹は、残念ながらオープンを前に死んでしまったようなのだけど、プレオープンの前、内覧会やプレスデーの時には確かに泳いでいたのだ。
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プレス向けの報道資料には、その展示開始を知らせるリリースが入っていたし、水槽横の魚名板のパネルにも、一番上に一番大きく表示されていたのがヨシキリザメだった。
それらは水族館の“本気”を感じさせた。偶然、いい状態で獲れたから展示してみよう、ではなく、展示するんだ!! という強い意志が見て取れたような気がしたのだ。
そのこだわりは、仙台うみの杜水族館が宮城県の水族館だから、なのだろうと思う。
ヨシキリザメは漁獲量が多く、練り製品やサプリメントの材料に多用されており、そのヒレは高級なフカヒレとなる。
三陸沖で多く獲れることもあり、水揚げは宮城の気仙沼で多い。つまり、宮城県に縁の深い水産物のひとつであり、三陸をテーマにした水槽の主役としては、まさにうってつけな存在と言えるのだ。

とは言え、そこはヨシキリザメである。
これまでの最長飼育記録は、葛西臨海水族園が1999年に達成した244日。
先にも書いたように、存在自体は珍しいものではなく、水族館へも時折搬入されることがあり、展示したことがある水族館は意外と多かったりする。
オレとしては、何としても見てみたい魚のひとつでもあったため、そんな話を聞きつける度に水族館に電話を入れるも、間に合ったことがなかった。
飼育についての可能性を聞いてみたこともあった。
しかし、帰ってくる答えは、水槽への適応性が悪い、壁を認識しない、等々、絶望的にすらなるようなものばかり。オレが飼育不能種だと考えているのも、そういう話を聞いてのこと。
唯一と言っていい、葛西での長期飼育例も「最初から広い水槽で飼い始めたのがよかったのでは」とのことだったが……
ちなみに、葛西ではマグロの大水槽で飼育を行っていた。

ただ、ミツクリザメなどの深海ザメとは違い、ある程度狙って獲れるなのだそうだ。
もちろん、仙台うみの杜水族館も再度の展示に向け、捕獲に向かっているという話も聞いたような……

今でこそ、20年以上の長期飼育に成功している美ら海水族館のジンベエザメだって、最初の1匹は10日しか生かせなかったところからスタートし、様々なトライアンドエラーを繰り返しながら、今に至っている。
仙台うみの杜水族館がヨシキリザメでやろうとしていることも、まさにそれ。
とても難しい挑戦なのだろうと思うのだけど、そこに挑戦しようと考えたこと自体、まずは評価されるべきだと思うし、応援したいと思う。
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いずれにしても、ヨシキリザメが生きて泳ぐ姿を見られるチャンスは、もっとも高い水族館であるのは間違いないだろう。
でも、しばらくは、長生きさせられない可能性が高い。見たいのなら、搬入のニュースが出たらすぐに駆けつける必要があるが、そこで見られるのはあの美しい姿なのである。
仙台に駆けつける理由としては、十分過ぎるだろう。

あとは仙台うみの杜水族館のスタッフ氏たちが、この困難なチャレンジを成功させて、いつ行っても見られる存在にしてくれることを願うばかりだ。
頑張って欲しい!!

やや速報 超激レア深海ザメ(カグラザメ)@アクアワールド大洗 [サメ]

先週金曜日(1/23)、アクアワールド大洗のtwitterに刺激的な一文が踊った。
「カグラザメを緊急展示しました」と。
奇しくも同日、あわしまマリンパークにラブカが搬入され、深海ザメのスターが揃う週末となった。残念ながら、ラブカの方は生きたままの展示は叶わなかったようだけど…

カグラザメは水族館で展示された実績はほとんどない超激レア種だ。
最近、青森の浅虫水族館に搬入され、限定公開がなされたようだが、それ以外ではオレが知る限り、沼津港深海水族館でかつて展示されたことがあるだけ。
そんなカグラザメが、近くはないけれど、それほど無理せずに行ける大洗にやってきたとなれば、これは行かなくちゃ!! となるところなのだけど、生憎、その週末は別の水族館に行く予定をしていたため、予定通り、そちらを優先した…

のだけど、週が明けて、SNSなどで見に行った人の話や写真を見聞きする度、やっぱり行きたくなってくる。
この機会を逃すと、もう2度と見られる機会はないかも知れない…
スクランブル!! というほど早くはないんだけど(汗)、時間を作って大洗まで行ってきた。

入館後、他の水槽には目もくれず、目的のカグラザメがいるはずの大陸棚水槽4へ。

いた!!
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どうやら生まれたての個体のようで、全長は1mくらい。体長は70㎝、といったところだろうか。
漁などで獲れるものは、いずれも大きなものが中心なようだから、こんな小さな個体というのも、相当珍しいのではないかと思う。
ミツクリザメやラブカのブームを引き起こす要因ともなったNHKの深海ザメの番組にも登場していたものも、5m級の超大型個体だった。
オレが知ってるカグラザメと言えば、まさにそれ。そのため、初めて見る実物は拍子抜けするほどあどけない感じで、とても“深海の主”というイメージは連想しにくい。
ただ、周りを泳ぐ同じくらいの大きさのツノザメ類と比べても、ずっと若い幼魚だというのに、体つきは意外なほどがっしりした感じで、少なくとも体格負けはしていない。
そんな部分は、大型種の幼魚であることを感じさせてくれる部分だ。
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水槽内では、壁に沿って片時も止まることなく泳ぎ続けていた。
その泳ぎは、例えばミツクリザメと比べると、遊泳速度も速く、力強い感じなのだけど、気になるのは水面近くを、やや立ち泳ぎのような体勢で泳ぐことが多かったこと。
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お陰で特徴の6枚ある鰓孔がよく見えたけれど…

生きたカグラザメを見るのは初めてなので、そういうものなのか、それがよくないことなのかは分からない。そもそも深海の生き物だから、絶好調という訳にはいかないのだろうけど、最高の状態、とも言えないんじゃないかなぁ、みたいな印象を受けた。
捕獲時にイカを吐き出したとのことで、水面付近でイカが給餌されていたけれど、くわえても飲み込まず、まだ餌は食べていないらしい。
とは言え、この先すぐに死んでしまいそうなほど状態が悪いようにも見えなかった。
このまま餌付いて、長期飼育、展示が成功するとよいのだけど。

大陸棚水槽4は、深海の水槽としては十分に明るく、写真も何とか撮れる、と思ってた。
しかし、照明は水底を中心に照らしていて、中層~水面付近は非常に暗い。
カグラザメが泳いでいるあたりは、まさに真っ暗。写真に収めるのには本当に苦労した。
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結局、その場に行って見たという証拠写真程度しか撮ることはできなかったけれど、ミツクリザメ、ラブカという、深海ザメのスーパースターに続く第三の存在と言うべき深海ザメの生きた姿をようやく見ることができたことは素直に嬉しいし、ありがたい限り。
冬になればあちこちで搬入のニュースが聞かれるようになったミツクリザメやラブカとは違い、生きて水族館に展示されることはほとんどないためか、知名度はまだまだそれほど高くはない。つまり、それらと比べると、じっくり観察がしやすいということでもある。

だからという訳ではないけれど、見に行ける人は見に行っておいた方がいいと思う。
先にも書いたけれど、生きたカグラザメが見られる機会なんて、これが最後かも知れないんだからね。
もちろん、できるだけ早く、というのもお忘れなく!!

今シーズンのミツクリザメはスゴイ!! [サメ]

今シーズンは早くもあわしまマリンパーク、葛西臨海水族園の2館でミツクリザメの生体展示が行われたことはご存じの通り。
残念ながら、どちらも既に展示が終了しているが、今シーズンのミツクリザメ展示は本当に凄かったと思う。こんなブログを書きたくなるほどにね。
とは言え、シーズンはまだ始まったばかり。もしかしたら、この先、再び生きた姿を見る機会が訪れるかも知れないし、さらに凄いニュースに驚けるかも知れない。
とにかくそんな期待をしたくなるほど、今シーズンのミツクリザメは凄かったのだ。

まず、あわしまマリンパーク。
2.5m超の個体と、約1.2mの2匹が搬入され、搬入の時点で大きい個体は既に死んでいたそうだが、小さい方は生体展示がなされ、6日間生存。
まず、その生存日数自体がかなり凄い数字と言っていいと思うのだけど、驚かされたのはその後。
11月24日、死んだ2匹で公開解剖が行われた。
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最近、深海ザメの公開解剖会が各地の水族館でよく行われている。
基本的に種類が違っていても、体の作り自体は大きく違わないこと、そしてそれ以上に水族館は生きたものを展示する(見に行く)ところである、という変な? オレのこだわりから、そうしたイベントに足を運ぶことはしていなかったのだけど、水族館のミツクリザメを追いかけ続けてきたオレとしては、行ったという人がSNSにあげていた画像を見た瞬間、今回ばかりは行かなかったことを後悔した。

生きたものは、今年も含め、これまで何匹か見てきているけれど、いずれも1m前後の小さなものばかり。いつしか大きくなるということを忘れてた。
本来、3mを超すサメなので、2.5mのものがいたって不思議ではないはずだけど、流石にそのサイズともなると、オレの知っているミツクリザメとは随分印象が異なるものらしい。
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これは見ておくべきだったなぁ…
という訳で、オレの驚きを共有してもらいたくて、この写真はこの場に行った麻魅さんに無理を言って提供していただきました。
どうもありがとうございました。

話は変わって、水族館でのミツクリザメの生存記録は、葛西臨海水族園が2007年に打ち立てた14日間が最長だった。
その時は一般公開もされておらず、水槽も加圧できる特殊なものを使ってのこと。
しかし、今年(11/1)に搬入された個体は、展示水槽で11月16日まで生存し、多くの人にその泳ぐ姿を見せてくれた。
16日の生存記録も凄いことなんだけど、それ以上に、その記録が誰もが見られる展示水槽で成し遂げられたものであることも凄い。
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体の傷が少なく、見た目にも非常に状態のいい個体だったけれど、力強い泳ぎや、障害物を避ける動き、そして最大の特徴でもある顎の動きさえも見せてくれたのだ。捕食時ではなく、あくびだったのは少々残念だったけれど、まさに度肝を抜かれるような衝撃に、鳥肌が立ったほどだ。オレがその様子を見たのは動画だったけれど、見てみたかったなぁ…
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この個体が展示されていた16日間の間、オレは3回葛西に行ったのだけど、同じ個体を3回も見られたのも初めてのことだ。
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行く度に、この模型に下げられた案内が嬉しかった。

給餌成功!? 長期飼育も可能になるかも!? という夢が現実になることはなかったが、これまでを大きく上回る長期間展示と、生存記録を更新したことは間違いのない事実。
今回の展示によって何かが得られ、それが未来の飼育成功のステップとなることを期待したい。

それにしても、今シーズンのミツクリザメは本当にいろいろ驚かされた。気分的には今の時点で満足できてしまいそうなくらいだ。
しかし、深海生物のシーズンはまだ始まったばかり。
先にも書いたように、会える可能性だってまだあるかも知れないのだ。
スタートの時点でこれだけ幸先がいいとなると、この先もいろいろ期待が高まるというもの。
次にやって来るかも知れない、“とんでもない驚き”にしっかり備えておきたいと思う。

※11/25頃、八景島シーパラダイスにもミツクリザメが搬入され、展示された模様。
何のアナウンスもなかったのでノーマークでしたが、HN未定さんのコメントで知りました。
どうもありがとうございました。

ミツクリザメ 2014-2015シーズン開幕 @葛西臨海水族園 [サメ]

10月も半ばを過ぎた頃になると、そろそろ深海生物の話題が聞こえ始める。
そうなってくると、気になるのはミツクリザメである。

今シーズン、その口火を切ったのはあわしまマリンパーク。
10月27日に2匹のミツクリザメが搬入されたという。
しかも、驚くのはその内の1匹が2.5mを超す大型個体。流石に捕獲された時点で事切れていたらしいのだけど、そんなに大きな個体は世界的にも大変珍しいもののはずだ。
それだけでも驚きなのだけど、同時に捕獲された標準的な? サイズ(約1.2m)の個体が11月3日まで生存、展示が続いたというのにも驚いた。
よほどいい状態で搬入されたんだろうなぁ、と思いつつ、和歌山遠征と日程が被ったこと、さほど遠くないようで、意外と近くないあわしまの立地にも阻まれ、今回はスクランブル… とはならなかった。
毎日、あわしまマリンパークが発信している様々な“生きてます”情報に心を揺り動かされていたのだけど、11月最初の週末、今度は葛西臨海水族園から搬入のニュースが聞こえてきた。
こいつはラッキー!! とばかりに、見に行ってきた。
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昨年の八景島のミツクリフィーバーを見ることができなかったので、オレにとっては約2年ぶりのミツクリザメだ。
ブログでは串本海中公園の話をしていたところだけれど、ちょっと速報的にその話をしたいと思う。

3連休の中日ということもあってか、葛西臨海水族園は思った通り、しっかり混んでた。
昨今の深海ブームの影響なのか、小さな子供から大人まで、水槽の前にやってくる人たちのほとんどがミツクリザメの名を口にする。TVの影響か、はたまた毎年のように生体が展示されてきた効果か、その知名度は大幅に高まっているようだ。
数年前は、生体がそこにいても、立ち止まる人はほとんどいなかったのに…

葛西臨海水族園で久しぶりに展示されることになった今年の個体だが、SNSの写真などで見る限り、非常に綺麗な(状態のいい)個体であることは分かっていたけれど、いざ実物を目の前にしてみると、とんでもなく綺麗で状態がいい。
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刺し網で捕獲された個体とのことなのに、体にはほぼキズもなく、何よりこれまで見てきた個体の中ではもっとも動きがいい。
その動きには弱々しさがなく、ちゃんと水平姿勢で泳ぎ続ける。止まったり、沈んだりすることもなく、また、水族館でよく見られる立ち泳ぎのような姿勢になることもなく、水槽内を回遊しているのだ。
おまけに、壁や擬岩、他の魚を避けるなど、生き物としての基本的な行動を見せてくれる。
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葛西臨海水族園では、これまで何度かミツクリザメの飼育、展示に挑戦し、14日というこれまでの最長生存記録を持っているけれど、そうした経験も生かされているのだろう。
とにかくとんでもなく状態がいいのだ。
もしかすると、これまでの生存記録の更新はおろか、長期飼育も実現してしまうかも!? 力強さすら感じさせる泳ぎを見ていると、そんな夢が実現することを本気で考えたくなってしまうくらいだ。

驚くほど状態のいいミツクリザメを目の前にしていながら、残念だったのはオレの撮影機材。メインで使っているレンズが壊れてしまい、修理に出したばかりだったのだ。
目の前を泳いでいくのを見送りながら、何とも言えない悔しい思いをすることに。
もう1度撮り直しに行きたいと思っているのだけれど、この個体なら、レンズが修理から戻った頃でも、まだ元気でいてくれるかも、みたいな希望も持てそうだ。
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とは言え、そこはやはりミツクリザメである。
見たい人はできるだけ早めに行くことを強くオススメしておきたい。

下田海中水族館のジンベエザメ [サメ]

8月1日より下田海中水族館でジンベエザメの展示が開始された。
とは言っても、ジンベエザメが展示できるような超大型の水槽が作られたとかではなく、定置網に入網した個体が搬入されたもの。
海を仕切った生け簀で、水温が下がる秋までの期間限定の展示。
あわしまマリンパークでも2012年にジンベエザメが展示されたことがあったけれど、その時と同じようなシチュエーションだ。

ウチのブログではジンベエザメの人気は非常に高く、見に来てくれる人の検索結果では常に上位にある。
そんなこともあって、ジンベエザメ情報は積極的に発信したかったりする。
今となっては、個人的には特に、珍しい存在とは言えないジンベエザメだが、偶然にもオレが見に行ける所にやって来てくれたワケだから、そこはやはり会いに行くべきだろう。
オレが見に行った時点では、放流時期はアナウンスされていなかったけれど、9月も末になり、気温も下がってきた。放流時期もそう遠くはないだろうと、重い腰を上げ、下田まで行ってきた。

2年前のあわしまの時は、天気もよく、さらに海は穏やか。その上透明度も高く、観察にはピッタリなコンディションだった。でも、そこは自然の海である。
ちょっと波立ったり、雲がかかったり、あるいは日の向きが変わるだけで、とんでもなく見えにくくなることはその時の経験で分かっていたので、今回も行く日の天気は非常に気にしていた。
幸い、晴れた。しかし…
オレが行った日は、天気こそ良かったものの、下田よりはるか南の海上では台風17号が発生していた。そのため、非常に強い風が吹きつけ、海は大きく波立っていた。つまり、海中はきわめて見にくい状態だった。
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ジンベエザメが飼われているのは、直径15mほどの円形の生け簀。
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泳いでいるのはジンベエザメとしては小ぶりな4.5mのオス。

小さいとは言え、4.5mもあるし、水面近くを泳いでくれていたので、その存在は何とか分かる。しかし、吹きつける風や波の影響で、甚兵衛柄までは見えない。
そうなりゃ、間近で見られるチャンスは給餌の時のみ!!
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下田での給餌は、アミを投げ与える人、柄杓でオキアミを与える人、解説する人の3名のスタッフ氏によって行われるが、先にも書いたように、当日は風が強過ぎた。給餌中のスタッフ氏も時々吹きつける突風に、生け簀のフレームにしがみつくシーンも何度か。そんな中だったので、解説は限定的なものとなってしまったほどだった。
東京からだと比較的近いようで、ものすごく遠い下田だけに、ちょっと残念だったけれど、天候の問題では仕方がないよね。

動画
https://www.youtube.com/watch?v=wbOLqHYwPO4

ジンベエザメの現在の給餌量は1日7.5㎏。内訳はオキアミを3.5㎏、アミを4㎏だそうで、それが1日3回に分けて与えられている。
ジンベエザメにくっついてコバンザメとブリモドキも一緒に生け簀へとやって来たようで、投げ入れたアミがジンベエザメから少し離れた位置に散ると、ジンベエザメの体の下から数匹のブリモドキが現れ、素早く食べていく。
一方、コバンザメの狙いは柄杓からこぼれ落ちるオキアミのようで、どうやらジンベエザメの顎下あたりで待ち構えているらしい。餌が落ちてくると、ジンベエザメの顔の前に泳ぎ出し、時には口の中にまで突入して大胆に餌を食べる様子が見られた。
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餌を食べてる様子を眺めていたら、ジンベエザメって凄い魚だなぁ、とあらためて思った。
最大の魚類なのに、狭い水槽や生け簀にも適応し、ちゃんと餌をもらえる場所を覚え、どこにもぶつからずに泳げるのだから大したものだ。

そこで気になってくるのは、こんな様子がいつまで見られるかということだと思うのだけど、水温が下がり出す10月の半ば頃になるだろう、とのこと。
つまり、下田で会えるのも、あともう2週間くらいのものだということ。

ジンベエザメ自体は、下田以外でも全国5カ所で見ることができるが、下田で見られるのはもしかすると最後のチャンスかも知れない!?
気になる人はお早めに!! それから、ジンベエザメを目的で出掛けるなら、天気のチェックだけはお忘れなく。

※10月14日追記
10月11日に死んだそうです。残念です。
http://shimoda-aquarium.com/2014/10/11/news-63/