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ホオジロザメ降臨@沖縄美ら海水族館 [サメ]

奇跡が起きた。
2016年が明けて5日。沖縄美ら海水族館にとんでもないものが搬入され、展示された。
ホオジロザメである!!
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大変残念ながら、個体の死亡により、既に展示は終了してしまったけれど、展示されていた4日間は、TVや新聞などでも報道されるほどの高い注目を集めた。
オレの肌感覚だけど、その数日はサメ好き、水族館好きの色々な感情が渦巻いた、ちょっと異様なほどの騒ぎだったような気がしている。

とてつもない幸運に恵まれ、オレは見ることができた。
ガキの頃からの“夢”が叶った。
水族館へやって来てくれたサメ、そしてそれを展示してくれた水族館、そしてその関係スタッフ氏には深く感謝したい。
しかしながら、誰よりもガッカリしてるだろう関係スタッフ氏たちや、間に合わず見られなかった人たちの気持ちを思うと、喜んでばかりもいられないなぁ、みたいな気分でもある。

水族館へと駆けつけ、その姿を目の当たりにした時は、ひたすら信じられない気分だった。
あのホオジロが目の前を泳いでいるのだ。実物を目にして、それを見られた感動や喜びが沸き上がってくるまで、しばらく時間が掛かったくらいだ。
どうやら、話を聞いた水族館のスタッフ氏も、同じような気持ちだったらしい。

オレにとって、ホオジロザメは小さい頃からの憧れだったから、本やTV、最近では様々な動画や映像など、それこそ人一倍そういうものに接してきたと思う。
しかし、やはり実際に目の前で生きて泳ぐホオジロザメは、そうして培われたオレの中でのイメージと同じではなかった。
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まず、極端なほど三日月型をした尾ビレや、同じ水槽を泳ぐオオメジロやイタチザメとも大きく異なるミサイルみたいな体つき、著しく隆起した尾柄キール等々、知っていたつもりだったそれらが、いちいち“こんな風になってたんだ!!”と驚きと感動を与えてくれる。
やはり、生きた姿を見せる水族館(動物園)は必要なんだ!! と強く思った。
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イタチやオオメジロとは違い、常に半開きの口も、高速遊泳魚ならではだ。
3.5mのオス個体で、長く伸長したクラスパーから、成熟に達したものと推測されている。
メスほど大きくならないオスとは言え、たった3.5mで成熟するのか!! というのも新鮮な驚きだった。
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しかし、圧倒的な遊泳力を可能とする体は、水槽での飼育を難しいものにする。
先にも書いたように、4日でもそれが生きて展示されたという時点で“奇跡”なのだ。

まず、泳ぎ続けなくては呼吸できないものを、泳げない状態で水族館に運ぶこと自体が難しい。サメが漁獲された読谷から、水族館がある本部まではどんなに急いでも1時間以上掛かる。その間、呼吸を止めずに輸送できる方法があったこと。
そして、3.5mもある巨体である。それを網から船へ、船からトラックへ、トラックから水槽へと、数度の積み替え作業も必要なのだ。もちろん、サメはおとなしくはしてくれない。暴れれば暴れるほど、生存率は下がるから、できるだけダメージを与えないよう、そうした作業が完了したこと。
まず、生きたまま水族館まで到着できた時点で、奇跡だったのだ。

しかし、水槽へと搬入されて以降も、と言うかむしろ、本当に大変なのはそこからだったらしい。
水槽の壁に触れると、泳げなくなり、沈んでしまうのだそうだ。
これは外洋性の生物によく聞かれる話で、例えばスジイルカなどもプールに入れると泳げなくなると聞いたことがある。
もちろん、沈む=窒息死だから、何とか引き揚げて泳がせなければならない。でも、そこは大型のオオメジロやイタチザメが泳ぐ「危険ザメの水槽」である。
ダイバーが入って引き揚げることはできない。
そこで、網や棒で何とか引き揚げ、自発的な遊泳を引き出し、さらに壁に近付かないように誘導するのを続けた結果、何とか泳げるようになり、水槽をグルグルと旋回遊泳するようになった。文字にするとこれだけだが、やはり無理なんじゃないか… と現場も弱気になりかけるほどの必死な作業だったようだ。
1度は泳げなくなったサメが、再び泳ぎだしたこと。それもまた奇跡である。

動画 https://youtu.be/1FBhsaRENZ4

さらに、新入りのホオジロよりも大きなイタチザメとぶつかることから、イタチザメを水槽から取り出したり、落ち着かせるように水槽を暗くしたりと、とにかくできうる限りの対策が取られた。
オレが行った7日には、遊泳も安定し、素人目には“もう大丈夫なのでは!?”と安堵感もあったのだけど、飼育スタッフ氏に言わせれば「油断はできない」状態だそうで、搬入後、24時間体勢で観察が続けられていたそうだ。
午後3時半、危険ザメ水槽の餌の時間の時のこと。同じコースで遊泳を続けていたホオジロザメに、それまでとは違った動きが見られた。
餌に対する反応なのかと、心躍った。その時は何も食べなかったけれど、あと数日すれば食べるようになるんじゃないか… と、長期飼育への期待感が高まった。
しかし、その後も観察を続けていると、何故かターンする回数が増えた。
ホオジロザメは高速遊泳性に優れる反面、細かい動きが極端に不得意で、壁の直前でくるりと身を翻すことができない。
壁に激しく体をこすりつけるようにしながら、バタバタ暴れるようにして無理矢理に体の向きを変える。
壁に体を擦り続けるのは、長い目で見ればダメージが蓄積されることにもなる。
それをオレの間近で眺めていた飼育スタッフ氏は「お願いだから、おとなしく泳いでくれ」と懇願するように呟いていた。

そして、その翌日……
もちろん、それだけが理由ではないのだろうけれど、残念ながら長期飼育には至らなかった。
でも、そもそも、生きたホオジロザメが泳ぐ姿を、水族館で見られるなんてこと自体が奇跡なのだし、その奇跡も、数々の奇跡が積み重なって叶ったこと。
もう、とんでもない奇跡なのである!!
また、その奇跡の舞台が、大きなサメの扱いに長けたスタッフがいて、それを収容できる水槽がある美ら海水族館だったこともひとつの奇跡だったのかも知れない。
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いずれにしても、こんな幸運に巡り会えたことは感謝以外の何物でもないのだけれど、惜しむらくは、この個体が生きてる間に、この話ができなかったこと。
でも、とりあえず今年は、宝くじなんかは絶対に当たらないだろうな。
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