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茨城のサメ騒動について [サメ]

サメは何億、何千万年変わらずに海に暮らし、そこで餌を獲り、繁殖をし、代を重ねてきている。
海にサメがいる。当たり前の話であり、まったく驚くに値しないこと。
それがどうだ。ここ数日、茨城の海水浴場にサメが現れたとTVのニュースを賑わせている。しかもその内容は、例によって、実にいい加減な、知らない人の不安を煽るだけのもの。たまたま点いたTVから垂れ流される、そんなニュース、否、与太話を見てしまった。
あまりにいい加減でちょっと腹立たしかったので、仕方がなく、このブログを書くことにした。

先にも書いたように、サメは海の住人。そして、我々人は陸上の住人である。
そもそも海は彼らの住処である。人が勝手に海水浴場なんて呼んでる場所だって例外ではなく、我々がそこに押し掛けているだけで、当のサメたちは、自分の住処で普段の生活をしているに過ぎない。
夏休みに海に入りたい? 海水浴場はひとつしかない訳ではないし、サメがいない別の場所に行けば済むこと。とにかく、公共の電波を使って、大騒ぎしなくちゃいけないような話ではまったくない。
TV好みなコメントをする学者(オレが見たのはサメの研究者ではないらしい)に、もっともらしく聞こえるような話をさせ、そんなことをしなくちゃいけないほどの大事件でもないのにヘリコプターを飛ばして空撮してみたり、まったくバカバカしくてうんざりする。

TVで報道されていた話をまとめると、メジロザメ科のサメで大きさは4m。16匹くらいいて、その大きさから察するに、危険なオオメジロザメの可能性もある、とのこと。
確かに、オオメジロザメには、4mもなくても海では絶対に会いたくない。
しかし、オオメジロザメである可能性はきわめて低く、その大きさも4mもないと個人的には考えている。
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オオメジロザメ@沖縄美ら海水族館

どうもTVが垂れ流している話は、オオメジロザメありき、みたいな感じがしてならない。
それが人を襲うこともある種類で、さらに河川にも侵入するという生態は、視聴者をより不安にさせる。つまり、TV的にはたまらなく“オイシイ”存在なのだろう。
4mのサメ? ホオジロザメじゃないの? 水族館の人はメジロザメって言ってる? 人食うメジロザメっていないの? オオメジロっていうのが人を食うらしい。それ茨城にいないの? えっ、いないの? だったら、いるかも知れない体のコメントしてもらって…… みたいな流れだったんじゃないかなぁ。

オオメジロザメを始めとするメジロザメ属のサメは暖かい海を好む南の海の住人だ。
ざっくり調べただけだが、茨城はおろか、相模湾でも捕獲されたという記録は見つからなかった。もちろん、TVが言うように、サメが現れた周辺海域の海水温が高く、オオメジロザメが好むくらいの水温になっているのは間違いないのだろうし、黒潮に乗ってやって来る可能性もなくはない。しかし、その周辺で捕獲例のないサメが16匹もまとまってやってくるだろうか?

しかし、オレが何よりもオオメジロでないと考える理由は、泳いでいる映像だ。
映っていたサメは細長く頭の先が尖っていた。
美ら海水族館の黒潮探検や、油壺マリンパークのバックヤードツアーに参加したことがある人なら見たことがある人もいると思うが、オオメジロの頭部先端は、角張った感じで、少なくともあんなに細長く尖った感じではない。
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少し分かりにくいがオオメジロザメを上から見たところ。

その違いはサメに詳しくない人でもすぐに分かるくらいに明確に違っている。
泳いでいる姿でメジロザメ類と同定されたように、そこでオオメジロザメでないことも恐らく分かっていたはずなのだ。
水族館の人などに話を聞いた際、そういう意見も出ただろうと思うが、まともに聞こえる意見は採用されないのだろう。話が大ごとにならないからね。

それから、4mという数字もちょっと大袈裟すぎる気がする。
オオメジロだって、手持ちの資料には最大350㎝と書かれているくらいで、少なくともメジロザメ属には4mにもなる種類なんてほとんどいない。また、そのくらいになる種類でもフルサイズ級。つまり、非現実的な大きさなのだ。
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ドタブカ@しまね海洋館 アクアス

TVが言うように本当に4mもあるのならば、メジロザメ属最大種のドタブカかな? と思ったのだが、先にも書いたように筆者はそんなに大きくないと考えている。そもそも、大きさに関する目見当というのはかなりいい加減なもの。6mと謳われたものを捕獲してみたら4mしかなかった、なんていう話もサメやワニではよくあること。
今回のサメも実際のところはせいぜい2m少々といったところではないだろうか。それでもメジロザメ類としてはかなりの大きさだが。

個人的には、あの周辺海域にも多く生息しているクロヘリメジロザメなんじゃないの? と思っている。
IMG_7080.jpg
クロヘリメジロザメ@アクアワールド大洗

明確な根拠がある訳ではないけれど、実際、太平洋沿岸域にも多く生息し、サメが現れた海岸付近にも、普通に生息している種類で、アクアワールド大洗や鴨川シーワールドでも展示されている、水族館でも比較的馴染み深い種類だ。
このサメも上から泳ぐ姿を見たことがあるが、TVで見た映像ともよく似ている。少なくともオオメジロよりはずっと。

でも、オオメジロザメでなかったとしても、安心していいことではない。
クロヘリメジロに人が食われたという明確な記録はざっくり探した程度では見つけられなかったから、そんな記録がいくらでも出てくるオオメジロに比べれば危険度はいくらか低いのかも知れない。でも、そこは大型の捕食者であるからして、潜在的な危険性は高い。ましてや、TVで映っていたような捕食行動中は、絶対に近付かないこと!!
興奮状態にあるサメは、どんな行動をするか予測できない。“最初のひとり”になりたくなければ、間違っても近くで泳ぐのは避けるべき。

ひとつ言えることは、サメがいると分かっている海岸に近付かなければ、絶対に襲われることはない。
幸い、クロヘリメジロもオオメジロザメも、水族館で安全に見ることができる。
どんなにサメが好きだという人でも、それとの遭遇は水族館を強くオススメしたいと思う。
タグ:水族館
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コメント 2

Haie

ミストラルさん、はじめまして こんばんは

Haieと申します。サメが好きで、いつも楽しく拝見させていただいてます。
TVのエエカゲンな報道にはあきれるばかりで、サメ好きとしていちいちツッコミを入れたくなる今日この頃です。
「茨城で4mのオオメジロザメ」なんて、んなアホな! 

メディアの皆さんにとって「サメ」なんてどれも同じに見えるのでしょうね。何ザメか、特定することに関心があるのは学者か好事家ぐらいなのでしょう。

それにしても「サメが海にいるのは当たり前」同感です。
by Haie (2015-08-13 22:42) 

ミストラル

>Haieさん

ようこそ。
コメントをありがとうございます。

そう、そうなんです!! 「んな、アホな!!」
連日のTVの報道には、ついついそう言ってしまいますよね。

日本中のあちこちで続くサメ騒動で、サメが身近に、普通にいることは誰にも分かったと思います。
この騒動もそろそろいい加減にして欲しいなぁ、と感じています。
by ミストラル (2015-08-15 12:56) 

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