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千歳サケのふるさと館・チョウザメの繁殖の話 [淡水魚]

豊平川さけ科学館に行った際、真駒内川を遡上するサクラマスを見て大いに感動したオレは、さけ科学館からサンピアザ水族館に向かう地下鉄の中でふと、“どうせならサケ(シロザケ)の遡上も見てみたいなぁ”と。
漠然とした思いが頭の中によぎった直後、千歳川に行けば見られるのかも…、と思いついた。その日は遠征最終日で、最終的な目的地は新千歳空港。都合のいいことに、千歳川はその途中にある。
というワケで、サンピアザ水族館を少し早めに切り上げて、当初予定していなかった千歳サケのふるさと館に行くことにした。結果的にはそれが大当たり。最後にものすごく大きな満足感を得ることができた。

目的だった川を遡上するサケの姿はもちろん、館内の水槽でもその姿を見ることができたというのは以前のブログに書いた通り。もちろん、それも大きな収穫なんだけど、先日(6月)、成功させたというホワイトスタージョンの人工繁殖についていろいろ聞くことができたのが最高の収穫だった。
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ホワイトスタージョン

水槽のサケを眺めつつ、写真を撮っていたら、大水槽の給餌の案内がなされ、給餌解説が始まった。
それはそれで楽しく興味深いものだったんだけど、その中にチョウザメの繁殖の話題が出てきたことをきっかけに、給餌解説の後、気になっていた“チョウザメの雌雄の見分け方”について聞いてみた。
質問に対する答えはものすごく興味深くて、それが引き金になって次から次へと聞きたいことが湧いて出てくる。後になってみれば、仕事中にも関わらず、かなり長い時間を付き合わせてしまったスタッフ氏には申し訳なかったかなぁ、と思う反面、オレとしてはすごく有意義な時間になった。具体的なデータを織り交ぜたような、もっと本格的な話が聞いてみたくなった。というより、その繁殖に関する作業のすべてをこの目で見たいと思ったくらいだ。

サケのふるさと館で繁殖を行ったチョウザメは、大水槽で泳ぐアムールチョウザメとホワイトスタージョンの2種類。
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アムールチョウザメ

アムールチョウザメはその時に得られたという幼魚3匹が展示されており、ホワイトスタージョンの稚魚も、近い将来、展示に出されるとのことだ。
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サケのふるさと館生まれのアムールチョウザメ。

チョウザメの雌雄は外見で判別することはできない。じゃあどうするか。
水から取りあげて、体をほんの少し切って生殖腺を確認することで行うのだそうだ。
切ると言っても麻酔を使い、わずか数㎝だけ。魚体にダメージを与えるほどではなく、傷はすぐに治ってしまうらしい。

そうやって判別された雌雄を親に繁殖を行うのだけど、使えるのは生後10年以上のもの。
6月に繁殖させたホワイトスタージョンのメスは、オープン時からいるという22歳の個体。もちろん、10歳を越えたオスも揃っている。
とは言え、飼い続けているだけでは繁殖しないので、性成熟に達している個体に排卵を誘発させるホルモン剤を投与。そこからうまくいけば卵、精子がそれぞれ採れるのだそうだ。
アムールの時は精子は採れたのに、卵がわずか。ホワイトスタージョンの時は、その逆で、非常に多くの卵が採れたものの、精子が採れなかった。そのため、北海道大学で冷凍保存されているものが使用されたのだとか。そのせいなのか、受精率が悪く、孵ったものはごくわずかだったそうだ。
受精からふ化、その後の生育の歩留まりの悪さも要研究案件らしい。3匹が展示されているアムールの幼魚も、そこまで育ったのがたったのそれだけだったからだそうだ。

ホルモン剤を投与した以降は、まさに戦い。
24時間以内に排卵が始まり、それを確認したら、生殖腺に沿って、魚を絞るように採卵。同時にオスからも精子を採る。
絞り出された卵は、粘性があり、そのままではうまく受精させることができないため、それを取る作業が始まる。何十万粒もある魚卵の粘性を取り除く作業なんて、想像もできないが、聞いているだけで気が遠くなりそうになった。
その後、精子と混ぜ、受精を促すワケだが、今回使われた冷凍保存された精子は、やはり受精率はかなり低かったらしく、ふ化に至ったのは100匹ほど。
何十万粒の内、孵ったのはたったの約100匹。残りは無駄になってしまったということ。
その無駄になってしまった卵は即ちキャビアである。まったく下世話な話ながら、それが食用として流通していれば、いったい幾らになったんだろう? みたいなことを考えてしまった(笑)ちなみに、国産のフレッシュキャビアは、概ね、30gで1万円くらいする。

一度採卵が始まってしまうと、そこから一連の作業のすべてが終わるまで帰れず、しかも、排卵がいつ始まるかも分からない。一連の作業が終了すると“もう2度とやりたくない!!”と思うらしい(笑)でも、今回は稚魚という形できちんとした結果が出ているため、またやってもいいかな!? みたいに思うということも話してくれた。とはいえ、採卵は毎年行えるものではないそうで、再チャレンジするにしても2年後くらいになるらしい。

ふ化した稚魚は、ヨークサック(卵黄のう)が吸収されると、摂餌を始めるため、そこからが給餌が開始される。だが、そこ大型魚だけに、いきなりブラインシュリンプからスタートできる。それどころか、稚魚にはその時期だけの歯があって、かなり激しく共食いもするらしい。この時期の成長は早く、比較的すぐに我々の知るチョウザメの形になるそうだが、やはり、この時期は死にやすいらしく、ぽろぽろと死んでいき、数を減らしていってしまうのだとか。

一方、採卵を行った親魚のダメージはかなりのものになるそうだ。
胸の辺りまで延びる生殖腺に沿って体を絞っていくので、胸あたりから腹部全体が激しくスレたようになってしまい、採卵作業終了直後は“ダメかも!?”と思うほどの状態になってしまうらしい。しかし、その後徐々に復活。今では普段通りに戻っているが、9月末に時点では、腹部にうっすらとその時の跡が見てとれた。
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お腹の中心あたりに線のような傷跡が見える

かなりかいつまんだレポートになったが、サケのふるさと館で聞けた話は概ねこんな感じ。
オレがあまりにもいろいろ質問するからか、チョウザメ養殖に関心のある人に思われていたらしい(笑) 事業として始めようとは思っていないけど、関心があるということに関しては間違いないのだけれど。

千歳サケのふるさと館と共同で繁殖に取り組んでいる北海道大学は、チョウザメの繁殖の研究にかなり熱心に取り組んでいるようで、道内の水族館施設などとも連携して、こうした繁殖作業を行っている。
こうした繁殖がもっと効率的に、かつコンスタントに行えるようになれば、キャビアがもう少し身近になるだけでなく(それができれば地域の産業としても成り立つ)、自然下で絶滅寸前になっているチョウザメの未来を明るいものにできるかも知れないのだから夢のある話だ。
機会があるなら、北海道大学の活動やその話も聞いてみたいものだ。

北海道遠征の話はこれにて終了。残した水族館(含む相当施設)はあと5館(のはず)
残りは来年… かな?
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