ナイルパーチ

オレの大好きな魚のひとつに、ナイルパーチがいる。
ウチでも1匹飼っているが、ここ最近、特にお気に入りで、思わずブログに登場させてしまったほど（笑）
飼ってみて改めて思う。ホント、いい魚だ。

ルビー色に輝く大きな眼でオレを見つめ、水槽の前を通る度に反応を見せてくれる。
まぁ、単に餌が欲しかったり、条件反射だったりするだけなんだろうけど、飼い主としてはそういう動作が可愛く感じるものだ。
しかも、この愛想のよさがありながら、他の魚への攻撃性がほとんどないのがさらにいい。生きた魚以外に餌付きにくいのは難点だが、それを補って余りあるいい魚だと思う。

だが、日本ではあまりイメージのいい魚ではない。
切り身の状態で大量に輸入されていて、スズキの切り身としてスーパーなんかでも売られていたし、弁当のおかずや回転寿司なんかでも使われていた（る）らしく、知らずに食べていたという人も多いだろうと思う。
食品表示の法律が変わって以降は、“アフリカ産スズキ”やナイルパーチの表示名で販売されるようになっているが、その影響もあるのか、一時ほど目に付かなくなったような気がする。

イメージの悪さは、“ビクトリア湖の悲劇”だ。
ビクトリア湖に移入されたナイルパーチは、爆発的に増え、湖畔で暮らす人々に外貨（富）をもたらしたが、増えたナイルパーチがビクトリア湖の固有の魚を食い尽くし、多くの種類が絶滅に追い込まれた、という話だ。

この話には続きがあって、あまりにも増えすぎたナイルパーチは近親交配が進み、平均サイズが小さくなっており、さらに乱獲が祟ったのか、漁獲量も激減しているらしい。
ナイルパーチを目当てに集まった人々で湖畔の人工も爆発的に増え、環境汚染もかなり進行しているのだそうだ。
まったくやりきれない話だ。
漁獲量の減少の影響なのか、日本でもひと昔前は捨て値みたいな値段で買えていたのが、今ではそうでもないとか。

テレビなどでこういう話（日本のブラックバス問題にも通じるけれど）が出ると、ナイルパーチは必ず悪者扱いだ。
だが、それは違う。
ナイルパーチは好きこのんでビクトリア湖に引っ越したワケではなく、移植したのはあくまで人間だ。
彼らは人の都合で引っ越しさせられた先で、それまで通りの生活をしていたに過ぎない。
だが、長らくナイルパーチがいない状態で成立していたビクトリア湖の生態系は、それへの対処法を知らない。
固有のシクリッドたちも為す術無く食われるだけ。つまり、絶滅するしかないということ。

ビクトリア湖よりも南にあるタンガニイカ湖には、ビクトリア湖の固有種たちと同じく、固有のシクリッドが数多くいるが、ナイルパーチと同属のLates属の魚も数種類いるため、それを前提とした生態系が成り立っている。

こういう話を聞く度に思うのは、人間って何て愚かで罪深い生き物なのだろう、ということ。
ビクトリア湖の悲劇？　確かにものすごい悲劇だが、そう遠くない未来に、何もいなくなったビクトリア湖を前に、これまでとは違った話として伝えられることになるだろう。
20世紀最大の環境破壊といわれるアラル海の話と同様、人間の欲深さと愚かしさを伝える話としてね。

すっかり暗い気分になったところで、水族館の話も少し。
“とってもいい魚”であるナイルパーチには、オレが知る限りでは、しながわ水族館、熱川バナナワニ園、アクアトトぎふ、鳥羽水族館で会うことができる。

しながわの個体はオレの言う“いい魚”の片鱗を感じることができる。

アクアトトの個体はものすごく大きくて堂々としていて、しかも正面のよく見える位置をゆっくり泳いでいるので、ナイルパーチの魅力を存分に堪能できる。上を泳いでいる小さい方の個体でも、50㎝くらいはある。大きい方は…

バナナワニ園にいる1匹は、池にいるので見にくいが、何故かコロソマにピッタリ寄り添って泳いでいる。

鳥羽水族館では、マナティの水槽で1匹がひっそりと暮らしている。
水槽が大きい分、ちょっと見つけにくいのだけど、鳥羽に行った時には探してみて欲しい。

タグ：水族館 ビクトリア湖の悲劇

コメント 2

生態系の破壊の悪者のイメージのある
ナイルパーチも激減していることを初めて知りました。
やはり
かわいそうな魚なんですね…
by ずぅ (2009-05-17 10:21) 

>ずぅさん

野生の生き物に対して、人間が善悪を勝手に決めるのを見聞きする度、
とても腹立たしい気持ちになります。

生き物たちは、人なんか関係なく、自分たちの生活をしてるだけなのに。
動物たちに言わせれば
“生態系の破壊？　それ全部オマエラ人間たちの問題だろ”
って、こっぴどく怒られてしまいそうです。
by ミストラル (2009-05-19 22:59)