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オガサワラヨシノボリ@すみだ水族館 [淡水魚]

世界でもっとも遠い東京である小笠原からやってきた魚を展示しているすみだ水族館。
孤立した海洋島であり、川はあるものの人為分布している外来種を除けば、淡水魚はほとんどいない。固有種であるオガサワラヨシノボリが唯一と言っていいのかも知れない。
そんなオガサワラヨシノボリを、小笠原諸島以外で唯一、展示しているのがすみだ水族館なのだ。
小笠原の固有種なんだけど、見た目はごく普通のヨシノボリと変わらなくて、スゴイものを見てる感はほとんどないんだけど、実はとても珍しいものなのだ。
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絶滅危惧種に指定されているけれど、現地の川には沢山いるらしい。
だが、小笠原の特定の島にしかいない種類であり、もし、そこで何かがあると、一気に絶滅してしまう危険性がある。そのため、絶滅危惧種に指定されているのだそうだ。

すみだ水族館では、そんなオガサワラヨシノボリの繁殖に成功している。
一部ニュースなどで流れたので、聞き覚えがある人もいるかも知れない。

少し前の話になるが、9月13日のこと。
閉館間際のすみだ水族館で、水草水槽を眺めていると、その脇にあるすみだラボで何やら作業が。
水と簡単なエアーレーションだけがなされた小さな水槽がそこに置かれ、中には産まれて間もないと思しき、小さく透き通った稚魚の姿が。
それこそが件のすみだ水族館生まれのオガサワラヨシノボリの稚魚だったのだ。
恐らく、誰よりも早くこれを見たのは、多分、オレだ。
と言っても、あらかじめ聞いていたワケでも、特別に見せてもらったワケではなく、たまたま閉館間際にそこにいただけなんだけど(笑)

水槽を覗き込んでいると、その水槽、つまり繁殖を手掛けたスタッフ氏が出てきたので、話を聞かせてもらった。

ヨシノボリのは川で産まれた稚魚がそのまま海まで流され、海で稚魚期を過ごし、少し成長すると再び川に戻るのだそうだ。
そのため、水槽内でも卵を淡水で孵した後、水槽内の海水濃度を少しずつ高め、完全な海水に。その後しばらくしたら、再び海水濃度を下げ、再び真水へと戻していくという作業が必要になる。
また、大卵型と小卵型があり、オガサワラは後者。
それがまた難しさのレベルを押し上げる。
淡水魚の稚魚は大きめで、卵から孵ってすぐに、餌として一般的なブラインシュリンプ(アルテミア)を食べることができる。反面、海水魚の稚魚はとても小さく、ブラインシュリンプは食べられない。そこで、より小さなワムシというプランクトンを用意しなくちゃならないんだけど、ブラインみたいに簡単に手に入らないので、まずそこが大変。
すみだ水族館でもワムシの手配が間に合わなかったそうで、初期飼料は代用品でまかなったらしい。
担当スタッフ氏は、前任の水族館でも様々な実績を残してきているベテランだけに、ここまでの面倒な作業も、勘と経験でこなせてしまうのだろう。

この時期の稚魚はとにかく餌切れに弱く、残餌が出るほどたっぷりと給餌する。
もちろん、水が汚れるから、水換えも毎日行う。この時はフィルターもついていなかったから、汚れたら換える!! が基本。
「フィルターがついてると、どうしてもそれをアテにしてしまうので、何だかんだでサボってしまう。でも、ついてないなら手をかけるしかないので、世話がおろそかにならないんですよ」と、そのスタッフ氏。

繁殖に成功して、そのやり方が分かったので、これからはコンスタントに殖やせるそうだ。

となると、絶滅危惧種に指定されている種類だけに、放流も、なんて考えてしまうが、そんな単純な話ではないらしい。
というのも、天然では1匹のメスが産んだ卵から成魚になれるのは、多くても1~2匹。
外敵がおらず、成長するよう人が手をかける水族館では、30~50匹が成魚になれる。
採集した川が分かっていて、そこに戻したとしても、特定の血統の数が多くなりすぎることになり、遺伝子汚染が起きてしまうのだそうだ。
とりわけ、寿命の短い生き物では、それが顕著に出やすいのだという。
飼育下の生き物を野生に戻すということは、何かと難しいようだ。

9月以降、すみだ水族館には何度か足を運んでいるが、透き通った数㎜の稚魚たちは、しっかり成長し、小さな幼魚となっていた。
とは言え、オレの機材では小さすぎて写真が撮れないので、写真はないが、最後に行ってからもう1ヶ月が経過してるから、今行くと、またまたその成長ぶりに驚かされるのだろう。

とても小さな小魚だけど、ここでしか見られないオガサワラヨシノボリ、そして大変な手間を経て成長した水族館生まれの幼魚たち。
シロワニやペンギンばかりに目を奪われがちだが、それに劣らず、いや、ある意味ではそれ以上に貴重で珍しい魚だから、ちょっと覗いてみることをオススメしておく。
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コメント 2

NO NAME

孤立した海洋島に固有種の淡水魚がたどりついたのですか?

by NO NAME (2016-02-22 00:01) 

ミストラル

>NO NAMEさん

そういうことなのでしょうね。
不思議ですよね。
by ミストラル (2016-02-26 22:58) 

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