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沖縄美ら海水族館 名誉館長 内田詮三氏の講演 [雑談]

水族館でジンベエザメと言えば、やはり沖縄美ら海水族館だろう。
国内最大の水槽で3匹が飼われていることもあるが、それ以上に、どこよりも先駆けて飼育に挑戦し、それを成功させ、水族館におけるジンベエ飼育の礎を築いたことが大きい。
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現在も飼育、展示をするだけでなく、現実的な目標として“水槽内繁殖”を掲げている点など、ジンベエ飼育にかける志の高さは、パイオニアならではのものを感じさせる。
とんでもない目標のはずなのに、それが理想論に聞こえないのも、これまでの実績や、数々の挑戦によって培われた蓄積の裏付けがあるからなのだろう。

その陣頭指揮を執ってきたのが、前館長の内田詮三氏だ。
美ら海水族館の館長を前身の沖縄記念公園水族館の時代から 30年に渡って務めてきた人で、サメ・エイ類の研究でも有名で、博士号を持つ学者でもある。
言ってみれば、日本の水族館の歴史を作ってきた、生ける伝説みたいな人。
多くの著書を始め、館長自身を取材したものなども数多くあり、それらを見る度に、実際はどんな人なんだろう? という興味が沸いてくる。
お目にかかる機会はないものかと探っていたら、東京で長崎大学主催のセミナーがあり、そこで内田氏が東シナ海をテーマにした講演をするという。
これはもう行くしかない!! と色めきだったものの、その日は仕事の都合で、セミナー開始時刻の17時30分には間に合わない。
しかし、沖縄にお住まいの内田館長にお目にかかれる機会など滅多にないことだろうし、迷いはしたけれど、結局、申し込むことに。

幸運なことに、普段なら18時頃までかかる仕事が、その日は17時頃に終了。
だからといってそこで帰れるワケではないんだけど、コソコソと抜け出して、会場へと急いだ。講演は17時30分からだったので、それでも間に合わないんだけど、とりあえず講演時間内には行くことができた。

講演の内容は、東シナ海のサメ、鯨類について。
1時間枠で30分ほど遅刻していったので、聞けたのは鯨類の話題が中心だったけれど、登場したのは水族館では見られない種類が中心で、その話も内田館長の経験談に基づいたものということもあり、ひたすらに興味深かった。

例えば、海洋博公園でも飼育されているシワハイルカは、沖縄の海人(うみんちゅ)にもっとも嫌われている種類なのだという。
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餌取りがうまく、釣りの仕掛けや、針にかかった獲物を持っていってしまうことが多いらしい。
海の透明度が高いので、仕掛けにかかった魚をくわえているのが見えるのだとか。
イルカたちは魚を食べずくわえたまま、海人が糸を引き上げるのを待っている。
引っ張られている方が、針から魚が外しやすくなることを知っているのだそうだ。
また、イルカ避けの金属音を出す装置も、最初はある程度効果があっても、すぐに慣れてしまい、針にかかったものを取り去っていくのだとか。
他にも、突き刺さる可能性があるダツを食べる時は、頭を落としてから食べるとか、沖縄の海で暮らすイルカの能力の高さに驚かされるエピソードが話された。

しかし、そんな狡猾なイルカたちも、ビニールや発泡スチロールを食べて死ぬものが多いという。
保護依頼が来るような弱って浮いているような個体は、大抵、胃の中から大量のビニール袋などが出てくるのだそうだ。
美ら海水族館でも、そんなイルカの胃が標本として展示されているが、イルカだけでなく、ジンベエザメ、マンタ、ジュゴン、ウミガメなどもそれらの犠牲になっており、その実例を写真で見せられると、使う者のひとりとして、何とも申し訳ない気分になってくる。
美しい沖縄の海にも、ビニールや発泡スチロールは大量に漂っていて、周辺に島影ひとつ見えない沖まで出ても、それらが目に付かない場所はないほどだとか。
レジ袋などビニール袋の使用はできる限り少なくしようと心がけているつもりだが、話を聞いて、その心がけをさらに強固なものにしようと思ったことは言うまでもない。
皆さんも、ビニールや発泡スチロールの類は、風で飛ばされたりしないよう、確実に処分するよう心がけていただきたい。
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鯨類の飼育技術、とりわけ繁殖実績においてはアメリカに先行を許しているが、人工尾ビレによるイルカのリハビリの実績は、海外では実績がなく、内田館長をして“してやったり”だったらしい(笑)

先にも書いた通り、サメの話はほぼ終わっていたが、小さなエピソードが様々な話の中に織り交ぜられるように語られ、オレの好奇心を掻き立てる。
中でも、ジンベエザメと並び美ら海水族館を象徴する存在であるオオメジロザメは、他のサメとは違い釣り捕獲ができないこと、現在も飼育されている個体は定置網で捕獲されたものであることなどが紹介された。
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かつては水族館のある場所から2㎞も沖合に出れば、様々な種類が捕獲できたそうだが、今は40㎞ほど沖に出なければ、サメは見つからないという。
餌となる魚の減少が主たる理由らしい。
漁業資源の枯渇はあちこちで問題視されているが、沖縄も例外ではないようだ。

ワクワクときめける話に続くのは、こうした厳しい現実。
年に1度しか行かない沖縄は、オレの目にはいい面、部分しか映らないが、実際に起きていることは、その他の地域同様、目を背けたくなるようなことも多いようだ。

そんな暗い面も含め、内田館長の話はとても興味深かった。
本などで見知った話でも、やはり本人の口から聞くのとでは、違って聞こえるものだ。
講演の半分くらいを聞き逃していることもあって、こんな機会がまたあって欲しいなぁと、セミナー修了後、内田館長に今後の予定を伺ってみると、具体的な予定こそ聞けなかったが、こうした講演、教育普及活動は時々行っている様子。

というワケで、この次がいつになるかは分からないけれど、再び話を聞ける日を楽しみに待ちたいと思う。
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