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沼津港深海水族館・シーラカンスミュージアム(静岡) [水族館インプレッション]

2012年1月現在、日本でもっとも新しい水族館は、昨年12月10日に沼津港にオープンした沼津港深海水族館だ。
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日本一深い駿河湾に面した沼津にできた水族館である。その展示テーマに深海を掲げるのも、ある意味当たり前な話と言っていいだろう。
しかし、深海生物の展示は、きわめて困難なこと。
それをどんな展示で見せてくれるのか。やはり新水族館のオープンは楽しみなものである。
しかし、いざ蓋を開けてみると、聞こえてくる評判は芳しくないものも少なくない。
水族館のブログを運営している知り合いが、オープン早々出掛けたと聞いたので、その印象を直接聞いてみたところ、物足りなさを感じた様子だった。
めnちくんのブログ(沼津深海水族館のレポート)
http://blog.livedoor.jp/pokomenchi0929/archives/51795066.html
果たして、オレが見に行ってどう感じるのか。というワケで、2012年が目の前に押し迫った12月31日、カメラ片手に出掛けてみた。

沼津港には、寿司店や食事どころが立ち並び、食事や買い物に訪れた人々で賑わっている。
この新しい水族館は、その一角にできたもので、“海の手配士”としてTVなどへの出演も多い水族館用展示魚の商社、「ブルーコーナー」がプロデュースや運営を手掛けている。
実際の水族館も、漁港に面した通りから、少し入った場所にあって、その周りを寿司店などに囲まれている。とりあえず、手ぶらで行っても飲み食いの心配は必要ない。

水族館の前まで行ってみると、「えっ!? ここ」
まず、そこで驚く。規模の小ささは聞いていたけれど、建物からしてかなり小ぶり。周辺の寿司店やお土産店と大して変わらないくらいの大きさだ。

入館すると、ダイオウグソクムシが入った水槽が出迎えてくれる。
水槽の表面には勢いよく水が流れていて、「うわっ!! ものすごい漏水してる」と焦ったが、そういう演出らしい。深海生物の水槽は水温が低く、暖かい時期には激しく結露してしまうから、だったら最初から水を流してしまえ!! という逆転の発想… だったのかどうかは分からないけれど、正直、見やすくはない。
だが、ダイオウグソクムシの数はどこよりも多くて、流石はブルーコーナー!! と言ったところだろうか?
でも、駿河湾を大きなテーマに謳った水族館で、いきなり駿河湾にいない生き物から展示が始まるというのはどうなんだろう?

個人的に、お金を払って魚や展示を見に行く水族館では、家庭の水槽では真似のできないものを見せて欲しいと思っているんだけど、ここの水族館にある水槽は、メインの大水槽(というほど大きくないけど)の駿河湾水槽以外、すべてがホームアクアリウム級。
そしてその小ささ以上に気になったのが、深海水族館の名前に反して、南国のサンゴ礁の生き物ばかりが並んでいたこと。もちろん、深海生物もいくつかいるが、印象に残りにくいというか、明るい南国の水槽の方が圧倒的に強い。駿河湾の深海生物を期待して見に行くと、正直、肩すかしを食らったような気分になる。
流石に中身はプロの仕事らしい仕上がりにはなっていたけれど…
ラーメンの看板を掲げたお店に、ラーメンを食べるつもりで入ったら、メニューにはスパゲッティばかり載っていた、みたいな感じ?

そしてメインの大水槽である駿河湾水槽。
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ここには錆びた自転車や、空き缶などが沈められており、そんなゴミの海でも逞しく生きる生き物の姿を見せている。
しかし、人の生活圏のすぐ側にある海の姿を見せた水槽かと思いきや、必ずしもそれに徹しているワケでもないようで、ここでも少しの違和感を憶えた。
駿河湾水槽ではなく、沼津港水槽だったら、今のままでも納得できたと思うんだけどなぁ。

その次に続くのは、ようやく深海水族館らしい展示エリア(といってもすごく小さい範囲なんだけど)になっていて、赤いライトで照らされた水槽に、深場にいる魚などが展示されている。
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ここではベニカワムキなんかが珍しいところだろうか?
ここには、この水族館最大の見物でもあるメンダコが展示されているのだけど、写真撮影はNG。この水槽だけは一切の撮影が禁止されているので写真はナシ。どうやら、急遽、禁止になったようで、水槽周辺にはそれを知らせる貼り紙がされていた。
だが、件のメンダコは、映像などで見たことのあるものとはずいぶん違っていて、底に転がって微動だにしない。生きていたのだろうか? 暗い水槽の中に、入っていることだけは分かったが、詳細な形、状態等は一切分からなかった。
とは言え、メンダコなんて見られただけでもラッキーな生き物のはず。いつも見られるワケではないのだろうけど、見られる可能性はどこよりも高そうだ。

1Fの展示は、これにあと真っ暗なヒカリキンメダイの水槽(ちょっと綺麗)があってすべて終了。
ひとつひとつの水槽を必死に見たとしても、1時間はかからないほどのボリュームだ。

順路に沿って2Fに上がると、1Fとは打って変わって、シーラカンスミュージアムとなる。
そもそも、沼津港深海水族館で何でシーラカンス? ではあるのだけど、5体もの剥製や標本があるのが最大の目玉。一般の目に触れる剥製や標本としては、恐らく世界最多だ。
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2Fの展示は、それに引っかけた生物の進化の歴史を見せている。
古びた研究施設風の内装の中に、ポリプテルスや肺魚などの古代魚類、ゴキブリなど古代から生き続ける生物が入った小水槽がいくつか並び、メインのフロアでは、卵を産む原始的な哺乳類、単孔類のハリモグラが展示されており、この水族館のひとつの目玉になっている。
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昆虫→シーラカンスなど原始的な魚類→両生類→原始的なほ乳類という流れを、実際の生き物を使って説明しているのだけど、その配置のせいなのか、展示のストーリー性に唐突感があって、並べられた虫や魚たちがどうしてそこに展示されているのか、ハリモグラが出てくる理由なんかが分かりにくい。
せっかく珍しいハリモグラも、冷凍シーラカンスと向かい合った場所に突然登場するとなると“何でここにこれが?”と思ってしまうのだ。

2Fの展示まですべて見終えたとしても、時間はそれほどかかっていないはずだ。
とにかく規模が小さく、すぐに見終えてしまう。民営の施設なので、公営の施設に比べれば料金が高めなのは仕方がない。でも、1600円は少し(だいぶ)高いと思う。
そんな割高感の理由は、深海水族館という名前に反して“深海感”が薄いこと。
1F、2Fの展示に関連性がないのは構わないと思うのだけど、2Fも先に書いたように、展示のストーリー性に、曖昧な感じがあること。
規模や水槽の小ささよりも、そのあたりが“ちょっとなぁ…”
水族館の名前に、“深海”がついていなければ、入館料の高さ以外は今のままでもいいと思う。でも、今の名前、展示では、来場者が抱く期待には応えられていないと思う。
ハッキリ言えば、今のままでは、猛烈なハリモグラファンでもない限り、リピーターになる人はいないんじゃないかな!?

オープン間もない水族館なので、今後、変化していく部分もいろいろあるはず。
今後の改良、発展に期待したいと思う。
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コメント 4

pomu.

オオグソクムシはしょっちゅう見ているものの、ダイオウグソクムシは見たことがありません
これはぜひ! と思ったのですが、1,600円はちょっとお高いですねぇ
それに「深海」以外のものが多かったりするのですか……
「深海水族館」という名前を目にしてワクワクしていたのですが
あまり期待しすぎないほうがいいかもという感じですね~

でも、もう少しあたたかくなったら多分行くと思います(笑)
それまではたけすいの深海生物を堪能します^^b
by pomu. (2012-01-13 08:25) 

ミストラル

>pomuさん

そうですよね。オオグソクムシはよく見てますよね。
でも、この新しい水族館にはいませんでした。

たけすいで目が肥えているpomuさんからすると、
深海の展示で驚けるものはほぼないと思われます。
2Fのシーラカンスの標本くらいかな!?
変な言い方ですが、くれぐれも期待なさりませぬよう…
by ミストラル (2012-01-14 02:01) 

ずぅ

レポートありがとうございます☆

深海水族館にハリモグラですか(^^;)
それは興味ありますね☆

レポートを読むと、深海の展示は
江の水の方が良さそうですね♪

それでも、ちょっぴり興味ありです(^^)/

by ずぅ (2012-01-16 23:59) 

ミストラル

>ずぅさん

そうなんです。名前は深海なのに、もう海からも離れちゃってる(笑)
魚類からほ乳類に至る進化の道筋を見せる展示のようです。
でも、土にまみれて寝てるだけで、あまり面白いとは思わなかったのですが、偶然、起きてきたので写真が撮れました。

深海の展示は、いろいろ難しいですもんね~
是非、行ってみてください!! とは言いにくいですが、話のタネにはなるかも知れません。
by ミストラル (2012-01-18 01:26) 

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