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アクアマリンふくしま 復活!! [水族館インプレッション]

3月11日に発生した東日本大震災。海沿いに建つ水族館は甚大な津波被害に遭い、中には施設ごと壊滅してしまった所もあったほど。
アクアマリンふくしまも例外ではなく、建物こそ壊されずに残ったものの、その後の停電の影響で展示生物の大半を失うという、それこそ壊滅的被害を被った。
加えて、福島県は放射能汚染という問題に今も悩まされ続けている。アクアマリンがあるいわきは、放射線量は少なく、事故前と変わらないレベルなのだそうだが、それでも客足などには少なからず影響を及ぼしているはずだ。
同じく被災した水族館が次々と復興再オープンをしていく中で、アクアマリンも4ヶ月の休業を経て、7月15日に復活。待望の再オープンを果たした。
オレのもっとも好きな水族館でもあることから、再オープンはものすごく嬉しいニュース。
生憎、15日には間に合わなかったけれど、再オープンから6日後の21日に行ってきた。
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最寄りの高速インターを降り、水族館へと向かう道は所々が陥没している。舗装が剥がれて穴だらけの砂利道になっている区間があったり、橋の前後はクルマが飛び跳ねてしまうような大きな段差になっていた。水族館に近づくと、今度は津波の影響と思しき、倒壊した建物や塀、流されたコンテナ、潰れたクルマが転がっていたりなど、非常に生々しい震災の爪痕が今なお残っていた。
アクアマリンふくしまの復興は、オレとしてはとても喜ばしいニュースだったのだけど、水族館周辺に広がる現実は、浮かれたような気分を挫かせるに十分だった。そうした光景を目の当たりにしたことで、オレの知っているアクアマリンではなくなっているのかも、みたいな恐怖心も大きくなっていき、心の中を曇らせていく。

嬉しさと期待感。不安感と少しの恐怖心。
入場ゲートをくぐった時の気持ち。しかし、周辺の生々しさに相反して、水族館内は綺麗に復興しており、震災や津波の影響を感じさせるものはなかった。

順路最初の古代生物の展示コーナーは以前と変わっておらず、エスカレーターを上がった先にあるふくしまの森もオレが知ってる姿を保っていた。
ホッとした。水族館の外の現実に押しつぶされていた嬉しさや喜びといった感情が、再び強く沸き上がってくる。

しかし、喜びも束の間。
森を回り込んだ先に広がる、黒潮水槽の様子が違う。
何も入っていないように閑散としていて、水も濁っている。
オレが知っていた光景は、水色の壁の中に、向こうが見えないほどの数のイワシが群れを作っていたはずだった…
目をこらして覗き込むと、奥の方から銀色に輝く若いシイラが3匹、こちらに向かって泳いでくるのが見えたが、とても稼働している水槽には見えず、何だか暗い気持ちに。
隣の親潮水槽は、小さな魚が沢山泳いでいて、黒潮水槽よりはずっと賑やかな感じだったけれど。

海獣コーナーは、以前、保護されたオットセイやトドの仔がいたスペースに鴨川生まれのアザラシの仔、その隣、トドのプールにセイウチ、セイウチがいたプールに鴨川に避難していたメスのアザラシが入っていた。
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久しぶりに見たセイウチがずいぶん大きくなっていたこと、そして相変わらず愛想よくしてくれたことなどはよかったけれど、いつもこのコーナーに響き渡っていたトドの声がしないと、何か物足りない感じがする。まだ帰ってこられない事情は分からないけれど、早く帰ってきて欲しいものだ。

そのまま順路を進み、東南アジアの水辺へ。
ジャングルは相変わらず生い茂っていたけれど、3つある水槽はどれも大きくメンバーチェンジしており、小さな魚が泳いでいた。
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真ん中のカメがいた水槽では、ドワーフボティアが楽しそうに群れ泳ぎ、それはそれでとても楽しい水槽ではあったのだけど、中型のコイ科魚類やカメ、アロワナやダトニオがいたかつての姿を知っているオレには、それらがいない水槽がいちいち寂しく、また、そうなってしまった理由も知っているから、悲しくもあった。
そしてその寂しさや悲しさは、角を回り込んだ所のマングローブ水槽でピークに達した。
かつては、汽水魚たちが沢山泳いでいた水槽も、現在は小さなスズメダイの幼魚などがいる程度になっており、一見、何もいないように見えるほど閑散としていた。
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個人的にもっとも好きな水槽だっただけに、その前にいるだけで胸が締め付けられるようだった。

ショッキングな現実はその先にも待っていた。
その後のサンゴの水槽も大きく様変わりしていたし、何よりアクアマリンを象徴すると言ってもいいキンメモドキが群れ泳ぐサンゴ礁の水槽は、以前との変わり様は見るに堪えないほどだった。実際、その水槽では擬岩が崩落するなどの大きな被害があったらしい。
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白い補修材でつぎはぎのようになった擬岩、白く濁った水、その中を何となく泳いでいるような魚たちなど、その変化は痛々しくさえ見えたほどだった。
そして黒潮の水槽。かつては15種類以上の魚が泳いでいた大水槽も、現在はたったの4種類。海水は白く濁っていたけれど、中を泳ぐカラスエイやキハダたちが元気そうだったことは、沈んだオレの気持ちを少し軽くしてくれた。

残念ながら、オレの不安は的中してしまった。
水族館の形は成していたけれど、そこにあったのはオレの大好きなアクアマリンじゃない。
建物や水槽はオレが知ってる姿を保っているのに、その中身は初期化されたコンピューターのように、まるで別物だった。
ハードは何も変わっていないのに、中身のソフトが変わっただけで、使い勝手すら変わってしまうような感覚。使い慣れたハードだからこそ、余計にもどかしく感じる。
そんな感じだろうか。
もちろん、限られた条件の中で、精一杯の復興だったことも分かってるし、以前の展示の展示が、10年の歳月と共に成り立っていたことも知ってる。同時に、それが短期間で元通りにならないことも。
今、目の前にあるアクアマリンの姿が、今できる最大限の結果だったこともよく分かってる。
でも、あれだけ素晴らしかった展示が一瞬で失われてしまったという残酷すぎる現実を、直接実感させられると、ただただヘコむしかできなかった。

オレが知ってる以前のアクアマリンは、生命感に溢れてた。
水槽の中の生き物たちも、まぶしいくらいに煌いていた。
普通の魚がものすごくカッコよく見える水族館。それこそがアクアマリンが好きな理由だったし、最高評価の理由でもあった。
でも、震災や津波によって、それらは文字通り“初期化”されてしまっていた。

あらためて思った。水族館はそれ自体が生き物なんだって。
1度死んでしまうと、再び元通りの美しい姿を取り戻すのは容易じゃない。
そうなった原因が未曾有の大災害だけに、仕方ないことも分かってるし、むしろ、建物が無事に残ってくれたことだけでも感謝しなくちゃいけないくらいなんだと思う。
だけど、こんな思いはもうしたくない。
前向きに考えれば、あと何年かすれば、かつての姿を取り戻してくれるんだろうと思う。
でも、そのために必要なのがお金だけではなく、時間の方がもっと重要で、大きな意味を持っていることも分かるだけに、前を向ききれない部分もあるんだけど…

とは言え、オレにできることは応援するのみ。これから先、かつての崇高な美しさを完全に取り戻すその日まで、引き続き応援し続けていきたいと思う。
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コメント 4

まるこ

はじめまして。
私もアクアマリンふくしまに行ってきました。
 
以前と比べてしまうと、寂しいかんじですね。熱帯アジアの水辺は鳥やコウモリはいなくなってしまったのでしょうか?
私もマングローブの水槽はビックリしました、何もいないかと思ってよく見ると小さい魚が・・・ナポレオンフィッシュがいた水槽はふぐ達・・・サンゴ礁の水槽は別の水槽を見ているようで変な気持でした。

私もずっと応援し続けていきます。

by まるこ (2011-08-02 12:22) 

ミストラル

>まるこさん

ようこそ。
コメントをありがとうございます。

まるこさんも寂しく思いましたか。
コウモリや鳥たちはどうなったんでしょうね? 気になります。
よく知ってるはずの水景がそこにないと、やっぱり変な気分になりますよね。

あと何年かすれば、きっと元通りになってくれると思います。
by ミストラル (2011-08-03 00:15) 

ずぅ

なるほど・・・
水族館という存在そのものが生き物なんですね・・・
大震災で、ここも、一度、死んでしまったのかもしれません・・・
力強い復活をさらに願いましょう☆
by ずぅ (2011-08-10 20:47) 

ミストラル

>ずぅさん

絵画に例えられる水槽ですが、壁に掛けた時点で完成の絵画とは違い、完成するまでに時間がかかるのが水槽展示だと思います。
アクアマリンの美しさは、あの建物と時間が作り出した芸術でしたからねぇ…

ずぅさんが仰るように、本当の意味での復活を祈らずにはいられません。
by ミストラル (2011-08-11 21:48) 

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