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沖縄美ら海水族館 メスのジンベエザメ死亡【訃報】 [サメ]

沖縄美ら海水族館では雌雄2匹のジンベエザメを展示していたが、その内のメスの状態が悪化し、治療のため6月12日、海上生け簀へと移動されていたが、17日、残念ながら死んでしまったらしい。

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死んでしまったメス個体。全盛期? な2015年。

以下、美ら海水族館HPより引用

本個体の死亡について

海上生簀へ移動後も獣医チームを中心に最善の治療を続けておりましたが、残念ながら死亡が確認されました。
【剖検結果】
■飼育年数:13年2ヵ月(予備水槽での飼育期間含む)
■死 亡 日:令和3年6月17日(木)
■死亡原因:詳細に剖検を行った結果、上下顎を支持する舌弓の骨格系である基舌軟骨および角舌軟骨と神経頭蓋前部腹面が上方に著しく傾くことで開口幅が制限されるなど、骨格構造に異常*が確認されました。
過去の飼育記録より、水族館での飼育開始以前に外的要因による異常が発生し、成長とともにこれらの変形の悪化が進行、摂餌障害を引き起こしやすい状態だったと考えられます。
また、生前より超音波画像診断で胃と腸を繋ぐ幽門部の通過異常が確認され、剖検では顕著な捻じれの異常があることが分かりました。
これらの症状により、取り入れたエサが消化器官内で停滞し、十分な量の栄養を腸で吸収することが困難であったことが示唆されました。
当館では、さらにCT等の画像診断による詳細な分析を進め、科学的知見の収集と情報の共有に努めてまいります。
本個体は、日本国内で最も長く飼育されたメスのジンベエザメ個体でした。当館での13年間の観察を通し、多くの新知見が得られ学術論文で公表されるなど、繁殖生理や生態の解明に大きな貢献をしました。
沖縄美ら海水族館では、今後もジンベエザメの生態や生理学的研究を通して、本種の繁殖や保全に寄与していきたいと考えております。
*Harvey?Carroll et al. (2021)で報告されたblunt trauma (鈍的外傷)と同様の症状

https://churaumi.okinawa/topics/1623465430/

この個体が大水槽に搬入されたのは2012年10月23日。オレが初めて見たのはその4ヵ月後の2013年2月。
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その時の大きさは5.8m。頭部が少ししゃくれたような形をしている分かりやすい身体的特徴があったことから、個人的に“スプーンヘッド”と呼んでた。
どこかにぶつけた? みたいな違和感がある体型ながら、スプーンヘッドなジンベエザメは、この個体以外にも写真などで見たことがあったから、そういう体型の個体もいるのだろう、その時はそう思ってた。
発表された解剖結果を見ると、やはりあの特徴的なスプーンヘッドは正常な状態ではなく、それどころか死亡につながる理由のひとつだったようだ。

大水槽に搬入された“スプーンヘッド”は、ものすごい勢いで餌を食べ、ぐんぐん成長していった。その頃は見る度に大きくなっていて、毎回のように驚かされていた。
それを裏付けるかのように食欲も凄まじいほどで、ずっと大きいジンタ(オス個体)と同じ量の餌を食べていたらしい。
だからその頃の“スプーンヘッド”はふっくら丸々としていて、大きなジンタが細長く見えたくらい。メスらしい体型ってことなのかなぁ? とか思って見ていた。
水槽にはもう1匹メス個体がいたが、どことなく控えめな感じのその個体に比べると、この“スプーンヘッド”は餌へのがっつき方なんかもイケイケな感じ。
ちょうどその頃に性成熟に達したジンタもそんな“スプーンヘッド”がお気に入りだったようで、自分よりずっと小さく、まだ性成熟にも達していないのに追いかけまわしてた。
その追尾、場合によってはかなり激しいものだったらしい。

しかし、2018年頃だっただろうか。痩せが見られるようになってきた。
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餌の時間になっても水面に上がってくることをせず、反応を見せなくなった。
オレが給餌の瞬間に立ち会うなんて、1年の内せいぜい10日くらいのものだが、その間、いつ見ても餌を食べるところが見られない。
聞けば、摂餌にムラがあり、食べる時もあれば、食べない時もある。食べない時はしばらく続くこともあるし、食べても少しだけ食べて止めてしまうとか、そんな感じだったらしい。
ジンタのしつこい追尾のストレス? なんて想像したりしていたのだけど、どうやらこの頃から死因のひとつである消化器系の問題が顕在化しつつあったのかも知れない。

2019年になると、痩せはさらに進行。もう著しく痩せ細った、みたいな状態。
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げっそりしたオタマジャクシみたいな体つき。体側のキールに沿って、深い溝ができるみたいな、見るからに不健全な姿。
痩せて頭ばかりが目立つフォルムになってしまったせいか、はたまた傾きが進行したのか、この頃になるとスプーンヘッドがより際立って、まるで体が折れてるみたいに見えてしまうのが痛々しかった。
2019年はついぞ1度も餌を食べているところを見ることはできず、以降、顔見知りの飼育スタッフ氏や解説員氏と顔を合わすと、挨拶のように“餌食べた?”と尋ねるのが恒例となってしまっていた。
しかし、2020年にはオレの見ている前で餌を食べたのだ。
相変わらずげっそり痩せてはいたけれど、1日3回ある給餌時間のいずれの時もちゃんと浮上し、与えられた餌をしっかり食べる姿を見せてくれた。
かつてのような垂直の摂餌姿勢こそ取らないものの、かつての姿を見るような餌に対する集中力(執着?)で、本当に安心したし、良かったと思えた。
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このまましっかり食べ続けてくれれば、またかつての姿を取り戻してくれるはず、そう思ってた。
しかし、結果は残念ながら……

彼女を死なす理由にもなった“スプーンヘッド”は、他の個体と明確に見分けることのできるこの個体ならではの個性となっており、だからこそ愛着を感じていたところもあったと思う。それだけに死んでしまったことはひたすら残念でならない。
また、性成熟が近いとされていたことも残念さをより強くする。その先にある繁殖生態の解明の糸口になるかも知れないと期待されていた個体でもあったのだ。
仕方がないこととは言え、それが失われてしまったことは、美ら海水族館に所属する研究者諸氏を大きく落胆させただろうと想像するが、死後もその原因の解明だけでなく、そこから分かったことも多分、少なくなかったのだろうと思う。
そういう意味では、我々人間がジンベエザメという魚に対する理解を深めるのにものすごく貢献してくれた個体だったとも言える。

以前のことを思い出しつつこのブログを書いていたら、かつて話を聞かせてくれた水族館の飼育スタッフ氏の言葉を思い出した。

「長く飼われているけど、簡単に飼えてる訳じゃないよ」

ジンベエザメの正しい飼い方なんて誰も知らないのだ。そもそも、そのジンベエザメ自体がまだまだ分からないことだらけの存在なのだし。
美ら海水族館に行さえすればその姿を見ることができていたから、いるのが当たり前のつもりになっていたけど、“いてくれてありがとう”だったんだなぁ、と失われた今になってあらためて思う。
残ったジンタにはこれからも元気でいてくれることを願わずにはいられない。
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ようやく再々オープン!? 板橋区立熱帯環境植物館 [水族館紀行]

4月20日、半年と少しの休館期間を経て、板橋の熱帯環境植物園がオープンした。

ところで、ここの施設、入り口に「板橋区立熱帯環境植物館」と書いてあるから、それが正しい名称なのだと思うのだけど、以前は板橋グリーンドームねったい館と書いてあったよね? リニューアル休館に合わせて名称もお堅い感じに変更した!?
グリーンドームねったい館の方が覚えやすいし、親しみもあったんだけどなぁ……
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それはともかく。
4月20日にオープンしたというのに、26日からコロナ禍による休館。新装オープンから営業したのはたった5日。ここに限った話ではないけれど、気の毒な話……
6月1日より再々オープンを果たしたそうなので、4月の5日間に間に合わなかったという人はようやく見に行けるようになったという訳だ。とは言え時節柄、まだ行きにくくはあるけれど。

オレはというと、4月の5日間の間に行くことができた。なので、このブログはその時見たもの。それからひと月以上が経過しているので、展示はオレが見た時とは色々変わっているのだろうと思う。ここから先はそのつもりで見て欲しい。

結論から言うと、リニューアルという言葉からイメージするほど大きな変化はない。
もちろん、細かく見て行けば“あっ、ここが変わってる!!”と気付く部分はあるのだけど、頻繁に足を運んでる人とか、その部分に強い関心があった人しか気付かないくらいの変わり方。休館前の状態が好きだった、という人でもさほど違和感なく楽しめると思う。

温室内の池水槽にしても、分厚く敷かれた底砂利が少し浚渫されたようで、アクリル面向かって右側、陸地に向かって斜面状になっていた砂利は大きめに削られ、エイの遊泳スペースが少しだけ広げられている。
また、以前は給餌時間にしか姿が見られなかったボルネオカワガメの隠れ家がなくなったのか、常に見える位置にいるようにされていた。
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エイやカメ、その他の魚たちも基本的に休館前と変わらない顔ぶれ。まだ小さなシルバーバルブが群れで追加されたことくらいが変わったくらい。
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それにしても、エイが無事に戻ってきてくれたことは本当によかった。
2度の引っ越しや、それまでとは違った環境の休館期間中とか、結構真剣に心配してたんだけど、元気そうな姿が見られたので、その時点で久しぶりの板橋訪問の1/3くらいは目的が達成された。
今や新たな個体の導入が期待できない魚になってしまった以上、この個体にはこの先も長く生き続けてもらわなければ困るからだ。
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それ以外の水族館部分についても、大きな変化はなかったと言っていい。
ただ、壁面に並ぶ水槽の一番階段寄り、以前はタカアシガニなどが入っていた水槽がハタの幼魚をメインとする水槽に展示替え。
個人的にハタは好きな魚だから、この変化は歓迎したいところ。見ていても楽しかったし。
ハタ水槽の話も続けようかと思ったけれど、オレが見てから1ヵ月以上が経過した今、同じ顔触れのまま水槽が続いているのか定かではないので、どうしようかなぁ、と。
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それ以外の水槽に関しては、劇的な変化こそないものの、魚の数が減っていたり、コケ汚れがそのままになっていたり、むしろ、休館前よりもパワーダウンしてしまったような水槽もいくつか。
4月26日以降の再休館でそれらは改善されてるかも知れないが、オレが行った4月20日前後はそんな感じだったのだ。
そういう部分に手を入れるための休館期間じゃなかったの? と思っていたので、少々意外に思った。
6月1日から再々オープンしてるそうだが、次に見に行く時には、きっと見違えるようになっているはず、と期待したい。

植物園部分にもいくつか変化が見られたが、それはここでは書かない。
ただ、個人的に毎春楽しみにしているヒスイカズラの花が見られるかもと楽しみに出掛けたのだけど、ヒスイカズラが絡みついてるパーゴラが改修されており、その影響か花はなく、残念ながら2年続けて見ることが叶わなかった。

再々オープンを聞き、また行きたいと思ってはいるものの、ここの施設、ウチからだと同じ都内の移動ながら結構な時間が掛かる。
隣県にあるカワスイなら、ここに行く半分未満の時間で行けるが、県を跨いだ移動を自粛するよう言われているからそれも避けてる。
カワスイがダメならもっと遠い板橋はダメだろう、と足が向きにくくなっているのだけど、そろそろ行きたいなぁ。
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