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北の大地の水族館館長と行く、カラフトマス観察会 [淡水魚]

そんなイベントがあったという話ではなく、便宜上付けた仮のタイトルなので誤解のなきよう。

9月にサケの遡上を見に行く。このブログでも度々書いてる話だが、その目的の大きな部分を占めているのがカラフトマスだ。
それを知ってる北の大地の水族館のイケメン館長こと山内館長に

「カラフトマス見に行くなら、ポイント教えますよ」

と、ありがたいお声掛けをいただいた。

聞けば、常呂川水系に、館長が日々、観察している川があるのだという。
常呂川水系のカラフトマスと言えば、千歳水族館でも展示される個体群で、選別はされているのだろうけど、大きく立派な個体が多いというイメージがあった。
そこで、今年の標津遠征に合わせて、教えてもらったポイントにも行ってみることにした。

山内館長のTwitterなどでは、教えてもらった場所で撮られたものなのだろう。川を遡上するカラフトマスの姿が度々アップされており、何ともワクワクさせてくれたが、反面、不安もあった。
知らない場所でちゃんと見られるのか、ということもさることながら、何よりクマに遭遇してしまうのでは、という心配があったからだ。
何しろ、サケが遡上する川だからね。

そんな時、願ってもないチャンスが訪れた。
山内館長が同行者を募って観察に行くという。
渡りに船とばかりに、そこに混ぜてもらった。今回の北海道はいろいろツイていた!!

案内いただいたのは、常呂川の支流の小さな川。
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川の周辺は河畔林に覆われていて、GoogleEarthでは確認できなかった訳が分かった。
場所を聞いていたとは言え、地理感のないオレには辿り着けなかっただろう。案内してもらえて良かった!!
土手を降り、川辺まで行くと、目の前にカラフトマスの姿が!!
こんなにあっさり見られちゃうの!? というくらいすぐそこに、人が近寄ってきた気配でバシャバシャと泳ぎ去っていく姿が見られた。
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これまで標津川や千歳川で遡上サケの姿は何度も見てきたが、それらは水量のある川を泳いでいる、遡上途中のもの。
今回、山内館長に案内していただいたのは、彼らが目指す“最終目的地”たる繁殖地。
何度も見てきたつもりでいたサケの遡上だが、自然繁殖地を見るのは初めてだ。

そのまま館長に付いて川を歩いていくと、そこら中にカラフトマスがいて、メスをめぐるオス同士の争いとか、人の姿に逃げ惑う姿、メスが掘った産卵床、そして産卵を終え埋め戻されたと思しき跡など、“カラフトマスの一生の総仕上げ”がそこかしこで見られた。
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同時に、繁殖を終えた亡骸もそこら中に転がっていて、中にはまだ辛うじて息はあるものの、今まさに事切れようとしているものも多く、中でもメスは腹部がペナペナになっていて、“本懐を遂げた”ことを窺わせる。

川は浅く、特に浅いところでは水深10㎝ほどしかない。
そんなところを泳いでいくのだから、当然、セッパリになったオスは背中のほとんどが水から出てしまう。
そのため、ほとんどのオスの背中は、白く傷んでいて、酷いものでは乾き始めているものさえいて、遡上の過酷さを物語る。
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水から出た背中は抵抗も大きいようで、メスより格段に動きが悪い。クマなどの捕食者にも捕まりやすいのだろうし、まさしく命掛けの繁殖活動であることが見て取れた。
実際、クマの食痕だという、頭だけが噛み千切られたような死骸がその辺に転がっていた。
沢山いて、簡単に獲れるため、好きな部分だけ齧っていくのだそうだ。

やっぱり、クマいるんだ……
その時は、オレを含めて8人いたので、さほど不安に思うこともなかったけれど、歩いていった先には、その辺に血が飛び散ったとびきりフレッシュな食痕も転がっていたので、どうやらクマはすぐその辺にいたらしい。幸い、遭遇はしなかったけれど。
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そこら中に転がる死骸は、クマに齧られたもの以外にも、鳥につつかれたものや、蛆にまみれたものなど様々。
腐臭を放つ死骸の横で、産卵地に向かい力強く遡上していく新手の個体、産卵場所やメスを巡る争いが繰り広げられていたり、はたまた、その卵を狙ってウグイやイワナが集まっていたりと、まさに“生と死”が現在進行形でその場に混在していた。
その場の住人ではないはずのオレにも、ヨレヨレになった個体が水流に押し流されて足にぶつかってきたり、辺りに漂う死んだ魚の臭いとか、そこにある“世界”が降りかかってくるようで、まさに全身でそんな世界を味わってきた。
流れる川は、視界を遮る河畔林によって人の世界と隔絶されたかのようで、再び土手を上がり、川から出た後は、異世界から戻ってきたような気さえしたくらいだ。

その場に行ったからこそ味わえた圧倒的な世界。
水族館のクリアな水の中を泳ぐ姿を眺めるのもたまらなく魅力的だが、彼らの世界にお邪魔して見る“本来の姿”もまた、とんでもなく魅力的でとにかく素晴らしかった。
“素晴らしい体験”そんな陳腐であっさりした感想で終えてしまうのも何だが、素晴らしいのだから仕方がない。
とは言っても、勝手の分からない場所で色々としっかり見られたのは、その場をよく知るガイドがいたからこそ。ご案内いただいた山内館長にはただただ感謝するばかり。

今回の観察会は完全に館長のプライベートだった訳だが、館長の気が向いた? とか、水族館のプログラムとして成立すると判断されたとか、みたいなことがあれば、イベントとして開催されることがある!? かも知れない??
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サケ遠征2019@標津サーモン科学館 [淡水魚]

どこの水族館も混雑する夏休みシーズンは、即ち水族館のオフシーズン。
そのオフシーズン明け最初に向かう水族館は、標津サーモン科学館であることがここ数年、恒例になっている。
もちろん、サケ(カラフトマス)の遡上という目的があるからだが、例年は9月に入るとすぐに行っていたが、今年は他の仕事の兼ね合いもあって2週目と、いつもより遅い訪問となったが、結局、他の水族館で下半期のスタートをすることなく、例年通り標津でのスタートとなった。
時間的には余裕があった反面、カラフトマスが終わってしまわないかと少々気が急いた。

今年も大雨の影響で魚道水槽が開くタイミングが遅く、また、開いた後も標津は雨がちの天気が続いていたようだ。
オレが行った日も、飛行機の中で「現地の天候は雨」とアナウンスされた。
しかし、雨で川の水量が増えれば、遡上は活発になる。
実際、行く日の朝、サーモン科学館のFacebookでは、かなりの数が魚道水槽に入ってきていることが伝えられていた。

が、空港へ降りたってみると、晴れてる。いきなりのラッキー。
空港でいそいそとレンタカーをピックアップし、サーモン科学館へ。
到着するや否や、すぐさま標津川の観覧橋へと急いだ。
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いる!! かなりの数がいる。
初めて見る訳でもないし、同じ場所から同じような光景はこれまでも見ているはずなのに、シーズン最初に見るこの光景はやはり最高だ。
とは言え、オレも贅沢? になっているようで、そこにいるのがたった1匹でも、遡上サケを見るという目的は達せられるはずなのに、実際は、1匹と沢山とでは、得られる満足感に大きな差が出る。
やはり、沢山いると無条件に嬉しいものだ。

意気揚々と入館、魚道水槽へ向かうと……
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スゴイ!! 沢山いる!!
2015年から5回目だが、一番多いかも!? と思うほどの数だ。

その場にいた館長に、凄いですね!! 今年は大当たりじゃないですか!? と言うと、
「それがそうでもなくて、海でもあんまりよくないんですよね」と浮かない顔。
海での漁獲量と川への遡上数はリンクしていて、どちらかだけがいいということはないらしい。だから、オレの目の前で群れ泳ぐサケは単なる偶然だったようだ。

だけど、オレが来た日にそんな偶然が起こるのなら、ラッキー以外の何物でもない。
2016年、2017年と2年続けて空っぽの魚道水槽を眺めたオレへのボーナスみたいな話と受け止めよう(笑) これで借りは返せたかな?

翌日も変わらず、川も魚道水槽もサケでいっぱい。
シーズン初期は5年魚が多いそうで、そのためか体が大きな個体が多く、しかもイケメン率も高め。
やっぱり、見るにしたって、イケメンオスがいいものだ。カッコいいからね。
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今回訪問時は、これも偶然だったのだろうけど、研修や遠足が多かったようで、水槽前ではそんな学生たちに向けた副館長の解説が聞こえてきていたが、その中で、雌雄は脂ビレの大きさで見分けましょう、と説明されていた。
繁殖時期のサケの雄雌なんて、見間違わないだろう、と思っていたのだけど、目の前に次々とやってくるサケたちを見ていると、オスっぽい色をした大きなメスがいたり、その逆がいたりと、確かに見た目だけでは見間違うようなものもちらほら。
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脂ビレ、ちゃんと見なきゃダメかも、と改めて思わされた。

2011年に初めてサケの遡上を見て以降、オレのサケ・スキルは結構上がっているような気がしていたが、まだまだ発見も多くて、やっぱり面白れぇなぁ、と、魚種としてのサケの魅力により一層引きずりこまれるようだった。

ただ、気になったのは、例年は多少でもいるはずのカラフトマスの姿がほとんどいなかったこと。
2日めにようやくその姿を見掛けたが、ほんの数匹しかいない。
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オホーツク海側の河川にしか遡上しないカラフトマスは、オレにとっては超エキゾチックな存在であり、標津まで来る大きな理由ともなっている。
それがほとんどいないとなれば、オレ的には大問題なのだけど…… 今年はそれについても余裕があった。
その話はまた次のブログで。

オレが標津を離れた翌日、標津川にあれだけいたサケはほとんど姿を消してしまったらしい。
自然の生き物のことなので、条件やラッキーなども必要だが、標津に行った時のオレには、そのどちらもがあったらしい。
ホント、いい状態を楽しむことができた。

来年もまた、こんな好条件に恵まれると良いのだけれど……
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