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水族館にジンベエザメは必要なのか!? [雑談]

水族館プロデューサーの中村元氏は言う。
「水族館に魚を見に来ている人なんていない」と。

魚が好き。
そもそもそれが水族館に行く原動力となっている魚好きとしては、受け入れたくない言葉だけれど、でも、水族館で他の観客を見ていたりすると、「そうなのかもなぁ」とか「そうなんだろうなぁ」と中村説にも納得できてしまうのだ。
大抵の人は、水槽の前で長くて5分。目の前の魚を魚名板と照らし合わせると、その場から立ち去ってしまう。
このブログを始めたのも、そんな人たちに「目の前にいるその魚、凄いんだぜ!!」と言いたいがため、みたいなところもあったくらいで、水族館の魚をちゃんと見る人っていうのは、残念ながら本当に少ないのだ。

しかし、そんな人気薄の魚の中でも、ジンベエザメだけはちょっと違う。
その名前で客を呼べる、唯一と言ってもいい魚だ。
最大の魚というステータスもさることながら、目の前を巨大な魚が泳ぐのを目の当たりにすると、誰もが感動し、喜びの声を上げる。
4m少々の小ぶりな個体でもそうなのだから、水族館からすれば、それを展示したい!! と考えるのは当たり前と言ってもいいくらいの話なのだろう。

しかし、ジンベエザメならではの魅力である巨大さは、展示する上では最大の障害だ。
超巨大水槽を作れば飼育、展示は可能だが、その建造費用、そしてその後のランニングコストなど、とにかく膨大な資金が必要となる。
100以上もの水族館がある日本でも、ジンベエザメを飼育、展示しているのはたった5館(現在は4館)しかないのは、そういう事情だ。

先日、その5館の内の1館であるかごしま水族館で、飼育されていた個体が死んだ。
放流を目前に海上生け簀へと移動後、死んでしまったのだそうだ。
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※かごしま水族館のジンベエザメ水槽。今回死んだのは写真の個体ではありません※

かごしま水族館では放流を前提としたジンベエザメの飼育、展示を行っている。
現在、主流となってしまっているその方法を考案し、実行している最初の水族館でもある。そのため、一時的な飼育、展示、そして放流という展示法を「かごしま方式」と名付けていたりする。

でも、水族館が飼育している魚を放流するのってどうなの? と思う。
手持ちの水槽で飼いきれないから、一時的に飼育して、大きくなったら海に放流する。
それでは、アリゲーターガーやミドリガメなどを自然下に遺棄する無責任な飼い主と違わないじゃないか!! と思うのだ。
飼うことができる入れ物がないのなら、飼うべきではない。
これは一般飼育者だけでなく、水族館でも変わらないことのはずだ。

それもないのに飼育を始めて、死なせてしまったのが10月の下田海中水族館であり、5m超の魚を水槽から取り出して、移動するなんて、リスクもコストも高いことをしなくちゃならないのが、今回死なせたかごしま水族館や、のとじま水族館。最近では海遊館もそこに含まれるのかな?
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魚の移動、それも大きいものになればなるほど、そのリスクは高まる。
水中で暮らす魚は、陸に揚げてしまうと自分の重さで内臓に負担が掛かり、それが原因で死んでしまうことも多い。
重くて運びにくいのに、水ごと運ばなくてはいけない理由もそこにある。
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のとじま水族館のジンベエザメ水槽

また、環境の変化も、魚には少なくない影響を及ぼす。
自然の海では、何が起きるか分からない不安定さもある。台風が来たり、大荒れになることだってあるだろう。
今回、そして以前に死んだかごしま水族館の個体、そして、以前放流時に死んだのとじま水族館の個体は、このあたりが死なせてしまうことになった理由だ。

もう、こういうの、止めませんか?

勘違いして欲しくないんだけど、オレはジンベエザメの飼育、展示自体には反対じゃない。
どこかに搬入される度に見に行っているくらいで、それが見られることは嬉しいし、ありがたいと思っている。
でもね、その扱い方も、飼い方も、ある程度以上分かっていて、設備さえ用意すれば、“飼える”生き物になっているはずのジンベエザメを、人の都合のつまらない理由で死なせ続けてしまうのは、水族館がすべきことではないと思うのだ。

かごしま水族館はこうも言ってる。
“水族館としても「客寄せのためにジンベエザメでも展示しよう」といった安易な考えを持つことは許されないでしょう。”とね。

ジンベエザメを展示しようという計画があったのに、結果的にそれが飼える水槽を作らなかった。それはもう飼育自体を諦めるべき話なのだと思う。
しかも、同じような失敗を何度か繰り返しているのだから、なおさらでしょう。
ジンベエザメなんかいなくても、魅力的な水族館であることはできるはずだし、実際にそういう水族館だって沢山ある。

もちろん、それはジンベエザメに限った話ではなくて、大きくて目立つ存在だから、より強くそう思うだけで、どんな生き物だって基本は同じ。

沖縄に行かなければジンベエザメが見られなくなる?
それでもいいじゃないですか。
人の都合で狭い水槽に押し込めているのだから、それが見たければそのくらいしたっていいと思う。
それこそ海の中で見ようと思ったら、費用だけでなく、運も必要になるけれど、とりあえず沖縄に行きさえすれば、いつでもちゃんと見られるんだからね。
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水族館ファンとしては、こんなこと、書きたくはなかったんだけどなぁ…
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ジュンイチ

一つの水槽の前で数十分~数時間、場合によっては半日以上とか丸一日、魚と同じ時間を過ごせてしまう側の人間としては「スケジュール等の制限がないなら、チラ見で済ませるのはもったいないなあ」と思ってしまうんですが、しょうがないと言えばしょうがないのかも知れませんねえ。

ジンベエザメですが、最近は美ら海水族館以外の施設での死亡事例が明らかに増えているように感じられます。それも寿命を全うした個体が皆無の状態で。

海遊館の太平洋水槽も「世界最大級」とうたわれていましたが、それはあくまで'91年当時の話であり、しかもその時点から「ジンベエザメの終生飼育にはこれでも小さいのではないか」という懸念はあったようです(※当時の新聞記事より)。水槽を拡張する案もあったみたいですが、あくまで案止まりで、あらゆる点で現実的ではなく実行には移されませんでしたね・・・

海遊館自体は最寄りということもあり、個人的に好きな水族館なのですが・・・近年まで飼育されていた「海遊館でしか見られない魚たち」が次々といなくなってしまったことに伴い、以前に比べ魅力が激減してしまったと感じられるのが現状です。たとえジンベエザメが展示されている期間中だとしても、です。

沖縄は正直そうそう行けるところでもないですが、その一方で気候や潮回りなど自然の条件にかかわらず、なおかつスキューバの資格等を持っていなくても状態の良いジンベエザメの大型個体が確実に見られるということを考えると、そこまで出向くのに必要な時間と費用は必要経費の範疇であり、なおかつそれを払うに十分な価値があると言えますよね。

テーマが深く重いだけに、記事としてアップされる時には様々な想いがあったかと思われます。何度も感じ入りながら、、じっくり読み返させて頂きました。
by ジュンイチ (2014-11-28 00:16) 

ミストラル

>ジュンイチさん

まずは、賛同いただきまして、ありがとうございました。
同様の賛同を多くいただきましたが、オレと同じように感じた水族館好きが多かったことは驚きと同時に、非常に心強く思えました。

魚が好きで水族館に行く、という人は意外なほど少数派なようです。
もったいないですよねぇ。
もっとも、そう思うのも、オレやジュンイチさんが魚好きだから、なのでしょうけど。

飼育下で寿命をまっとうしたジンベエザメは、まだ1匹もいないと思います。そもそも、何年生きるのかさえ分かっていませんからね。
海遊館の水槽も、あんな十字型ではなく、普通の四角形なら、もう少し大きくなるまで飼えたのかも知れません。
でも、あのサイズの水槽でも終生飼育はできない、ということが分かったお陰で、美ら海水族館の水槽サイズにも影響を与えたのではないかと思います。
そういえば、海遊館は最近、ブログなどに登場するのが小動物ばかりなような印象で、海遊館ならでは、は言われるように減っているのが残念ですよね。
by ミストラル (2014-12-01 00:00) 

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