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太地町立くじらの博物館の激レアイルカ [鯨類]

水族館好きの知人に、太地町のくじら博物館に行くと話したら
「はるかがいなくなって残念だね」と言われた。

たった1頭しかいない、きわめて貴重な変異個体だったから、確かに残念ではあった。
でもオレは、そうした希少な変異個体よりも、その種類本来の魅力をしっかり伝えてくれるような、極上のノーマル個体の方が好き。見たことのない種類が多い鯨類なら、まだ見ぬ種類に会える方が嬉しいかも知れない。
くじら博物館には、そんなオレにとって、“はるか”以上に見てみたいものがあったのだ。

それがスジイルカ、マダライルカのStenella属の2種類。
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スジイルカ
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マダライルカ

今回の紀伊半島遠征の大きな目的でもあり、特にスジイルカは前々から見てみたいと思っていたもののひとつだった。
腹ビレイルカのように、この世に1頭だけ、というものではないものの、現在飼育下にあるものはこの1頭だけという大変珍しい種類で、くじら博物館でしか見られない。
ほぼ全世界に生息していて、太地では追い込み漁による捕獲対象種のひとつでもあるのに、どうしてどこの水族館にもいないのか。
その理由は、“飼えない”種類だから。
美ら海水族館元館長の内田詮三氏の著書でも、イトマキエイやオサガメと共に、水族館での飼育に向かない例として紹介されていた種類で、一部のサメなどと同様、飼育を受け付けにくい、というか受け付けないと言った方がいいかも知れない種類なのである。
その本には、水から上げるとショック死してしまうことがある、と書かれていた。

飼うのが難しいイルカ、というのが常々疑問だった。
水への依存度が高い魚類ならば、水質に極端に敏感だったり、能力的に壁が認識できないものがあるのも分かる。しかし、そこは哺乳類で魚類よりも高い知能を持っているはずのイルカである。
水から上げるのが問題なら、水から上げずに移動すれば済む話なのでは? 実際、美ら海水族館で飼われているミナミバンドウイルカは、最初、そのように移動していたという。
そこで、何がどう難しいのか聞いてみた。

スジイルカやマダライルカの飼いにくさは、神経質で環境の変化に弱いのが最大の理由らしい。
プールへ無事移動できたとしても、閉鎖環境に対応することができず、泳げなくなってしまうのだとか。バンドウイルカなどに比べると、より沖合で生活している種類なようだが、まさに外洋性種らしい反応だ。

環境を認識し、そこで泳げるようになったように見えても、突如泳げなくなったりすることもあるらしい。イルカの場合、泳げなくなる=溺死であるからして、搬入後しばらくは24時間体制の監視が必要なのだそうだ。
そうして無事、プールに順応できても、これまでは短命に終わってしまうことが多かったそうだが、現在飼育中の個体は既に1年以上が飼育されているという。

マダライルカに至っては、2頭いる内の1頭は5年以上も飼育されているそうで、夏休みシーズンなどには、ショーに登場したりすることもあるのだとか。
現在は3頭とも、ショーなどには出ていないがトレーニングは続けられている。種類による差よりも、個体の性格など、個体差による部分が大きいトレーニングについては、スジイルカだから、マダライルカだから難しい、簡単、ということはないようだ。

スジイルカはこれまで飼育されたものも少なく、長期飼育に至っているのは現在飼育中の1頭のみなので、それがこの個体ならではのものなのか、種類によるものなのかの判断が難しいとのことだが、マダライルカはバンドウイルカ以上に人に懐きやすい種類らしく、ふれ合いなどにはより向いているかも、と話を聞かせてくれたスタッフ氏。
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実際、マダライルカはプール前に立つオレの前にやってきて、口をパクパクさせていた。
1頭を構っていると、もう1頭もその間に割り込むようにやってきたりと、飼育スタッフ氏が言うように、かなりの“かまってちゃん”なようだ。

一方、スジイルカも短時間ではあったけれど、寄ってきてくれた。若い個体ということもあってか、かなり可愛らしい。
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飼育下にある世界唯一の個体だと思うと、非常に贅沢な気分になれる(笑)

どちらのイルカも、同属ということもあり、初めて見た時には、どちらがどちらだか分からないほどよく似ている。
スジイルカの方が名前通り、ライン模様が鮮明で、マダライルカの方が色が濃く、腹部に名前の由来ともなった斑点が入っていた。
見慣れたバンドウイルカよりも小柄で、体の作りもほっそりしている。吻もより細長く、その口の中には細かい歯が多く並んでいた。
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スジイルカはともかく、マダライルカはその飼育法が何となく確立しつつある? スタッフ氏の話は、そんな風に思えるようだった。
多くのイルカ好きは、こうした珍しい種類よりも、特定の個体を好む傾向が強いような気がするけれど、個体としての魅力も優れた3頭だったから、鯨類好きやイルカ好きには是非とも会いに行ってみて欲しい。
遠い太地まで行かなくては見られないが、その価値は十分にある。
くじら博物館ならではのスーパースターなのだからね。

※5/28追記
5/18にスジイルカ、マダライルカはマナリウムのトンネル水槽に移動になったとのこと。
http://kujihaku.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/3-a0ec.html
なお、5/16には新たなマダライルカ2頭が搬入され、トンネル水槽では珍しい5頭が泳いでいるのを観察できるようになったらしい。
これは素晴らしいことですな!!
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