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本場で見るとありがたみも違う!? 琵琶湖の魚 [淡水魚]

琵琶湖は言わずと知れた日本最大の湖であり、最大規模の淡水魚の生息場所でもある。
それだけに、琵琶湖やその水系には、固有の種類が数多く生息している。
今でこそ琵琶湖水系の魚たちも日本各地で見られるが、オレが小学生くらいの頃は、琵琶湖水系の魚は外国の魚にも等しいエキゾチックな存在であり、水族館か本でしか見られないものだった。当時は、井の頭公園の水生生物館でも琵琶湖の魚を展示しており、それを見に行くのが楽しみだったことを憶えている。

琵琶湖水系の魚は特殊なものが多い。
それ以外の地域で同じような種類が出現しなかったことが、琵琶湖の多様性と豊かさが飛び抜けていることを証明している事実と言えるだろう。
そんな琵琶湖が育んだ特殊な魚のひとつが、ハスだ。
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今でこそ関東の川などでも釣れるらしいが、オレのイメージでは“図鑑で見る魚”だった。
何がスゴイって、口に歯がないコイ科魚類ながら、魚食に特化した日本唯一のコイ科のフィッシュイーター。堰などをジャンプして飛び越えるほどの強い遊泳力で高速遊泳しながら、アユなどを補食する日本在来の捕食者だ。
その顔つきには、アマゾンのドラドを彷彿とさせる“嫌らしさ”があり、捕食者ならではの雰囲気に溢れている… のだけど、日本の魚らしく、サイズが小さい。
初めて見たのが大人になってからというのもあるが、“こんなに小さいの!!”と、ちょっとしたショックを受けたくらいだ。
琵琶湖博物館の水槽にももちろん沢山いたが、婚姻色も出ていない状態ではただの銀色の魚。よく見ればその顔つきも分かるのだけど、迫力を感じるほどではない。これで60㎝を超えるくらになるなら、ホント、カッコいい魚だっただろうと思うんだけどねぇ…

魚食に特化したハスと同じくらい特殊な存在といえるのが、ワタカだろう。
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実は小さい頃、そのエキゾチックな風貌から、もっともお気に入りの琵琶湖の魚がこのワタカだった。
草食性で水草などを食べるせいか、内臓の風味がいいらしい。それ故のワタカ(腸香)なんだそうだけど、オレは食べたことがないから、川で育ったアユの内臓のような風味かな? なんて想像している。だとすると、オレは好きじゃないかも知れない。
それはともかく、ワタカの何がスゴイか。
日本で唯一のクルター類なのだそうだ。クルター類とはCulter属を始めとした中国など大陸側で繁栄したコイ科のグループで、日本にはワタカのみ(ワタカはCulter属ではない)。その祖先は日本が大陸の一部だった時代まで遡ることになるようだが、日本が大陸と離れて以降、数多くいたクルター類は日本の短く流れが急な河川環境には適応せず、結局、残ったのは琵琶湖のワタカだけ。ということも琵琶湖博物館で知ったのだけど。
日本唯一のクルター類で、その他の日本のコイ科魚類とは異なる形質を持った魚、そんな風に聞くと、特別なもののように見えてくる。オレが小さい頃に感じたエキゾチックさも、そんな部分に由来したのかなぁ、なんて思ったり!?
このワタカも、今や日本の幅広い地域で見られるようになった反面、ワタカを育んだ本来の生息場所たる琵琶湖ではその数を減らしているらしい。

数が減っている琵琶湖特産の魚といえば、ニゴロブナも忘れられない。
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多分ニゴロブナだと思うのだけど… ちょっと自信ないです。

琵琶湖水系のフナというと、ヘラブナの名で知られるゲンゴロウブナもそれに相当するのだけど、今や琵琶湖の魚というイメージはない。しかし、このニゴロブナだけは相変わらず琵琶湖の魚だ。
何故なら、ふなずしの材料となるこれまた唯一の存在だから。
ふなずしは食べたことがないし、クセのある発酵食品という性質上、多分、オレは食べられないと思う。でも、何種類もいるフナの中で、この種類だけが素材に使われるということは、やっぱり美味しいからなんだろうね。だったら何で塩焼きで食べないのかは不思議な所。そのままだとマズイのかな?

関東の川で釣れる、という話は聞かないけれど、移入されない理由はあるのだろうか?
はたまた、琵琶湖水系以外では住めない理由があるとか!?
見た目は普通にフナ。言われなければ分からなさそうだけど、言われれば何となく違うことが分かる。そんな魚だ。

似たような魚が他にもいる特産種は、ビワマスもそう。
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高温に弱いマス類ながら、水温が通年低い深部を生活圏にすることで琵琶湖を生活の場所としている。湖底に多くいるヨコエビ類を多く食べていることから、オレンジ色の身(サケの切り身の色)をしているらしい。
生きた姿を見るのは、恐らく初めてだろうと思う。
臨時で展示されていたと思しき2匹の成魚は、狭い水槽に入れられており、吻先が潰れてしまっていたりなど、綺麗な状態ではなかったが、ビワマス専用の展示水槽で泳いでいた若魚たちは綺麗だった。飼育下のマス類は体形が崩れているものが多く、見ていて気持ちのよくないものも多いように思うのだけど、流石に本場だからか、水槽内にひしめくほど沢山いるにも関わらず、どの個体も綺麗な体型を維持していた。
もしかすると、流れのない湖という環境に生息する種類のため、止水(水槽)飼育にも適応しやすいのかも知れない。

サケ科の魚は似たようなものが多く、個人的に馴染みも薄いことから、各種の見た目の特徴はほとんど頭に入っていない(つまり、クニマス発見に貢献したさかなクンのような活躍はできないってことだな・笑)のだけど、初めて見たビワマスは、若い個体はヒメマスに、婚姻色が出た成魚はヤマメ(サクラマス)に似ているように思った。

余談ながら、このビワマス、大変美味しい魚なのだそうだ。
博物館で天ぷらになったものを頂いたが、揚げられてもなお、豊かな風味と引き締まった身の歯ごたえが美味しかった。もっとその魚本来の味が楽しめる方法で、もう1度味わってみたいと思わされた。
ビワマスに関しては、水族館展示のみならず、博物館展示の方でも様々な形で知ることができるので、より多方向から理解を深められるように感じたのも、この博物館ならではの部分と言えるだろう。

ビワマスと同じく、名前にも琵琶湖がつけられた、琵琶湖を代表する魚と言えば、やはりビワコオオナマズを外すワケにはいかないだろう。何せ和名だけでなく、学名にまで琵琶湖の名が冠されているんだからね。

本場にも関わらず、展示されていたのは3匹。だが、その内の1匹は珍しいアルビノで、トンネル水槽に。残り2匹も大きな専用水槽が与えられているという好待遇ぶり。
ビワコオオナマズを展示している水族館は他にもあるが、これほど贅沢な飼い方をしている水族館は他にはないはずだ。やはりそれも、本場ならでは、なのかも知れない。
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ビワコオオナマズは“オオナマズ”なんてついてる割には、世界的に見れば決して大きな種類ではない。博物館では、最大の記録とされている2.7mのものが模型で再現されていたが、それは4.5mのピラルクーみたいに“間違い”なんじゃない? と思う。
しかし、そんな大きさより何より、このナマズの魅力は顔つきにあるとオレは思うのだ。
先端に向かって低く尖ったような顔つきは、日本に生息するシルルス属のナマズとはかなり雰囲気が違っていて、ちょっとワラゴ・アットゥ的でカッコいいと思う。
この魚の生活史なども博物館で展示がなされているため、ビワマス同様、さまざまな方向から見て、知ることができるのだ。例えば、琵琶湖の底で主のように暮らしているのかと想像していたのだけど、実際は水温の低さを嫌って、あまり深い所にはいない、など。
いずれにしても、本場の博物館だからこそ知ることのできる話も沢山あり、ここは絶対に見逃せない魚だと思う。

この魚(個体)綺麗!! というだけの話ではなかったせいか、ブログもこんなに長くなっちゃったよ(苦笑)
好きで仕方がない魚の話ではないというのに。
でも、そんな所からも、琵琶湖博物館で見知ったことの充実ぶりが想像してもらえるんじゃないかと思うのだ。
日本の淡水魚が好きな人なら、是非、ゆっくり時間をとって見学に行ってみて欲しい。

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コメント 2

pomu.

幼いころから、川に住んでいる魚は全部「魚」でひとくくりにしてしまっていて、あまりよく顔も見たことがなかったんですが
こうやって見ると淡水の魚もそれぞれ、随分と違った顔ですね

帰省のたびに近くを通り過ぎるだけの琵琶湖
今まであまり興味を持ったことはなかったんですが、俄然興味がわいてきました

寒がりなビワコオオナマズにも会ってみたいです
冷え症同士(?)、気が合いそうに思えます♪
by pomu. (2011-01-13 18:26) 

ミストラル

>pomuさん

普通はそうですよね。
今回登場させたのは、かなり特徴的なものばかりを選んでいるので、顔つきも違っているように見えますが、川で泳いでいる魚は、どれも同じような顔をしてるようにオレも思います(笑)

琵琶湖はやっぱりスゴイですね。
魚はもちろんですが、琵琶湖を中心とした文化が構築されていて、
水は塩辛くないけれど、ちゃんと“海”として機能していたんだなぁ、
と思わされました。

ビワコオオナマズにも会ってみて欲しいですね。
オレ的には日本のナマズでもっとも“イケメン”だと思うので、
賛同してもらえるかどうか確認してもらう意味でも、ね(笑)
by ミストラル (2011-01-14 11:59) 

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