のとじま水族館の「ラナン」 もうひとつの人工尾ビレのイルカの話 [鯨類]
人工尾ビレのイルカといえば、沖縄海洋博公園にいる“フジ”があまりにも有名だ。
映画やTVドラマの題材になったり、他にもあらゆるメディアで美談の主役として登場している。
そんな超有名な「フジ」ほどの知名度はないものの、人工尾ビレのイルカがもう1頭いることをご存じだろうか?
のとじま水族館のカマイルカ、「ラナン」がそのもう1頭。
「ラナン」の存在は、トレーニングセンターの端にこんな案内がひっそりと出ているだけなのだ。
のとじまに行くなら、ジンベエザメ館と同じくらいに注目していた、個人的には是非とも見てみたい展示だった。
ラナンが暮らすトレーニングセンターでその姿を探していると、トレーナーが近くに来てくれたので、ラナンに会いたいことを伝えると、どの個体か教えてくれると同時に、色々話して聞かせてもうらうことができた。
ラナン
カマイルカは日本海で多く見られるイルカだそうで、のとじま水族館でも数多くが飼育、展示されていた。
定置網などで混獲されることも多いそうで、当然、怪我やキズを負って水族館へと運び込まれる個体も多く、ラナンもそうして運び込まれたものだったらしい。
だが、尾ビレに大きな怪我を負っていて、その怪我は完治したものの、壊死した尾ビレの両端が落ち、小さくなった状態で治ってしまった。当然、ジャンプはおろか、きちんと泳ぐことのできない体になってしまったのだ。
もちろん、水族館でなら、泳ぎが多少不自由でも生きていくことはできる。
しかし、やはり泳ぎが緩慢になったり、仲間とつるまなくなったりなど、イルカの健康状態を維持する上で、好ましくない状況、状態になるようなのだ。
そこで、のとじまでも人工尾ビレの装着を検討、実績のあるブリヂストンに打診してみたところ、快諾を得られたそうで、ラナンの人工尾ビレプロジェクトが始動。
だが、人による善意なんて当のイルカにはまったく通じない。それどころか、徹底的に拒絶し、人工尾ビレを装着して泳げるようになるまで4年もかかったのだそうだ。
イルカは見慣れないものを怖がるし、なおかつ体に何かを付けたりすることを嫌う。加えて、カマイルカはバンドウイルカよりも臆病だとも聞く。そんなカマイルカのラナンは、初めて見る人工尾ビレに怯え、以来、人に寄ってくることさえしなくなるほどの拒絶反応を見せたのだそうだ。
そこから、人工尾ビレを怖がらなくするトレーニングを開始すると同時に、尾ビレに何かを付けるというトレーニングも開始。
最初は薄いジャージ素材を取り付けることから始め、徐々に大きく、質量のあるものに変更していき、最終的に人工尾ビレを取り付けていく。だが、人工尾ビレを装着できるようになっても、装着すると尾を動かすのを止めて、泳がなくなってしまっていたそうだ。
そこから、人工尾ビレを装着して泳げるようになるまで、また1年、2年の歳月を必要としたという。
人工尾ビレ。写真は沖縄のフジのもの。ラナンもこれと同じカウル型を装着。
今では人工尾ビレを装着して泳ぐこともできるし、沖縄のフジがそうだったように、尾ビレを装着すると、小さい動きや急旋回など、イルカ本来の動きに近い動きを見せるのだという。もちろん、普通のカマイルカほどの動きや、高いジャンプはできないが、それすらもできるようになることを目指して、現在もトレーニングを重ねているのだそうだ。
だが、尾ビレを失ってそこそこ長い時間が経過しているためか、現在は人工尾ビレなしの状態でも、それなりに泳げるようになっているという。そんなところもまた、沖縄のフジと共通する、イルカが持つ順応性と、可能性を見せてくれたということなんだと思う。
人工尾ビレプロジェクトは、フジで一定の成果を上げており、それを製作したブリヂストンにもそのノウハウが蓄積されていただろうから、何もないところからチャレンジが始まったフジの時ほど大変ではなかったのかも知れない。
しかし、カマイルカでは初めての挑戦であることには間違いないし、それを付けて泳げるようになるまでの4年間は、それに携わる人にとってはあまりにも長い時間だったに違いない。そんなプロジェクトを今日の状態まで持ってきたのとじま水族館のスタッフ氏、そしてその成功のために、データやノウハウを提供した沖縄海洋博公園のスタッフ氏、そしてラナンのための人工尾ビレを製作したブリヂストンの3者には、心の底から敬意を表したいと思うし、これまた素晴らしい美談だと思う。
顔を出してくれないから、こんな写真ばっかり…
人工尾ビレを装着した状態は見ることができなかったが、ラナンに会うこともできたし、貴重な話もしっかり聞かせてもらうことができた。
それをここでこうして発表できたのだから、それだけでも、のとじま水族館まで足を運んだ価値、収穫はあったというものだ。
きわめて独りよがりなのは分かっているんだけど、ここでこんな話ができたことで、オレ自身もそんな美談の端の方に関われたような気分になれた。オレの大いなる勘違いなんだろうけど(笑)
にほんブログ村
映画やTVドラマの題材になったり、他にもあらゆるメディアで美談の主役として登場している。
そんな超有名な「フジ」ほどの知名度はないものの、人工尾ビレのイルカがもう1頭いることをご存じだろうか?
のとじま水族館のカマイルカ、「ラナン」がそのもう1頭。
「ラナン」の存在は、トレーニングセンターの端にこんな案内がひっそりと出ているだけなのだ。
のとじまに行くなら、ジンベエザメ館と同じくらいに注目していた、個人的には是非とも見てみたい展示だった。
ラナンが暮らすトレーニングセンターでその姿を探していると、トレーナーが近くに来てくれたので、ラナンに会いたいことを伝えると、どの個体か教えてくれると同時に、色々話して聞かせてもうらうことができた。
ラナン
カマイルカは日本海で多く見られるイルカだそうで、のとじま水族館でも数多くが飼育、展示されていた。
定置網などで混獲されることも多いそうで、当然、怪我やキズを負って水族館へと運び込まれる個体も多く、ラナンもそうして運び込まれたものだったらしい。
だが、尾ビレに大きな怪我を負っていて、その怪我は完治したものの、壊死した尾ビレの両端が落ち、小さくなった状態で治ってしまった。当然、ジャンプはおろか、きちんと泳ぐことのできない体になってしまったのだ。
もちろん、水族館でなら、泳ぎが多少不自由でも生きていくことはできる。
しかし、やはり泳ぎが緩慢になったり、仲間とつるまなくなったりなど、イルカの健康状態を維持する上で、好ましくない状況、状態になるようなのだ。
そこで、のとじまでも人工尾ビレの装着を検討、実績のあるブリヂストンに打診してみたところ、快諾を得られたそうで、ラナンの人工尾ビレプロジェクトが始動。
だが、人による善意なんて当のイルカにはまったく通じない。それどころか、徹底的に拒絶し、人工尾ビレを装着して泳げるようになるまで4年もかかったのだそうだ。
イルカは見慣れないものを怖がるし、なおかつ体に何かを付けたりすることを嫌う。加えて、カマイルカはバンドウイルカよりも臆病だとも聞く。そんなカマイルカのラナンは、初めて見る人工尾ビレに怯え、以来、人に寄ってくることさえしなくなるほどの拒絶反応を見せたのだそうだ。
そこから、人工尾ビレを怖がらなくするトレーニングを開始すると同時に、尾ビレに何かを付けるというトレーニングも開始。
最初は薄いジャージ素材を取り付けることから始め、徐々に大きく、質量のあるものに変更していき、最終的に人工尾ビレを取り付けていく。だが、人工尾ビレを装着できるようになっても、装着すると尾を動かすのを止めて、泳がなくなってしまっていたそうだ。
そこから、人工尾ビレを装着して泳げるようになるまで、また1年、2年の歳月を必要としたという。
人工尾ビレ。写真は沖縄のフジのもの。ラナンもこれと同じカウル型を装着。
今では人工尾ビレを装着して泳ぐこともできるし、沖縄のフジがそうだったように、尾ビレを装着すると、小さい動きや急旋回など、イルカ本来の動きに近い動きを見せるのだという。もちろん、普通のカマイルカほどの動きや、高いジャンプはできないが、それすらもできるようになることを目指して、現在もトレーニングを重ねているのだそうだ。
だが、尾ビレを失ってそこそこ長い時間が経過しているためか、現在は人工尾ビレなしの状態でも、それなりに泳げるようになっているという。そんなところもまた、沖縄のフジと共通する、イルカが持つ順応性と、可能性を見せてくれたということなんだと思う。
人工尾ビレプロジェクトは、フジで一定の成果を上げており、それを製作したブリヂストンにもそのノウハウが蓄積されていただろうから、何もないところからチャレンジが始まったフジの時ほど大変ではなかったのかも知れない。
しかし、カマイルカでは初めての挑戦であることには間違いないし、それを付けて泳げるようになるまでの4年間は、それに携わる人にとってはあまりにも長い時間だったに違いない。そんなプロジェクトを今日の状態まで持ってきたのとじま水族館のスタッフ氏、そしてその成功のために、データやノウハウを提供した沖縄海洋博公園のスタッフ氏、そしてラナンのための人工尾ビレを製作したブリヂストンの3者には、心の底から敬意を表したいと思うし、これまた素晴らしい美談だと思う。
顔を出してくれないから、こんな写真ばっかり…
人工尾ビレを装着した状態は見ることができなかったが、ラナンに会うこともできたし、貴重な話もしっかり聞かせてもらうことができた。
それをここでこうして発表できたのだから、それだけでも、のとじま水族館まで足を運んだ価値、収穫はあったというものだ。
きわめて独りよがりなのは分かっているんだけど、ここでこんな話ができたことで、オレ自身もそんな美談の端の方に関われたような気分になれた。オレの大いなる勘違いなんだろうけど(笑)
にほんブログ村
2010-12-01 00:11
nice!(0)
コメント(2)
トラックバック(0)
はじめまして
このGWを利用してラナンに会いにのとじま水族館へ行きました。
現在、人工尾びれはほとんど付けていないそうです。
欠けた尾びれで泳ぐ姿に少し勇気をもらえた気がしました。
トレーナーさんのお話ではラナンは浮いているのが好きらしく、決して泳げない訳ではないのだとか。
ちょっと距離が遠くても慣れると誰がラナンかすぐにわかりますね(笑)
フジ程有名でないのが気の毒です。
水族館でもあまりPRしてないのが勿体ないなと思いました。
by じゅんいち (2016-05-05 21:18)
>じゅんいちさん
ようこそ。
有名なフジも、最後の方は尾ビレを付けなくてもちょっとしたジャンプができるようになっていたそうですから、ラナンも付けなくても生活に支障はないのでしょうね。
もともと、装着するのが好きではないようですし。
今や国内唯一の人工尾ビレのイルカですもんね。
もう少し知られてもいいかも知れませんね。
by ミストラル (2016-05-08 13:04)